表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千年生きた伝説の魔女は生まれ変わる〜今世の目標は孤独死しないことなのじゃっ!〜  作者: 君影 ルナ
魔法学校編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

175/206

5-54 討伐隊員Q

 俺は魔術師軍所属の討伐隊員Q、今年魔術師軍に配属された新人でもある。所謂モブ、とか言われるような奴だ。細かいことは気にしなくて良い。


 ただ、今回の討伐に参加する名誉を得るために今まで血の滲むような努力を積み上げてきたプライドはある、とだけは言っておきたい。魔術師軍の志願倍率も、求められる実力も、高すぎるからな。





 さてさてそんな俺のことはどうでもいい。それよりも大事なのは今回特別参加したというレットとか言う男のことだ。


 そいつはなんか見ていて変な感じがする。気持ち悪いというか……。とにかく変なのだ。


 それが何故か考えてみると、俺の中で二つの結論に達した。


 まず一つ目、レットと呼ばれる奴には何かしらの魔法が纏わり付いていること。魔力がある程度ある奴なら大抵見えているだろうそれが、もはや呪いのようにしか見えず、なんかこうしっくり来ない。さらに言えば呪いを掛けられるような人間がのうのうとこの場所にいることにも納得できないとも思う。


 そして二つ目、魔法の援護をメインに、だなんて宣いやがったんだ。俺達魔術師軍を軽んじているようにしか聞こえない。


 というのも、そもそも魔術師軍は他の部署よりも魔法適正がある人間しか配属されないという事実がある。そんな俺達に向かって魔法の援護、だぞ? 他の奴らも良い気分ではないらしいことはその表情から窺い知れた。




 しかし魔術師団長様から紹介されたということもあり、誰もがおおっぴろげに不満など言えるはずもなく。悪い雰囲気のまま討伐は始まることとなる。




 今回の討伐では人間の居住地と森とを隔てる壁の付近まで向かう。ただ、そこまで行くには通常馬車でさえも数週間かかる。


 ということで魔術師団長いちばんのじつりょくしゃが補助的な魔道具を用いた転移魔法を駆使することになったようだ。俺はなかなか出来ない経験だな、と何とかテンションを上げようと試みた。


 その時もレットとか言う奴と魔術師団長は揉めていたようだが、何が不満なのやら。いちいち行動が五月蝿くて嫌だな。ああ、こんな風に考えてしまう自分も嫌だ。


 と、そんな余計なことを考えている間にもパッと壁の前まで転移していたようだった。この浮遊感は慣れないと酔う人も出ると聞いたことがある。しかしどうやら俺は酔わずに済んだらしい。



 ラッキーだったな。そう自画自賛して──そうでもしないと心身ともにエリートであり続けられないんだ──自分を鼓舞する。


「魔物だー!」

「かかれー!」


 転移したと思ったらすぐ討伐が始まった。その数、目視出来る範囲だけでも数十。気を引き締めて掛からなければ。そう意気込んだと思ったら……


 ぐわん


 膨大な魔力が動いたのがこの目で確認できた。何だ、これ……


 しかしそうこう言っているうちに魔物は目前に迫り、膨大魔力移動に意識を向ける暇すら無くなった。今はまずこの魔物を討伐することのみを考えなければ。


 感知魔法を埋め込んだ魔道具は俺達の後方で魔物の魔力量を測量してくれているはずだから。


 ザンッ


 ドォン……


 各々魔法を放ち剣を振るう。今まで討伐してきた魔物と同じ姿形をしていても、やはり魔力量が変わったからか手応えが違う。


「くっ……」


 前よりも刃の入りが悪いのだ。まるで体が強化されたかのように。魔力保有量によってここまでの差が出るとは。侮ってはいなかったつもりだが、それでも想像と現実の差は激しかった。


 今までより一匹倒すのに時間がかかってしまう。これではいずれこちらの体力が尽きて──


 そんな最悪が頭をよぎった瞬間、


「もう調べ終えたし、もういいか?」


 今の今まで忘れていた──何せ交戦中だからな、目の前のことで手一杯だったのだ──あの嫌な奴の声がふと耳に届いたような気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ