5-47
「あれは今年の落ちこぼれじゃないかしら?」
「図書館に来るだなんて、真面目アピール?」
「そんなの意味ないのにね。」
ヒソヒソ、ヒソヒソ。こちらにも聞こえる程度に噂されているらしい。いい気分ではないが直接な害は無いし、放っておこう。
実害が出てきたらしっかりやり返してやるつもりじゃがな(小声)。まあ、大人げないことはしない……と思いたい。
呪文に関する書物を手に持てるだけ集め、学習スペースの机にドンと置く。あー、重かった。十冊はあるだろうか。少し持ってきすぎたかとは思ったが、情報は多い方が断然良いからな!
そんな言い訳を考えながらパラパラと本を捲る。第三図書館にある書物よりも読みやすい文章だな、というのが第一印象だった。
「ふーむ……」
・呪文は魔法を行使する為に絶対必要
・覚えた呪文の数と魔力でその人の実力が分かる
・魔術師団長クラスなら、レベル二を扱える者も稀にいる
この書物にはワシでも知っていることしか載っていないな。アテが外れたか、と内心落胆しながら本をパタンと閉じる。
他国は呪文に対してどんな認識なのかは分からんが、取り敢えずこの国において呪文を使うことは当たり前になりすぎていて、何故呪文を使うのかという疑問を抱く人間がいないのだろう。それだけは分かった。
まあ、そもそも現在呪文無しで扱えるのはワシしかいないようだし、呪文を使うと効率が悪いというのも感知魔法を使っていたから分かったこと。普通の人が疑問に思わないのも普通のことか。
何せ感知魔法はレベル二の呪文しかない、イコール使える人間がいない。ということだからな。
『この国で呪文が当たり前すぎて誰も何も疑問に思わない』
これ以上の収穫も無さそうだし、よし、一旦調べるのはやめる! これ以上は時間の無駄になりそうだから! あとはディエゴからの情報を待つだけにする!
ということで四人の魔力底上げに意識を持っていくことにする。魔力効率の悪さには目を瞑ることにして。
「来週、縦学年との交流会があります。私はIクラスの担任だと思われたくはないので参加しませんが、あなた達は他学年のIクラスの人達と交流しておきなさい。では今日はこれでさよなら。」
担任(笑)が最低限の情報を落としていつものようにさっさと去っていった。ふむ、交流会か。
二年生、三年生、……のIクラスの人達と交流か。……はて、何をするんじゃ?
(前世の記憶を辿っても思い出せず)何をする会なのか分からず首を傾げていると、ニイナがこちらを向いて目だけで『いつもの場所に行こう』と言ってくれた。
それに頷いていつもの場所、森の中にある小屋へと向かう。そこに行ってからこのことを四人に聞いてみるのも良いだろう、そう考えて。




