37 ミネルside
「レタアちゃーん! ティータイ、ム……」
「ミネルゥゥウウ!」
「え、ちょ、レタアちゃんどうしたのぉう!?」
レタアちゃんの気分転換にでも、と紅茶とバウムクーヘンを持ってきたのだが、彼女はなんか一人で荒ぶっていた。
「魔法使いたいっ! 魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法魔法」
「レタアちゃん落ち着いてぇぇえええ!」
なんか魔法中毒者というか魔法依存症とでも言えそうな荒ぶり方に、私も稀に見る大声で返事をしてしまった。
「はぁ……で、レタアちゃん……一体どうしたのさ?」
なんとかレタアちゃんを宥めて深呼吸させて落ち着かせた私。ああ、一仕事終えた気分だ。
少し疲れた、と一つ溜息を零したのち、レタアちゃんに事情を聞くことにした。
「ついさっきディエゴとの約束?を思い出してな、連絡も何も取っていないことに気がついて伝達魔法を展開しようとしてな、魔法使っちゃ駄目だって言われたのも思い出してな、不便さを自覚したら居ても立っても居られなくなってな……。」
なんだろう、レタアちゃんから哀愁を感じる。いや、それを通り越して真っ白に燃え尽きているようにすら見える。そんなに魔法が使えないことが苦かね。まぁ、苦だから発狂しているんだろうけれども。
「ふーむ……確かその連絡ってギルドに届くようになってるんだよね?」
「そうじゃ。」
「なら私がアルタさんに連絡を取るから、ゆっくりしてて。」
「む……」
「い、い、ね? 魔法は使わないこと!」
「……はぁい。」
まだ不服そうなレタアちゃん。これはどうにもならないことだから諦めて大人しくしていて欲しいところなんだけど……なんか企んでいそうな気がする。
「ここから抜け出して討伐に参加しようだなんて考えてないよね?」
「ぎくっ!」
……カマかけたらこれだものねぇ。私はもう一つ溜息をつく。
「レタアちゃん、少しでも魔法使ったら……」
「つ、使ったら……?」
「今日のおやつなし!」
「分かった魔法使わない」
「じゃあお茶にしよう!」
言質は取ったからね!
なんか今のようなやり取りをしていると、レタアちゃんより私の方が年上のような気がしてきた。精神的な年齢は圧倒的にレタアちゃんの方が上なはずなのに。不思議だねぇ。
さて、ということで気分転換しましょう! アルタさんに手紙を書くのはその間でいいかな?
レタアちゃんが魔法を使うのを止めるのって結構体力使うし(現に今もう既に疲れた)、アルタさんにもレタアちゃんのストッパー役として要請しておこうかな。
そんなことをグルグルと考えながら、メイドがお茶を用意する様子を眺めるのだった。




