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「先の討伐及び調査により、その土地によって魔物の魔力増加率が違う、ということが分かりました。」
「ほう、してどこが一番高かったんじゃ?」
「そ、それが……」
ディエゴはそこまで言って口を閉ざした。ふむ? 何か言いづらいことでもあったのか? ワシは首を傾げる。
「まだ全ての土地を調べきっておりませんので……まだ断定は出来ません。が、」
「が?」
「人間の居住地区とその他を隔てる壁の方に近づくにつれ、魔力増加率は上昇していました。」
「……ふむ。」
この国の半分以上が森や未開拓地だ。そして人間が住めるように開拓した場所は密集し栄え、そこと未開拓地は大きな壁で隔たれている。
今となってはその壁もほぼ意味をなしていない代物に成り果てているが──なんたって壁は一方面しかない。何もかも入り放題なのだ──、昔の人はそれで魔物の被害を抑えようとしたらしい。それが今でもただ残っているだけ。
しかしその壁の方に行くにつれて魔力増加が見える、か……。一体どういう仕組みなのだろう。これだけの情報では魔力のスペシャリスト集団、魔術師団でも判断がつかないだろうな。
「ということで、第二弾として再び討伐及び調査に出る予定です。今度は壁の付近を徹底的に。」
「ふむ。」
「それにレタア様も是非参加して頂けたら幸いなのですが……」
「なるほどな。ワシとしても前回すっぽかしてしまったからな、なるべく参加しよう。」
「ありがとうございます。……前回はラールル様を目の前にして私の頭が真っ白になってしまい、報酬の話を出していませんでしたよね? 申し訳ありませんでした。ということで今回の報酬として、私に出来る限りでしたらなんでも仰ってください。」
思いもよらない言葉に、一瞬呆気に取られたがハッと思いついたことを口にしてみる。
「あ、じゃあ金銭でなくても良いか?」
ちょうど魔法について詳しい人の意見が欲しかったからな。
「は、はい。して、どのような?」
「呪文のことについて、じゃ。どうやって魔法に呪文が付けられるか、なんじゃが……さすがに門外不出か?」
「あー……基本は、そうですね。というか相当魔法に秀でた人間でないと言っても理解出来ない、と言う方が正しいかもしれないですが。」
へぇ、そんなに難しいことなのか、呪文は。基本ワシは使ってこなかったから、あまりピンとは来なかった。
「ただ、魔法を幾つも創り出したあなた様になら少しだけ情報を漏らしても理解して頂けるでしょうし、ましてや悪用なされないでしょう。……ではその情報を対価に、でよろしいでしょうか?」
「ああ。よろしく頼む。」
「ありがとうございます。ではまた日時が決まったらお知らせします。今度は学園の寮に届くよう設定しておきますね。ちなみに何号室か聞いても? 届ける位置を正確に把握しておきたいので……」
「二一六〇号室じゃ。」
「……分かりました。ではそのように。」
そう言い切ったディエゴは、真剣な表情をフッと緩めたのだった。




