5-27 ファッツァside
レタアさんから溢れ出る膨大な魔力は暴発したように辺り一面を覆い、数秒のうちにそれは彼女の中に戻っていった。
はて今のは一体何だったのだろう、とそう思う間もなく。
「まずレタアを保健室に運ぼう! 謝るのはそれから!」
四人のうちの一人がパニックから脱したのか声を上げた。それに続いて他の人もハッと気がついたように動き出す。
「レタアの言いたくないことって、魔力に関することなのかな……」
「今までの出来事を合わせて考えると、多分それで合ってると思う。」
「何故魔力があることを知られるのが嫌なのかしら?」
「ち、ちょっと私達とは世界が違う感じ……だね。私達は喉から手が出る程欲しているのに……」
そんなことを話しながら、この中で唯一の男子生徒がレタアさんを抱えてこの場所を出て行った。
それからのことは、私は知り得ない。何故なら私はこの第三図書館から出られない、言わば地縛霊なのだから。
ユーリside
「どちら様ですか?」
そう言ったレタアの目は、嘘をついているようには見えなかった。ずっとまっすぐな目でこちらを見つめているのだ。
今まで関わってきて充分に理解していたが、レタアは嘘が下手である。だからこそ、あたし達は困惑した。これは嘘でも何でもないのか、と。
記憶を失う程、魔力を知られることが嫌だったのだろうか。分からない。
「あ、えと……その……」
「……ェータァーアァーちゃぁーん!」
その声と共にバァン! と開いた保健室の扉。その向こうにいたのは主席さm……ミネルさm……ミネルさんだった。だんだん近づいてきていた声も、彼女のものらしいことは明らかだった。
「なんか有り得ない程の魔力が学園中に一瞬で満ちたんだけど、多分レタアちゃんだよね?」
「え、と……あなたはみ、み、……」
ミネルさ……ミネルの勢いにのまれ──それすらも珍しいし、もしかしてミネルのことも忘れた……?──、困惑するレタア。
「……ええと、そう、確か……ミネ……ミネ……ミネル……?」
「え、どうしたのレタアちゃん。」
「そうじゃ、ミネルじゃ! 思い出した! ミネル、ワシの一番弟子!」
それぞれがそれぞれの意味で『何があった……?』と混乱する中、レタアはいい笑顔でそう言い切った。




