33 ミネルside
「レタア先生、お目覚めになられ……」
あ、そうだった。私と一緒に父母もレタアちゃんの様子を見に来たんだった。レタアちゃんが魔法を使おうとしていたから思わず先に突撃してしまったが……
あれ、レタアちゃんを見たお父さんとお母さんがピシリと固まった?
「れ、れれれレタア先生、ですか……?」
「はい。そうですが……あ。」
「あ。」
レタアちゃんと私の声が重なった。そういえば今レタアちゃんの魔法が切れているから、九歳児の姿だった。私は見慣れているからなんとも思わなかったけど、二人は見たことがなかったよね……
レタアちゃんは右に左に目を泳がせ、どう言い訳しようかと悩んでいるようだった。
「も、ももも申し訳ありませんでした。嘘ついてました。」
「……話を聞かせてもらおうかな。」
どうにもならないと理解したからなのか、レタアちゃんはベッドの上で土下座した。それを見て何か事情があると察したらしい二人はソファーに座ってメイドにお茶を頼んだらしい。
「取り敢えず皆座って。あ、レタア先生はそこで良いよ。」
「……はい。」
もぞもぞとベッドの上に座るレタアちゃん。さて、レタアちゃんはどう話すんだろう……。私もいざという時は助太刀する気ではいるけどね。
お茶がそれぞれの前に出されたのを合図に、お父さんは話し始める。
「さて、レタア先生。どこから話してもらおうか……」
「ならまずはそのお姿のトリックから、なんてどうかしら?」
お母さんがそう提案してくれた。それを聞いてレタアちゃんは姿勢を正した。
「わ、分かりました。……私の姿は幻影魔法を使用していました。ただ、今は魔力を一刻も早く回復させる為にヴァリアス先生が一つを除いて全ての魔法を解いてしまったらしいのです。なので本来の姿になってしまっています。」
「幻影魔法……」
「成る程、それなら魔力切れになってもおかしくはないですね……」
レタアちゃんの言葉にウンウンと納得する父母。あれ、でも幻影魔法使い続けて数年経っていたはずなのに、何故今のタイミングで魔力切れを起こしたんだろう?
私は一人内心首を傾げながらも、話の腰を折ることは憚られたので今は黙っておく。
「しかしミネルヴァと同年代と見受けられますが、魔法の知識はどこから……?」
「ミネルヴァちゃんの実力は日に日についてきています。それも私達にも充分目に見えて分かる程。それを可能にしたのはレタア先生の実力です。感謝こそすれ、非難することはあり得ませんから、正直に話してくださいな?」
「あ……ええと……」
レタアちゃんは言い淀む。まあ、そうだよね。伝説の魔女の生まれ変わりです、だなんてあまり現実的ではない。転生者である私だからこそすんなりこの状況を把握出来たのだ。言いたくないと思うのも普通だろう。
「レタアさん……そんなに言いにくい事情があるんですか?」
「……ええ、まあ……」
「だがなぁ、言ってくれなければ私らも判断のしようがない。そこは分かってくれ。」
「……そう、ですよね。分かりました。ですが、現実的な話では無いです。それだけは留意して頂ければと。」
「……? 分かったわ。」
「では。」
すぅーはぁー……
一つ深呼吸をしたレタアちゃんは、いつも以上に真剣な表情で話し始めた。
「私は……ワシは、とある人物の生まれ変わりなのです。」




