第31話 Episode of 犯人 (3)
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私、谷口文香は26年前、長野県の田舎の村で生まれた。
子供の頃はとにかく活発で、動き回っていることが多く、よく両親をヒヤヒヤさせていたと母から聞いた。
私が生まれてから8年後、妹が生まれた。
名前は穂乃果。
とても可愛く天使みたいな存在で、私を含め家族のみんなから愛されていた。
活発だった私は、お姉さんとしての自覚が芽生え始め、お手本となるように言動を意識し始めた。
私たち4人はとても充実した生活を送り、こんな日々が続くと思っていた…
しかし、私が高校入学と同時に父が事故で亡くなった。
飲酒をした対向車が突っ込んで来た正面衝突事故だった。
その時、何かが崩れていく音がした。
私は現実を受け入れることが出来ず、引きこもりがちになったが、母と妹は私以上に落ち込んでしまっていた。
母は性格が変わり、私たちに暴力を振るうようになった。
仕事を辞め、常に家に閉じこもり、家事も何もしないでいた。
だが、そんな母でも私たち姉妹にとってはたった1人の母親だったので、暴力に耐え、2人で支え合いながら過ごすようになった。
流石に家にいると体が持たないと思った私と穂乃果は、学校へ行くよう決意し、1人にならないように一緒の時間に家を出て、一緒の時間に帰宅をするようにした。
とても辛かったが、2人でなら頑張れると思っていた…
しかし、高校卒業寸前、またしても悲劇が起こった。
母が自殺をした。
買い物をして2人で家に帰ると、母は床に倒れ、辺りには大量の錠剤が散らばっていた。
神様は私たち姉妹から全てを奪って行ったのだ……
大学に行くお金が無かった私は、必死に勉強をして近くの地方テレビ局に就職が決まっていたので、穂乃果が高校を卒業するまでは、この家に2人で住もうと決めた。
父親と母親が亡くなり、私たち2人はこの世に取り残されたが、2人での生活はとても楽しく充実していた。
小さな事で笑いあったり、毎日のように一緒にお風呂にも入ったりもした。
穂乃果がテストの点を自慢してきたり、どんどん成長していくのがとても幸せに感じるようになった。
そう…穂乃果は私にとっての生きる意味になっていたのだ……
そんな穂乃果は中学生になると、アイドルに興味を持ち始め、名前は『電脳少女』と言って女の子5人のグループらしい。
「どこが好きなの?」と穂乃果に尋ねると、可愛くてキラキラしてて、こんな自分にも夢や希望を与えてくれる……笑顔でそう答えてくれた。
私はあんまり分からなかったのだが、穂乃果が笑顔になってくれるのはとても嬉しかった。
そして穂乃果が高校生になった時、穂乃果が私にあるお願い事をしてきた。
『電脳少女』が長野県でライブをするので、是非行きたいということだった。
穂乃果が頼み事ををしてくるなんて、初めてかもしれない……もちろん私は快諾した。
一緒に行きたかったのだが、その日は仕事だったのでライブへは穂乃果1人で行かせた。
電車で7駅くらいのところが会場だったので、それほど心配はしていなかった。
ライブ当日。仕事から帰った私は料理を作って穂乃果の帰りを待っていた。
どんなライブだったのだろう、穂乃果は興奮しながら話してくるのだろうか……そんな事を考えるとワクワクした。
が……帰宅予定を過ぎても穂乃果は帰ってこない。
ライブの会場が混んでいるのだろうか?
意気投合する人が見つかって話し込んでいるのだろうか?
少し不安になりながらも、私は特に焦ることもなく待ち続けた。
しかし、どれだけ待っても穂乃果は帰ってこなかった……
その時、家の電話が不快な音をたてながら鳴った。
その電話で私の人生は一変することになる。
耳に飛び込んで来たのは、敢えて考えないようにしていた事だった。
穂乃果が事故に遭って死んだ。
その場に崩れ落ち、胃の中にあるものが全部出た。
私にはもう、何も無くなってしまった。
あの日から、どれだけ泣いただろう…どれだけもう死んでやろうかと思っただろう……
生きる意味を失った私は、水も食べ物も体に入れずただテレビをぼーっと眺めていた。
テレビではちょうど、穂乃果が行った『電脳少女』のライブの特番をやっていた。
リモコンを取る力、まぶたを閉じる力も無い私はその画面を見続けた。
〈それでは、センターの結城夏花さんにお話を聞いてみようと思います…〉
《どうも〜!結城夏花です!》
どうやらこの結城夏花さんと言う人がこのグループのセンターらしい。
〈先日のライブ、大盛り上がりだったそうですね?〉
《はい!長野県の皆さんの熱量に圧倒されてしまいました!》
〈ところで結城さん、ライブの後にサプライズをしたようですが……?〉
《はい…ライブ終了後、テンションが上がっちゃって…私と風見零のわがままで、もう一曲追加で披露させて頂いたんです!》
〈それはさぞ盛り上がったのでし……〉
!!??
もう一曲追加で……?
私は、飛び起きて画面にへばりついた。
こいつらが勝手なアドリブを加えたせいで、穂乃果はあの時間あの場所で車にひかれた……?
こいつらのせいで穂乃果が…?
その瞬間、私の中で殺意という感情が芽生え、一気に膨れ上がった。
『電脳少女』……結城夏花……風見零……許さない。
私は早速行動に移した。
恐ろしい脅迫状を何通も書き、事務所へ送ってやった。
こうやって復讐をする事で、穂乃果のために行動しているのだと感じ、自分の存在意義のよう思えた。
しかし、脅迫状を送ったところで何のリアクションも無い…おそらくマネージャーあたりに処理されてしまっているのだろう……
そうだ……だったら私がマネージャーになって直接あいつらを殺せばいいじゃないか…
私は苗字を「神山」に改名し、復讐のためにマネージャーになる事を決意した。
読んで頂きありがとうございました!
では!




