15
「まあ、そう言うことで、今世はのんびり孤独死しないことを目標にしている。そしてそのために出来損ないを演じる必要がある、ということじゃ。」
「なるほど……」
ユアはワシの目標にうんうんと頷く。否定されなかったことにワシは安堵した。
「じゃがワシは前世の頃から記憶力がないからの、なるべく覚えることを減らしたいところなのじゃ。」
暗記系の魔法も作るべきかの……? 後で考えてみようか。
「ふむ。……あ! いいこと思いつきました!」
「なんじゃ?」
「レタアお嬢様はレベル二ってことにしたらどうですか!?」
「レベル二……?」
レベル二ってどんな特徴じゃったっけ……? 首を傾げる。
ほら、ワシは記憶力がなさすぎる。少し情けなくなってきたのぅ……。やっぱり記憶系の魔法も作るべきじゃな。うむ。
「短縮した呪文をちょっと覚えればいいんですよ!」
ワシの心の中で出た疑問にピッタリ答えてくれた。ふむ。短縮した呪文か……
「なるほど……あ、じゃが『出来損ない』はやっぱりレベル一の方が……そうなるとやっぱり呪文を覚えることにした方が……」
どれが最適解か分からなくなってきた。混乱した頭を抱えてなんとか答えを導き出そうと試みる。
「あ、そうでした。出来損ないを演じるんでしたね。」
「ああ、このさじ加減が実に難しいのぅ……。どうするのが最適、か……」
「しかし、出来損ないを演じるなら逆に覚えなくても良いのでは?」
「あ、そうか。」
確かに覚えてしまえば出来損ないではないな。
「ですが笑い者にならない程度に学ぶのはアリだと思います。魔法以外とか特に。」
「ふむ、確かに一理あるな。……じゃあ魔法以外はある程度出来るように学んでおくか。」
「それが一番だと思います!」
ああ、一人だったらここまでハッキリとした目標も掲げられなかったじゃろう。ユア様様じゃな。口角が上がる。
この時ワシに優秀な相棒が出来たと気分も高揚していた。
しかしここで話し合ったことがいかに軽薄じゃったか、この時のワシは全く知るよしもないのじゃった。




