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そうか、ワシは貴族の娘じゃったのか。ふむふむ。
「ですからお勉強は頑張るべきですよー?」
「うぅ……でも覚えるの難しいのじゃ……呪文など微塵も覚えられんのじゃ。」
「しかしそうも言ってられないですよ?」
そう言ってユアはもごもごと何か呟き始めた。なんじゃなんじゃ?
未だに呟き続けるユアをじっと見つめていると、ユアの手の上がキラキラと光り出した。
「これは初歩的なライト魔法です。」
「この魔法を使う為にぶつぶつ呟かないといけないの?」
「もちろんです。」
ああ、ワシ、心折れそう。無詠唱で慣れてしまったが故に、今更呪文を覚えるなど……
じゃが出来損ないを演じるなら呪文は覚えないと……じゃよな……
涙が出そう。
「ユア、呪文を覚えないという選択肢はあるのか?」
「無いですね。」
はうっ、一刀両断されたのじゃ。
「レベル一以下の魔法使いは魔力を持たない人間と同等の扱いを受けます。魔力を持たない人間は何かと肩身の狭い思いをされますから、それと同じような扱いをされます。」
「肩身の狭い……それは嫌じゃな。」
ワシの目標のためには肩身の狭い思いなどしないようにしたいところじゃが……。
「でしょう? ならば最低限の呪文は覚えるべきです。」
「なるほど……。じゃあユアが最低限の呪文を選別してくれ! なるべく覚えることを減らしたいのじゃ!」
「かしこまりました。ではまずお部屋にお戻りになりましょう。」
「分かったのじゃ!」
ここは家の玄関。長話になるだろうしとユアと共に部屋へ戻ることにした。
「で、最低限と言うとどれくらいの数になるんじゃ?」
部屋に戻り、ユアに聞く。ユアはにっこり笑顔でワシの教科書を手に取った。
「ではこの教科書に印をつけてもいいですか? その方が分かりやすいと思いますし。」
「お願いするのじゃ!」
「では失礼して……」
そう言って迷いなくユアは線を引いていく。それを後ろからぼーっと見ていると、二分程で書き終えたらしい。
「これくらい、ですかね?」
「ありがとうなのじゃ!」
それを見てみるとまあまあ多い量ではあるが、教科書全てを覚えるよりも効率的かもしれん。
「ユアすごい!」
「いえいえ。これでも魔法学校では高い成績を残したこともあるんですから。」
「……!!」
ユアってすごかったんじゃな! 尊敬の眼差しでユアを見つめる。
……まあ、前世のワシは常に首席じゃったがの。過ぎたことじゃから言うつもりもないが。




