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■■第十八章■■

『おっす。今日はどうだった?』

 電話口から聞こえるコウノスケの声は今日も暢気だ。

「早速、例の女子高生らに会ってきた。

 最近の女子高生って・・凄いんだな。制服の時とはだいぶ印象違ってたよ。」

トウヤはド派手に化けた少女たちを思い出し、苦笑い交じりに言った。


『だっろー?道歩いてたら一瞬、高校生に見えねぇよな。俺が今つきあってるコもそうなんだけどさ。』

「は!?お前、いつの間に・・!今女子高生とつきあってんの!?」

突然のカミングアウトに、トウヤは思わず声を荒げた。

『いや、ネットで知りあったんだけどよ。特にそんなつもりもなく会ってみたら、

 相手のコもろタイプでさ!女子高生とは気づかずに、つい、ひと夏の思い出に♪』

「アホか・・」

トウヤは溜息をついた。

コウノスケとトウヤは女性の好みがまるっきし違うので、多分その女子高生にときめいたコウノスケの気持ちは理解できない。


『ま、いいじゃねぇか。それよりも本題だろ?』

「そうだったな。」

 促され、トウヤは今日の出来事を話した。

今日会った少女らは、少女Iとほぼ接触したことはなかったと。

少女Iはオタクっぽいと認識されており、彼女の周囲にもその手の友人が多いこと。

多分少女Iのクラスは三組で、文化祭ではコスプレ喫茶をやっていたこと。

少女アヤが、三組に友達がいるからということで、今度その友達と会う約束をしたこと。


「夕方ごろにメールが来てな。その友人・・テツっていう男らしいんだけど、そいつとは明日会うことになった。」

『良かったな。早い展開じゃねぇか。』

「そうだな。助かるよ。」

電話口でトウヤも頷く。

恐らく、この展開の早さにはミチコの存在が一役買っているのだと思う。ミチコは明らかに、トウヤに惚れていた。

アヤとカオルは、ミチコとトウヤをくっつけたいらしい。そのことは、店内での彼女たちの口ぶりから予想がついた。


『・・で、魔法陣のほうは何かわかったのか?』

そう次の話題を促すので、トウヤもそれに従う。

「ああ。まぁ、図書館に篭って、色々読み漁ったんだがな・・」

 結論をいえば、吐き気がしただけだった。

「なんていうんだろ・・神学の本はまだいいんだ。黒魔術ってやつ?あれ気色悪いなあ・・」

それが載っていたのはおまじないや呪いの本だった。

描く魔法陣と並んで、黒魔術の内容が少し触れられており、オカルトに耐性のないトウヤからすれば、かなりエグい内容だった。

思い出すだけでうんざりしながらも、トウヤは言う。

『わかるわかる。俺も前の彼女とはそこの趣味があわなくて別れたし。』

コウノスケが同調した。


 トウヤが図書館に入ったのは十四時くらいからだった。

そこから、閉館の十七時まで棚の本を読み漁ったのに、得た成果は非常に少なかった。

「魔法陣ってのも、東洋と西洋・・色々あるもんだな。

 とりあえず、お前が言ってた悪魔召還の魔法陣ってやつ。その本探してみたんだけどな・・」

『見つかったか?』

「見つかるか!どんだけコアな本読んだんだよ!」

笑いまじりに、言ってやった。

悪魔召還・・それについて書かれた資料は、やはりこんな地方の図書館には、置いてないようだった。


『そういや、俺が読んだあの本も日本語じゃなかったもんなあ。

 彼女が説明してくれないと、俺にはちんぷんかんぷんだったわ。』

それを先に言っておいてほしかったと、トウヤは頭を抱えた。


「まあ、おかげでその魔法陣ってやつは見れなかった。

 その他魔法陣と名のつく本は片っ端から読んだんだが・・駄目だな。どれも役に立たないどころか、大半がファンタジー小説だ。」

ため息混じりにそう言うと、

『ひゃっはは!おつかれー、どんまい!』

コウノスケは他人事よろしく愉快に笑った。ちょっと電話の向こうに行ってどついてやりたくなる。


「結局成果はなしだ。なんなんだろうな・・この魔法陣は。」

 トウヤの目の前で突然変色し、回転し始めた魔法陣。

今ではただの画像ファイルにしか見えないそれは、学校の中庭でのみ、奇妙な動きを見せた。


「明日、もう一度試してみようかな。学校に行って、魔法陣が再び発動するか試すんだ。

 もしかしたら俺が一昨日探しきれなかっただけで、 他にも魔法陣が反応する建物があったかもしれないし。」

・・・とにかく、この魔法陣がもう一度動くところが見たい。

そう考えを口にすると、電話の向こうのコウノスケの声が少し陰った。


『おいおい。やめといたほうがいいと思うぜぇ?

 少女Iはその魔法陣を直ぐに消せと言ってたくらいだ。多分、少女Iの指示以外に使っていいものじゃないんだろう。

 本当に、お前の身が危険になるのかもしれないんだぞ?」

そう危惧するコウノスケを、トウヤは鼻先で笑った。


「わかってるさ。でもこの魔法陣を調べるのに、これ以上の方法はないだろう?やってみる価値はあると思うし、それに・・」

――・・それに、俺は多分、このスリルを求めてるんだ。

 そう言うと、電話口で、コウノスケがククっと笑う声が聞こえた。


『お前は本当、無謀だなあ。頭は良い癖に。やることが馬鹿らしいや。』

「ほっとけ。俺は楽しければなんでもいいんだよ。」

『まあ、おかげで俺にとってもいい暇つぶしだ。

 魔法陣のことは、俺もネットで調べといてやるが・・何事も、ほどほどになあ。』


ふざけてるのか頼もしいのかわからない言葉を残した友人に、トウヤは適当なお礼を言い、報告の電話は切る。

 明日の今頃は、少女Iに今よりももっと近づけている筈だ。ついでに魔法陣の謎を解く鍵も見つかっていたらいいと思う。


 トウヤはベッドに寝転がると、今日図書館から借りてきた、それらしい表紙の本を開き、読み始めた。

読みながら気づいたのだが、残念ながらそれは魔術の専門書でも何でもなかったようだ。

ただのファンタジー小説で、タイトルには

 

  『SYNAPSE FANTASIA』とあった。


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