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「半月後には、学年ごとの交流会が行われます。私も参加せざるを得ないのでそうしますが、良いですか、間違っても変な行動は取らずに大人しくしていなさい!」
いつものように担任(笑)からの連絡事項を半分聞き流していると、今度の行事の話をしているらしかった。今度は学年ごとの交流会、か。
前回のようにIクラスの皆が皆下を向いてただただ時間を潰すだけの無意味なものにならなければ良いのだが……。
だなんて考えたが、まあ十中八九そうなるだろう。何せこの学園は、この国は、魔力至上主義の集まりだからな。
どうにかこの差を無くすことはできないか、と考えてみるが、ワシのこの立場で何を言っても意味のないものになるのは目に見えて分かっているからな、閉口するしか出来ない。
それならば自分を犠牲にして魔力をひけらかし、Iクラスの魔力向上に従事するか? ……うーん、それはやはり臆病なワシが顔を覗かせてな……なかなかその決断が出来ないというかなんというか。保身か魔力向上か天秤にかけている気分になってしまう。ちなみに今は前者に傾いている。
窓側の四人と出来ている信頼というものが、他のクラスメイトにはまだ当てはまらないからな。なんとかしたいのじゃが……ワシの話を聞いてくれるかどうか。
「うーん……」
と言うかそもそもの話、行事多くないか? まだ入学して一ヵ月程しか経っていないはずなのに、もう半年は過ぎたのでは、と錯覚しそうになってしまう程だからな。少し休みたいと思うのが本音だったりするのは余談だ。
さてところ変わって小屋の中。いつものように一人でここに辿り着くと、ユーリがもう既に来ていたらしかった。ワシは思わず、と言ったように先程まで考えていた言葉を漏らしてしまう。
「なあユーリ、この学園、行事多くないか? 息つく暇もないんじゃが。」
「行事? ……確かに多いよね。まだ入学して一ヵ月程度なのに、もう二つは終わったものね。」
魔術師団見学と縦学年交流会のことだな。
「でも一、二年生はこのペースだってよ? この二学年は特に忙しくないから、行事を詰め込んで経験を積めるだけ積め、ってことらしい。」
さすが情報通。いろんな情報を知っているんじゃな。
「三年生は進路に合わせて授業を選択していって、四年生は研究室をどこにするか決めて所属して、五年生はなんかもう忙しいって。」
「へぇ……」
研究室に行かずに小屋を建てて篭っていた記憶なら薄っすらあるな。なんたって千年以上前の(以下略)。
そんな記憶力で行事がいっぱいあったかだなんて覚えているわけもなく、新鮮な気持ちでユーリの話を聞いていく。
「今のうちに人脈作りもしましょう、ってことで他クラスや他学年との交流会があるらしいけど、ね……。」
「あ、はは……」
あたし達には関係なくなっちゃってるけど、と自嘲の笑みを浮かべるユーリ。ワシは笑ってその場を誤魔化すことしか出来なかった。




