5-29 ミネルside
そんなこんなでとにかくキルグ会室を抜け出してからは、レタアちゃんの魔力を辿ることにした。感知魔法がここで役に立ったのだ。
胃の痛みはと言うと、あの場所から離れたことで随分良くなった。というか治った。やっぱりあれはストレス性だったんだな、と確信を持つだけに止まったのだったが。
さてそんなこんなで魔力を辿って行った先で見たのは『友達の記憶が消えた』レタアちゃんの姿だった。私の名前でさえ一瞬出て来なかった程。先程感じた暴発した魔力の影響だろうか。
「実はかくかくしかじかで……」
近くにいたグリタリアさんが私の耳元で状況を教えてくれる。魔力のことを無理に聞こうとして、レタアちゃんは倒れてしまったのだ、と。
そこまで聞いて、今までのレタアちゃんとはどこか違う。そう直感的に思った。
だって私には魔力のことも、前世のことも、正直に教えてくれたもの。嘘は一度も……あ、入学試験のあれ、は……誤魔化すと事前に聞いていたからノーカンか……?
なんだかレタアちゃんがよく分からなくなってしまった。だから今起きたことは伏せながら──どこにレタアちゃんの地雷があるか分からないからね──レタアちゃんに何個か質問してみよう。
そう決めた私はレタアちゃんの目の前に陣取って話を聞き出すことにした。
「レタアちゃん、二日ぶりだね!」
「うむ! ……うん? 二日ぶりか?」
「あれ、違ったっけ? 私、最近忙しくて日にち感覚がバグってるのかも。何日ぶりだっけ?」
「ええと……入学試験以来じゃあないか? あ、いや、その後にもう一度……あれ?」
レタアちゃん自身、まだ混乱しているみたいだ。そう、入学試験の後に一度、つい二日前に会っているんだよ。授業の一環でラールルにインタビューのオファーをするために。
「じゃあレタアちゃん、ここに運ばれる前、何をしていたの?」
「え、と……確か図書館にいたような……それで、何かを調べていて……それで……あれ? 思い出せない。今日は何だか物忘れが酷いな。」
私のことはなんとか覚えている。それに倒れる直前のことも何となく覚えている。グリタリアさん曰く、十歳以上でも魔力を増やせるかを調べる途中だったそうだ。窓側の魔力向上のためだろうことはすぐ分かった。
まだハッキリとは言えないが、何となくこの四人に関する事柄を忘れたように思えた。図書館に行ったことは覚えていて、何のために──窓側のために──と行動したことを忘れているのだから。
しかしレタアちゃんの脳みそはこの四人に関することだけを綺麗に忘れたというのか? そんな都合良く特定の誰かだけを忘れたりなんて出来るのだろうか?
魔力の暴発のことも考えると、魔法で記憶を消したとしか思えない。でも、そんなこと、現実的に考えてあり得ないのでは……
あ、この人、そう言えば規格外だったわ。じゃあ何でもアリか。
と、私は悟ってしまった。




