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さてさて朝になった。昨日の夕飯よりは控えめな量の朝ご飯を食べ、オルコットに質屋の場所を教えてもらい、ワシは宿を出た。もちろん、幻影魔法も掛けて。
ぽてぽてと歩き続けると、殊更大きな建物が見えた。ええと、看板には……
「冒険者ギルド……」
そう書いてあった。お、質屋よりも近かったのか。じゃあまず先にこっちから済ませようか。
熊熊お金~お金~ふんふふ~ん、と鼻歌を歌いながらギルドの扉をバンと開ける。
「敵襲か!?」
「……いや、ただのチビだな。」
「ここに一人でくるたぁ、あんなひょろっこいのに度胸だけはあるんだな。」
ギャハハ、とワシを見て品のカケラもなく笑う人々。多分皆冒険者なのじゃろう。
ふん、ワシはチビじゃないわい。なんたって(見た目は)十五歳じゃからの! チビじゃ……ないよな? うん、チビでは……
そんなことをぐるぐる考えながらも受付へ向かう。ワシの足は優秀じゃ。
「はじめまして、ですね? 冒険者登録でしょうか。」
なるほど、冒険者か。それも楽しそうじゃ。試しに登録してみるかの。
「うむ。それと、素材を買い取ってくれ。」
「かしこまりました。では……」
意外と登録は簡単じゃった。名前すらも偽装出来そうな緩さ。これでいいのじゃろうか。……まあ、ひよっこ新人のワシがこのことを思い悩んでも意味がないじゃろう。考えることを放棄する。
「これで登録は以上です。最初は誰もがFランクから始まりますので、Fランク、または一つ上のEランクまでの依頼が受けられます。」
「分かった。」
「さて、次に素材の買い取りですが……薬草の類でしたらこちらで、それ以外は奥でお願いします。」
「なら奥じゃな。」
何せ熊じゃからの。
「ではこちらへ。担当の者がおりますので。」
「はーい。」
扉の奥へと進むと、担当の人(仮)がいた。いや、多分十中八九担当の人なのじゃろう。
「では素材を見せて頂けますか?」
「はーい。」
鞄からにゅっと熊を出して台の上に置く。もちろん抜き取った血が入った瓶も隣にコトリと置いた。
「なっ!?」
「なんじゃ?」
驚かれるようなことしたかの? ……あ、この小ちゃい鞄から出したのが悪かったか? じゃがこんな収納魔法など誰でも使えるもんじゃろう?
うーん、どこに驚いているのじゃろうか。首をひねる。
「こ、これ……ビッグベアですよね!? それも……無傷!? ななな何で!? どうやって倒したんですかぁ!?」
「ふむ? ビッグベアとな? なんじゃそれ。」
「魔物ですよ!」
ふむ、こやつただの熊では無かったか。ふーん(興味なし)。
で、その……なんとかベア? って高く売れるかの? それだけが気掛かりじゃ。




