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「レタアお嬢様が……?」
「そうじゃ。というかさっきまで掛けていた魔法がそれじゃ。解いた時にユアも何か感じたじゃろう? それはワシが隠していた魔力じゃな。」
ユアはひたすら驚いていた。
「な、なるほど……あ、ですが呪文は唱えないんですか?」
「めんどくさい。」
「へ?」
ワシはぽすんとソファに座る。そして短い足を組んで少し格好つけようと頑張った。
「ワシはレベル三……らしいからの。無詠唱じゃ無詠唱。」
「わあ……レベル三の方って存在したんですね。」
珍しいとは分かっていたが、そこまでか。存在していたかどうかを問うなど……
この世界のレベルの低さを実感してしまった。
「ワシは前世の時から無詠唱じゃよ。……まあ、前世で生まれてから十数年間は呪文を使っておったがの。それももう九百年も前のことじゃ。」
「規格外……」
「……こんな規格外なワシ、嫌か?」
「……。」
ワシのその言葉にふっと顔を下げてワシから目線を外したユア。ああ、あの時『離れない』と言ったのは嘘では無くとも、今知ってしまって心変わりしてしまったのじゃろうな。
ワシは心の中で溜息をつく。やっぱりワシは孤独なのか……
「……です。」
「ん?」
ユアは小声で何かを呟く。ああ、聞き取れんかった。もう一度言ってくれんかの?
と思ってたらユアはバッと顔を上げる。少し顔を赤らめて。
「すごいですっ! 何故今まで黙っていたんですか!?」
「……へ?」
予想外の展開にワシの目は点になる。
「というかそれくらいすごいのに何故隠すんですか! レベル三なら王子妃とかも夢じゃないですよ!」
キラッキラの目でそう言い募る。ふんすふんすと鼻息が荒いような気もするが……気のせいか?
「それには興味はない。ワシの夢はただ一つ、『孤独死しない』ことじゃからの。」
「ですが妃になれば孤独とは無縁の人生を送れるのではないですか?」
「あー……確かにそうかもしれないが、きっと色々大変じゃろう? 前世では死ぬほど仕事したんじゃ。今世はもっと気楽に生きたいからのぅ……」
ちとわがままな気もするが、前世で死ぬほど頑張ったんじゃ。これくらい言っても良かろう。
「なるほどです。」
「それに、この力を恐れる人間も多い故、なるべく隠しておきたい。」
ワシの才能に恐れ慄く人々をたくさん見てきたからの。もうそんな目で見られたくない。
「ああ……なんとなく想像はつきます。私はただひたすらすごいと思うんですけどね!」
「はは、ユアは優しいのぅ。」
有難や有難や。ユアのような優しい人はなかなか探してもいないじゃろう。大切にせねば。何があってもワシが守らねば。
決心を固くする。




