第2話 夢か現実か
よろしくお願いします!
後ろを振り返ってみると、少し遠くの方に人影が見えた。
あの人影が声の主なのだろうか……2人……いや3人だろうか。
「助け…」 ゴッ!!
えっ……??
金属バットで殴ったような、そんな鈍い音がした。
街灯の弱い光が照らす薄暗い闇の中、人が倒れるのがうっすらと見えた。
まずい、まずいまずいまずい!!
とんでもないところを見てしまった……
助けに行かなくてはならないのだろうが、いざこのような恐ろしい事態に直面すると足が震えて全く体が動かない……!!
女の人が助けを求めて必死に叫んだのに、俺は一体何をやっているんだ……!!
今までの人生1つでも人の役に立ったことがあるか…悔しい…くそ!!くそ!!
そんな情けない自分に腹がたち、震える足を叩き上げ、気がつくと俺はその助けの声の元へ走り出していた。
あの鈍い音が聞こえた後だったので、ひょっとするともう遅かったのかもしれないが、今その声の主を救えるのは俺しかいない。
人とは不思議なもので、これが渋谷のスクランブル交差点で起こっていたならば、群衆に紛れ、気の毒とは思うものの自分は巻き込まれたくない、誰かがやってくれるだろうと思うものである。
……俺もその1人だ。
でも今、俺は動き、行動に移している。
変わらない毎日、何のために生きているのかもわからない……だったらこんな命、こんな人生どうなってもいい。
そう思えたいいきっかけなのかもしれない。
「大丈夫ですか!!!??」
俺はなるべく周りにも聞こえるくらいの大声で駆け寄った。
……っ!?
女性が2人と…黒服のバットを持った人が1人…
暗くてよく顔は見えなかったが、そのうち1人の女性は頭から血を流し倒れている!!
「う、うわあああぁぁ!!!」
その光景を目の当たりにした俺は反射的に大声を出してしまった。
怖い、怖すぎる。
思えば俺は武器も何も持っていない。
どうする、どうしよう……
その時、こちらに気がついた黒服がもう1人の女性に近づいた!!
まずい!!このままでは次はあの子が犠牲になる!!
「その人から離れろ!!!」
武器も何も持っていなかった俺は、黒服に捨て身のタックルをした。
ドスッ…!!
黒服のガタイがそんなに良くなかったため、なんとか女性との距離を離すことができたが、相手は武器を持っているし、まだ危険すぎる。
「あなたは早く逃げて!!!」
俺は後ろを振り返りその女性に強く言った。
「…でも、それではあなたが…」
え、声可愛い……
いやいや、そんなことを考えている場合ではない!
「いいから早く!!」
「で、でも…」
彼女は動かない。恐怖に怯えているうえ、助けに来た人を見殺しになどできないのだろう……
カランカラン……
!?後ろから金属バットを引きずる音がした!
「…よくも、邪魔してくれたな…死ね」
彼女の声の可愛さに一瞬気を取られていた俺は、黒服に背後をとられてしまっていた。
くそ!!こんなところで童貞が仇になるとは……
黒服は金属バットを振りかぶり、何も抵抗できない俺の頭を強く殴った。
殴られる寸前、黒服の顔がチラリと見えたが、そんなことはもうどうでもよかった。
ゴッ…!!!
鈍い音と共に激痛に襲われた俺は地面に倒れた。
頭が熱い……あぁ、俺死ぬのかな……
薄れゆく意識の中、パトカーのサイレンが少し聞こえた。
「…チッ…くそ!!!」
そう言って、走って逃げ去る音がした。
恐らく黒服は諦めて逃げ出したのだろう。
よかった……1人の女性を救うことができた……
そうして俺は意識を失った。
「…大丈夫ですか!!…っ!!救急車だ!
救急車を呼べ!!」
「…ううぅ…私のせいで……」
「あなたにお怪我はありませんか!!??」
「はい…でも2人が…うぅ」
「諦めるのはまだ早い!希望を捨ててはダメだ!」
「はい……」
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「んっ、んん〜…痛っ!!」
頭が痛い……
ここはどこだ?病室か…??
確か、女性を助けに行ってそれから……
ダメだ、あの時の事は思い出せない。
「よかった!!!目が覚めた!!!よかった……よかった!!私、あなたが死んだらどうしようって…」
……え……?
……これって、夢……?
それとも俺は死んだのか……?
そう思うのも無理はなかった。
なんせ目の前には、泣きながら俺の手を握る女神のような女性、『電脳少女』のセンター「結城夏花」がいたのだから。
「最高の夢だ……」
バタンッ…
「え!!??ちょ、ちょっと!!」
俺はまた、意識を失った。
読んで頂きありがとうございました!
では!