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あれから数日間、ワシはきちんと魔法も使わず大人しくしていた。そしてそれが解禁されるとワシはすぐ四つの魔法を自分に掛け、そしていつも通りの日常へと戻っていく……
と、思っていた。
「レタアちゃん、私達も十歳になるし、半年後にはフラムレイール学園に行かないとだよね?」
鶴の一声で、ギュンッと現実に引き戻された気分になった。
「……はっ、忘れてた。」
フラムレイール学園。我が国トラントで唯一の魔法学校である。
前世のワシも通ったそこに、今世十歳になるワシもミネルも通わなければならない。これは一種の義務なのだ。二人とも『魔力持ち』だから。
ミネル風に言うならギムキョーイク?とかじゃったか。まぁ、そんな感じじゃ。
魔法学校が国唯一であることも、そこに通う義務も、実はおとなのじじょーとか言う奴らしい。公表はされておらんがな。
結局のところ、この国で誰がどのくらい魔力を持ち、どのくらい魔法に秀でているかを国が把握したいから、らしいが、はて、誰が零した愚痴だったか。
何せ前世でウン百年前にした世間話じゃったからな、詳しくは覚えておらん。
そんなことだから敷地は他の学校と比べても広大で、城のように豪奢だったり──まぁ、通う者がほぼ貴族というのもあるから仕方ないのかもしらんが──と、無駄に金のかかっている学園でもある。
ああ、余談だが魔法学校はフラムレイール学園だけじゃが、普通の学校は星の数ほどあることは割愛する。
と、ごちゃごちゃ学園のことを考えている間に時は流れ、学園の入学テスト当日になってしまった。取り敢えず魔力を保有しているか否かを測るだけなので、そこまで苦しむテスト内容ではない。
ワシは特に何も対策せずに──あぁ、でもひとつだけ、感知阻害魔法の精度だけは確認した──学園に向かう。
活性化した魔物のことも、討伐参加のことも、何もかも解決しないまま。
「うーむ、懐かしいような……気もしなくもない。」
やって来ました、フラムレイール学園。ミネルは家から直接来るらしく、今日は別行動じゃからな。一人でこの建物をぼーっと眺める。
門の外から見える城のような建物は前世のワシが通っていた頃と変わらず綺麗なままで。何となく面影を思い出せるかどうか、という程度の記憶でも懐かしさはほんの少し感じる。
確か前世のワシが貰った卒業の証のローブと同じ魔法が建物にも使われていた……はず? 詳しくは忘れたが、ええと、確か……時間停止魔法……だったか……?
と、朧げな記憶を辿りながら歩き始めたからだろうか。ドンと何かに顔を打つ。
「あ? なんだおま……レタアか?」
どうやら人にぶつかったらしい。ワシが謝る前に誰かの訝しげな声が聞こえた。




