5-20
その日はミネルが仲間になったところで、解散の運びとなった。まぁ、忙しくてなかなか顔出せないかも、とミネルは言っていたが。
そんな時はワシの出番ってもんじゃ。伝達魔法を駆使してその日の出来事なりなんなりをミネルには随時伝えるつもりじゃ。
落ちこぼれを演じていても、魔法を全く使わないとは言ってないからな。影ながら動くつもりじゃよ。要はバレなきゃ良いってもんさ。
さて、話は変わるが明日は休日。何をしようか……と一人、部屋で考えていると、ゴトリと何かが落ちる重い音がした。
その方を振り向くと、床にケイタイなる魔道具が。ふむ、これが落ちたのか。いつの間に。
これは以前ミネルがまだ魔法を上手く操れなかった時の連絡手段だったよな……
「ん? 待てよ、これ、窓側の皆にプレゼントすれば、魔力が無くても色々連絡出来るのでは?」
わあ、ワシ、最強の思いつきじゃ! と自画自賛してみる。
明日の行動が決まった瞬間だった。
次の日の朝。一応今まで暮らしてきた街に赴く時は自分に幻影魔法を掛けてから向かうことにしている。ほらあれだ、急に若返っただなんて怖がられたくないからな、仮の見た目が実年齢に届くまでは使うつもりじゃ。
そんな思惑(?)を隠しながら、一件のお店に入る。薄暗い、あの……
「イーニャお婆ちゃん、ひーさしーぶりー! なのじゃ!」
「なんだい、お前さんかいな。ミネルヴァはどうした?」
「ミネルは学園で主席になったからな、色々忙しいらしい。」
「……はあ? ラールルが何言ってんだい。お前さん程主席に相応しい者はいないだろう?」
「イーニャお婆ちゃんはワシを買い被りすぎじゃ。ワシは最低クラスの窓側一番後ろじゃよ!」
堂々と自慢げに事実を言っただけなのに、イーニャお婆ちゃんに鼻で笑われた。
「それこそちゃんちゃらおかしいね。あんた、もしかして入学試験、手ぇ抜いたね?」
「あ、あはは、ナンノコトカナァ?」
「はあ……あんたは全く……」
ワシの誤魔化し方は完璧だったのに、イーニャお婆ちゃんにはいろいろお見通しのようで。ワシの行動に頭を抱えた。
「でもそのおかげであの学園の闇を知ったからな。全く意味が無かった訳じゃあない。……窓側の待遇とか、な。」
「……そうかい。まぁ、わえも入学してしばらく経ってからそれは知ったね。でもそこそこの優秀者だったわえにできる事はそうなかった。優秀者と言っても教える技術も、魔法に対しての知識も、あの頃はまだ学生でそう多くなかったから。」
フッと顔を曇らせたイーニャお婆ちゃん。そうか、イーニャお婆ちゃんもあの差について思うところがあったのだな。
多数がこの差別に疑問を持てば、この待遇の差は改善することもあっただろう。しかし未だに何も変わっていないということは、疑問に思う人間は少数派だということ。
やはりワシが何とかせねば。改めて決意を固めるのだった。




