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だってあの魔王はワシを見ると飛びついてきてウザイんだからな。あまりのウザさに堪忍袋の緒が切れて、うっかり鍵魔法を使ってしまったんじゃから!
まさかそのちょっとした鍵魔法が500年の間ずっと解かれることがなかった、だなんて思いもよらなかったがな。次もし会ったらそのネタで数百年はいじってやろうと決めている、というのは余談だ。
「いや、ちょっと待って。師匠って、魔王について知っているってことですか!? 封印されて数百年は経っているって言うのに!?」
あ、やべ。人間はそんなに長生き出来ないんだった。忘れていたな。
確かにワシの(見た目)年齢からして、魔王について直接見聞きしたような知識なんて持ち合わせるはずがないものな。どうにか話を逸らす方向に持っていくしかない。
「あ、いや、わしのお婆ちゃんのお婆ちゃんの……そのまたお婆ちゃんから聞いたような……?」
「そうだったんですか! ということはその方は魔王と接する機会があるほどの実力者だった、ということですね!」
「あ、ああ、そ、そそそう……だ! ……と、立ち話に花を咲かせている暇はないぞ。早く確認しに行くぞ!」
「はい!」
嘘をついている心苦しさというのはいつになっても薄まらないものだな。そう自嘲しながら、魔王城を探索し始めた。
まあなんとも広い城内を早足で歩き回り、たまにオリウェンドに魔力の濃さを見てもらい、辿り着いたのは最上階。ああ、なんか見覚えあるような部屋だな。なんだったっけ……
「あの大きな箱の中から魔力が垂れ流し状態です! この箱が魔力を放つせいで魔力が増加していると思われます!」
オリウェンドはそう言ってこの部屋に似つかわしくない無骨な箱を差す。
「あ」
思い出した。ワシ、あの(人型が入るには小さい)箱に疲れ切った魔王を詰め込んで鍵閉めたんだった。
「お前が原因かゴルゴンゾーラ!!!」
魔王の魔力に当てられて魔物が活性化したというのか! はた迷惑なやつめ!
そんなことを考えながら叫んだのが悪かったのか、例の箱が急にガタリと音を立てる。
「ひいっ!?」
ほらお前のせいでオリウェンドも怯えてしまっているだろう! なんて事をしているんだあいつは!
「s……こに……いるの、は……ラールル、か……?」
「違うわい!」
ツッコミをいれるように箱をバシンと叩いてしまったのは不可抗力とかいうやつだ。うん、そうだ。そうに違いない。
よし、これを静かにするためにも、もう一度鍵魔法掛けとこーっと。ふいっとそれを掛けると箱は静かになった。よし、これでどうだろう。
「オリウェンド、魔力の流れはどうなっている?」
振り向いてそう聞いてみると、オリウェンドは数秒目を凝らしてから発言する。
「ええと、箱から流れていた魔力はほとんど止まりました。」
「ふむ、じゃあ供給が途切れたことで魔力の増加は止まった、と見ていいだろうか。」
「多分……」
「ということは今回の問題は計らずとも解決してしまった、というわけだな。」
「わあ……」
「じゃあ、帰るぞ。」
「はいっ」
オリウェンドと共に元いた場所まで転移する。
「わあっ!?」
魔物の群れの中心に戻ったワシら。するとウジャウジャ沸いて魔術師軍と交戦していた魔物達がワシを見てからパーっと散っていった。
「あ、やべ」
感知阻害魔法を解いていたのを思い出したわしはそれを掛けなおして、ついでにオリウェンドに掛けていた同魔法を解く。
「た、助かった……?」
ぜえはあ息を切らす魔術師軍の人たちは各々そう呟く。その声を聞き流しながらわしはディエゴの元へ事の顛末を伝えるために向かうことにした。




