5-61
気持ちを切り替え、魔法の鍛錬に集中することにした。
「よし、まずはいつも通り魔力量を測ってからじゃな。」
ミネルにそれを任せつつ、ワシも把握しておきたくて同魔法を掛けてみる。
ふむ、やはりミネルの時のようにはいかないんだな、しかし緩やかでも魔力が増加しているようだな、と安堵が胸中で広がる。
「じゃあ、いつものように魔法を使っていくわけだが……今の魔力量ならもしかするといつもより一回多く使えるかもしれないな。」
「それって、あたし達の魔力が増えたってこと!?」
「まだ少しだが、な。」
「やったね!」
限界ぎりぎりまで行使する、という練習法が間違いではないということが証明されたようなものだからな。ワシもホッとしているし、皆のモチベーションにも関わってくるというものだ。ミネルも我が事のように喜んでいる。
いつもより少し楽しそうに魔法を使い出す四人に、ワシも嬉しくなってくる。
そうだ、本来魔法というのは楽しいものであるべきなのだ。そんな当たり前のことに気付かされた気持ちになった。
「師匠ー!!!!」
魔法の鍛錬に打ち込んでいると、なにやら聞き覚えのある声が遠くから聞こえてきた。その声の主はワシらがいる場所に向かってきているようで、だんだんと声量が大きくなっていく。
まあ、ぶっちゃけ存在消し魔法をワシらがいる辺り一帯に掛けているから、ワシを見つけることは容易ではない。そう、安心していいはず。
「あれ、ここら辺から師匠の魔力を感じたはずなんだけど……」
「げっ」
声の主、オリウェンドはワシから見える範囲まで近づいてきたが、それでもワシを見つけられずキョロキョロと辺りを探しているようだった。
「む? ミネル、どうした?」
オリウェンドが見えた辺りで嫌そうな声を上げたミネル。顔もどこか苦々しい。何かあったか、と問いかけると、嫌そうに重々しく口を開いた。
「あの方はキルグ会の先輩なんだよ。だからどうしても苦手で……」
「ああ、そうなのか。」
他の四人は(向こうからは見えていないとはいえ)この学園の実力者の登場に戦々恐々として声も出せずに縮こまっていた。
そんなに怖がる子でも無いだろうに、とは思ったが、それはワシの主観であるとすぐに気が付いて口を閉ざしておいた。
「でもあんなに良い意味で子供っぽい先輩なんて見たことがなくて……正直動揺が隠せないな……」
「そうなのか? あいつはずっとあんな感じだったが……」
「あれ、レタアちゃん、先輩のこと知ってるの?」
「ああ、まあ……」
かくかくしかじか。昨日のことを簡単に伝えてみると、ワシ以外の全員にドン引きされた。解せぬ。
「で、師匠呼びに至る、ってわけね……」
「そうじゃ。」
「キルグ会の先輩に師匠呼びされるレタアって……」
「規格外すぎない……?」
「わー! ドン引きしないで欲しいのじゃー!」
せっかく出来た友達をここで失うわけにはいかないんじゃー!! そう内心泣きながら、ワシは必死に皆を引きとめようと頑張るのだった。
もっと他に頑張ることがあるだろう、だなんて声には聞こえないフリをして。




