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「あんた、本当に落ちこぼれなの? 他の幽霊はどうか知らないけど、ここの……第三図書館の幽霊は魔力量が多ければ多い程ハッキリ見えるらしいんだよ。だからあたし達にはうっすらも見えない。それなのに、あたし達よりも後ろの席のレタアは人間と見間違える程ハッキリ見えている。そう言うことだよね?」
何ィ、そんな罠があったなんて……! ワシは言い逃れ出来ないかと顔には出さず思案する。が、パニックを起こした頭で良案が出るはずもなく。ただひたすらに『どうしよう』という言葉が頭を駆け巡る。
「ねぇ、レタア。何とか言ってよ。」
「落ちこぼれって偽っていたの?」
「魔力の無い私達を内心では嘲笑っていたってことかしら?」
「嘘つき」
そういった皆の目を見るのが怖くて、ワシは顔を上げられない。自分の靴をじっと見つめる。
化け物と呼ばれ、怖がられていたあの目がフラッシュバックし、体が震え、ジットリと脂汗が湧き出て、ドクドクと嫌な心音が自分の中に響き渡る。
言い訳をしたくとも、喉が張り付いて声が出せない。ハクハクと息だけが漏れた。
化け物は、誰かといてはいけないってことなのか? 孤独に生きるしか出来ないのか? 友達百人なんて欲張ったのが悪かったのか?
ワシだって普通の人間に生まれたかった。友達と切磋琢磨して魔法を磨いてみたかった。ワシの願いは、ただそれだけなのに……
嫌だ嫌だ嫌だ! もう独りは嫌なんだ! 誰も看取ってくれない人生なんて、ラールルの時だけでお腹いっぱいなんじゃ!
また化け物扱いされて孤独に生きるくらいなら、こんな──
………………
…………
……
「……」
ふっと目を開ける。どうやら今まで保健室のベッドに寝かされていたらしい。フカフカな布団に包まり、意識を失う前の行動を思い出そうと試みる。
が、何故かこう……霞が掛かったような、霧で覆い隠されたような、そんな不思議な感覚に陥る。ワシは何をしていたんじゃっけ?
「レタア! 貴女、目が覚めたのね!」
「レタアごめん! 言いたくないこと、無理に聞き出そうとして!」
「魔力があろうが無かろうが、レタアはレタアだよね。本当にごめん。追い詰めるつもりは無かったんだ。」
「わ、私も……ごめん。」
四人、それぞれがワシに謝る。が、不思議だった。何故謝るのか、と。
だって……
「どちら様ですか?」
四人とも、知らない人だったから。




