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辺りは真っ暗で、既に今は深夜なのだろうと感じた。
そしてこの夜が、自分が意識を失ったのとはまた、別の日の夜であることも、アユミは気づいていた。
――あれから・・どれだけ眠っていたんだろう。
長い夢を見てしまった。おかげで、アユミは全てを理解した。
そっと上半身を起こす。
寝かせられていたのは自室のベッドの上だった。
恐らく、エリオットたちが運んでくれたのだろう。
ふと、自身の掌を包み込む温かいものに気づき、視線を向ける。
アユミの手をしっかりと握り、ベッドにしがみつくように眠っているエリオットの頬に、涙の跡があった。
「・・皆。また・・傍にいてくれたんだ。」
部屋を見渡し、アユミは微笑んだ。
ソファにはピア、壁にはカーティス。皆今は静かに眠っていて、アユミはそんな彼らをとても愛しく思った。
――・・それでも。もう行かなきゃ。
そっとエリオットの手を離し、アユミはベッドを降りた。
辺りは静かで、誰一人アユミの目覚めに気づいていない。
「・・ありがとう。皆・・」
アユミにとって彼らは、本当に、大切な仲間だった。
――ピアちゃん・・
何考えてるのかはちょっとわかりづらかったけど・・
いつも仲間を思い遣っていた、賢くて優しい少女。
――カーティスさん・・
物騒で凶暴で、最初はとことん戸惑ってしまったけど。
彼が何事にも真剣に、真面目に取り組んでいた事を知っている。
――エリオット・・さん・・
私の・・誰よりも・・大好きな人。
床に降りたアユミは、ゆっくりと一人ずつ、顔を覗き込んで、その安らかな寝顔を脳裏に焼き付けた。
彼らを起こすことのないよう、静かに部屋を出る。
暗い廊下の向こうに、白い淡い光を放っている小さな生き物がいるのが見えた。
「・・・ポチ。」
お座りの体勢をしたポチは、空色の瞳を輝かせアユミを見上げた。
嬉しそうに尻尾を振っているのが見えて。アユミは微笑んでその白い毛並みを撫でた。
触れた瞬間、電流のようにアユミの記憶が覚醒する。
千年以上の命を繰り返してきた記憶が、誰よりも、王国を愛していた思いが。
「・・くぅーん」
ほんの少し寂しそうに、ポチは目を細める。
アユミは今までの彼女がよくそうしていたように、ポチを抱きしめた。
「ありがとう・・ポチ。皆のこと、よろしくね。」
アユミの言葉に、ポチが尻尾を振って見せたのがわかって、アユミは身体を離した。
行かなければ。もう時間が・・ないんだ。
玄関を出た。空の上で星はキラキラしていて。
アユミはそれを見つめながら、ゆっくりと階段を下っていった。
一階の階段を降りる時、アユミはその下にインフィニティが立っていることに気づいた。
「・・・アユミちゃん・・。」
彼女はほんの少しだけ戸惑ったように、目を見開くと。
階段を降りるアユミに、手を差し伸べた。
その手が小さく震えていたので、アユミは思わず笑ってしまう。
「待っててくれたんだね。ずっと、ずっと心配しててくれたんだね。」
――・・一番大変だったのは、貴女だったんだ。
辛かっただろうに、苦しかっただろうに。気づけなくてごめん。
「ありがとう・・。貴女が居て、良かった。」
呟いて、彼女の手を取る。
インフィニティの瞳から、涙が零れて煌めいた。
「・・行きましょう。」
呟き、彼女はアユミの手を引いて一緒に歩いてくれた。
星明りの照らす夜道に二人の影が並ぶ。その影は道の遠くに溶け込んで消えていった。




