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まずは宿屋に案内してもらい、チェックインする。随分安くなったしご飯も付くらしい。そう言っていたからの。
これで衣食住の心配が無くなって安心じゃな。部屋のベッドにぽすんと座り、ふっと一息つく。
うむ、人には優しくするべきなのだと理解した。
さてさて、窓を見ればもう日が暮れてきたらしい。じゃからもう今日は動き回らずにじっとしておこうと思う。
この宿屋で瓶を買い、その中に抜き取った熊の血を入れて鞄に入れておいたから、今今売りに行かなくてもいいじゃろうし。
あ、そうじゃ! この収納魔法に重ね掛けしようじゃないか。この鞄に収納した物の時間経過を止める魔法を。そんな魔法あった気がする。
「……よし、オーケーじゃ。」
ふっとその魔法を掛けると、時間が止まっているのが魔力の流れ的に分かった。
これで熊の鮮度は落ちない。よしよし。高く売れたらどうしようか!
「レタアさーん!」
「む? どうしたオルコット。」
助けた女の人の名前はオルコットだそう。ワシ(十五歳ということにしておいた)よりも一つ下らしい。じゃからワシのことをさん付けで呼ぶ。呼び捨てでいいと三度程言ったが断固拒否された。解せぬ。
「ご飯出来ましたよっ!」
「おおっ! 実に楽しみじゃ!」
「楽しみにしててください! では行きましょ!」
「うむ!」
ちょうどお腹が空いていたところじゃったからの!
るんるん気分でオルコットと共に食堂へ向かう。一歩一歩進む度に美味しそうな匂いがワシのお腹を刺激してくる。ぐぅ、とお腹も鳴った。
じゅるり、この匂いはきっとお肉じゃな。うへへ、楽しみじゃ。
「うっぷ……」
部屋に戻ってきたはいいが、もう空気すらお腹に入るのを拒否している。それくらいお腹がいっぱいじゃ。
感謝の気持ちだなんだと色々な料理が出てきて、それを食べ続けた結果がこれじゃ。いや、全て美味しかったが。
幻影魔法を使っているとは言え、実際のところ六歳児じゃからの。胃の大きさも見た目(十五歳)とは全く違う。そこを考慮するべきじゃった。
「さて、もう今日は誰とも会わんじゃろうから……」
ふっと幻影魔法を解くと一気に目線が低くなる。服もだぼだぼに。
「ふむ、明日質屋に行くが、六歳児用の服は二、三着残すべきじゃな。寝巻き用に。」
後はそれで浮いたお金でもう二、三着十五歳用の服も見繕わねば。
「後は……ギルドとかがあればそこに行って熊を買い取って貰わねばじゃな。」
よし、明日の動き方は決まった。
「ふぁ……今日はもう寝るかの。」
眠気には勝てんからのぅ……
ぽふりとベッドに埋もれ、明かりを消す。明日も良い日になればいいと願いながら眠りについたのじゃった。




