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「ちちち違うのじゃ! ただ人にはあまり言えないじじょーってのがあるだけの幼児じゃ!」
「ほう? そのじじょーってのはなんだ?」
ワシの言い方を真似するな! じじょーはじじょーなのじゃ!
「うー、じゃが言っても信じないじゃろう!?」
「それは聞いてから決める。」
その姿勢と態度を見て引く気はないのだと分かる。
「うぅー……ならば他言無用じゃぞ?」
「分かった。約束は守る。」
「言質はとったからな!」
録音魔法でな! よし、なんかあったらこれで脅してやる!
(ひよっこ新人冒険者がギルドのボスを脅そうとしているなど普通なら言語道断で処罰対象だが、普通じゃないのがレタアちゃんなのである。)
「う、うむ。」
「じゃあ手っ取り早く言う。ワシには前世の記憶があり、その記憶のおかげでここまでの魔法使いとなった。」
ぽかん、まさにその言葉が合うような表情を浮かべるヒゲもじゃ。まあ、そうなってもおかしくはないがな。突飛すぎると自覚はしているからの。
「そ、それが本当なら……前世のお前さんは相当な魔法使いだと言うことだな。」
「もちろんじゃ! なんたって千年も生きたんじゃから!」
えっへん! 胸を張る。
「千年って……もしかしてお前さん、ラールルの生まれ変わりか?」
「お、やっぱりワシは有名人なのじゃな。」
まあ、歴史の教科書にも載ってるらしいからな。
「……なるほど。そりゃあ規格外だわな。」
「規格外とは失礼な。」
「いや、その言葉が適切だろうが。で、今回は何年生きられそうなんだ?」
「そうじゃなあ……前世では四歳から魔法を使い始めて千年で死んだのじゃったが、今世は生まれた時から使い続けているからのぅ……千年以上ってところかの?」
「うわぁ……」
むむ? ヒゲもじゃにドン引きされているのか? 何故?
「……ごほん、だがそれなら辻褄があうな。自分に魔法を常時掛け続けることも可能、か……」
「うむ!」
「だが一つまだ疑問が残る。何故その年で冒険者をやろうと思った?」
「そんなの、出来損ないだから家を追い出されたからに決まっておろう!」
それ以外に何がある!
「……は? 何を言っている? お前さんはラールルなんだろ?」
「そうじゃが?」
「何故出来損ないだと追い出されるんだ? こんなに有能なやつ、どの家でも逃したくはないだろ?」
「ふむ、そんなことか。ワシは前世で魔法の才がありすぎて一人になった。じゃから今世は出来損ないを演じないとワシの目標を達成出来ないのじゃ。」
「目標、とは?」
「孤独死しない、じゃ!」
「……へぇー。(アホなんだな、ラールル……いや、レタアは。)」
むむ、興味ないよと言わんばかりの反応じゃな! しかも目を逸らしたじゃと!?
何故じゃ!?




