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「あー、はー、うーん……じゃがワシは今一般市民としてひっそりと暮らしているんじゃ。それなのに外でそう呼ばれると『あの偉い魔術師団長に様付けされるワシは何者か』と問われるじゃろう。……ワシ、目立つのは嫌じゃ。」
「ですが……」
「いいか。ラールルの時は魔法の天才だったが故、孤独に死んでいった。今回はそんな死に方はしたくないのじゃ。今世の目標はただ一つ、『孤独死しない』なのじゃから。」
ワシのその言葉を聞いたディエゴは数秒固まり、その後納得したような表情へと変わった。
「……かしこまりました。他に人がいらっしゃる時は僭越ながら『レタアちゃん』と呼ばせていただきます。」
「あとタメ口でいいからな。」
「そんなぁっ!? 無理ですよぅ! 神に足を向けて寝るようなものじゃないですか!!」
「いや、ワシはそんな大層な人間ではないぞ?」
なんじゃ、やっぱりワシって神か何かだと思われているのか? ちょっと怖……
「そんなわけあるもんですか! ラールル様はウンヌンカンヌン……」
どうしよう、多分このまま放っておくと何時間もワシについて語り出しそうな勢いじゃ。これは止めなければ。
「この話を振ったのはワシじゃが……そろそろその辺で……」
「え? ですがラールル様の素晴らしい所業を……」
「本題から外れている。ワシをここに連れてきたのは理由があったのじゃろう?」
「ああそうでしたそうでした! 私としたことがウッカリウッカリ! で、本題なのですが、今回の魔物活性化の対抗策として魔物の測量と討伐が上がったのは今日の会議に出席されたレタア様もご存知でしょう。」
「うむ。」
「そこで、測量と討伐を魔術師団と騎士団の合同で行おうと決まったのですが、レタア様にもお手伝いいただけないかと……思いまして……」
「ふむ……成る程……そうじゃなぁ……」
この世界の住人の平穏は守りたい。しかしそのためにこの提案を飲むと、ワシがラールルだと露見してしまう恐れがある。
そうするとまた前世のような暮らしが待っているかもしれない。それは嫌じゃ。人と関わることに楽しみを見つけてしまった今のワシには、そんな生活は苦でしかない。
しかし世界の平和のために……じゃがワシの生活が……ああ、ぐるぐると考えがまとまらない。
どうにかならないか、どうにかならないか……
「……なぁ、ディエゴ。」
「はい。」
「ワシの名前などを伏せた状態で、参加することは可能か?」
「と言いますと?」
一つだけ、案を思いついた。上手くいくかは分からないが、取り敢えずディエゴにも話してみようか。
「ワシはラールルの頃のような生活に逆戻りしたくない。今の生活を守りたいのじゃ。そのためにはワシの存在を秘匿してもらうのが効果的だと思った。」
「ふむ……?」
「ワシは……ワシはもう、独りぼっちは嫌なんじゃ。」
「っ……!」
前世での生活を思い出してしまい、つい思いの丈を溢してしまった。




