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「ユア……?」
はっきりきっぱりそう言い放ったユア。その目からは決意のようなものも見えた。
「……私はレタアお嬢様に仕える前、ふらふらと定職にもつかずにあちこち放浪していました。お恥ずかしながらその頃捻くれていて、誰にも必要とされていないならもう死んでしまおうかと考えていた時、レーン様に拾われ、レタアお嬢様の専属メイドとして雇われました。」
ユアが語り始めた。ふむふむ。
「そしてレタアお嬢様は私のことを必要としてくださいました! その時、『このお嬢様に一生ついて行こう』と決めたのです!」
「ワシがユアを頼った、それだけでなのか?」
「それだけじゃないんです、私の中では。拾ってくださったのはレーン様ですが、私の主はレタアお嬢様だけです! ですからさあ! 教えてくださいっ!」
キラッキラの笑顔でそう言われる。う、う……どうしよう……
「本当に嫌わないでくれるのか……?」
「もちろん!」
その言葉に嘘はなさそうじゃ。申し訳ないが嘘を感知する魔法をこっそり掛けてみたが、嘘であるとの反応はなかった。
信じてみても、いいかの?
「……では、少し待ってくれ。」
この部屋に防音魔法と共に感知阻害魔法も掛ける。今からワシ自身に掛けた感知阻害魔法を解くからの。
万が一ワシの魔力を感知する人間がいないとも限らないからじゃ。
「……?」
「今からワシ自身に掛けている魔法を解く。話はそれからじゃ。」
「わ、分かりました。」
ふっと魔法を解く。するとユアは何かに気がついたようだった。
「何かが……変わった?」
「ほぉ、それが分かるなら確かに実力はあるようじゃな。」
「というと?」
「優秀な魔法使いなら、今ので何かに気がつくはずじゃ。まあ、実力がない者は気づきもせん。」
「は、はあ……」
何が何やら、とでも言いたげな表情をしておるの。まあ良い。
実力がある人は、魔力の流れというか、魔力の大きさというか……そういうのをなんとなく感じ取れるんじゃ。それがユアに当てはまるってわけじゃ。
「じゃあまず結論から言うかの。ワシには前世の記憶がある。そして、その記憶を使って魔法を自由自在に操れる。」
「前世……ですか?」
「そうじゃ。まあまあ有名人の生まれ変わりじゃよ?」
「へぇ! 誰ですか?」
「ラールル、じゃよ。」
「……うへぇぇぇえい!? あの千年も生きた伝説の魔女、ラールルですかぁ!?」
驚き方の癖が強いのぅ。見てて面白い。
「そうじゃ。そしてラールルの時の実力も魔力も引き継いだらしいからの、魔法は使い放題じゃ。」
あんぐり、そんな言葉が合うような表情を浮かべるユア。それでも何か返事をしようと頭を働かせたようじゃった。
「し、しかし……本当でしょうか。ちょっと話が大きすぎて現実味がないのですが……」
「ま、それもそうじゃの。どうすれば証明出来るか……あ、そうじゃ。ラールルは魔法を創作するのが仕事じゃった、というのは知っておるか?」
「もちろんです。魔法の創作はとても難しいので、ラールルは相当魔法の才能があった、というのを歴史の授業時に聞きました。」
ふむ、それを知っているとなれば……
机の引き出しに、この前ワシが作った感知阻害魔法の色々を書いた紙が入っている。それを見せればあるいは。
引き出しに掛けた鍵魔法も解き、中身を取り出す。
「ほい。」
「はい?」
そしてその中身の紙束をユアに見せる。するとクレヨンで書かれた文字の数々を読んでいくユア。途中から驚いた表情を隠せない様子じゃった。
「感知阻害魔法……って、この魔法存在しないじゃないですか!」
「そうじゃ。無いからワシが作った。」
そのワシの言葉にユアはフリーズした。




