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第26話 運命

よろしくお願いします!

ブックマークや評価して下さった方々、本当にありがとうございます。



12月25日、風見零とのデート当日。



午前9時。俺は1本の電話で目が覚めた。



零との集合時間は午後7時なので、今日は昼まで寝ようと思っていたが、どうやら俺の計画は失敗に終わったようだ。



「誰だよこんな朝早くに…」



俺は布団から腕だけを出してスマホを取り、横になりながら電話に出た。



「もしもし…瀬良です。」



「…おはようございます瀬良さん、榎本です。こんな朝早くからすみませんが、今お時間大丈夫ですか?」



「え、榎本さん?何かあったんですか!?」



俺は布団から出て正座をし、両手でスマホを右耳に押し当てた。


みんなも、電話越しなのに頭を下げたり、表情を作ったりする事があると思うが、まさにそれだ。



「いやいや、今日は別にそういうのじゃないですよ。リラックスして貰って大丈夫です。」



「…じゃあ一体何の用事なんですか?」



「ちょっとしたお願いなんですけど…いいですか?」


「聞いてから決めさせて下さい。」



「分かりました……以前スキー場で会った時、私の部下を紹介したのを覚えていますか?」



「はい。確か名前は……」


「滝枝です。」



「すみません。記憶力が無いもので……それで、滝枝さんがどうしたんですか?」



「それが先日、滝枝からこんな相談があったんです。《瀬良さんたちが襲われた事件についてもっと詳しく知りたいので、あの時襲われた3人と話をさせてくれませんか?》……私は滝沢からそう頼まれました。」



「どうして滝沢さんがそんな事を…?」



「実はあいつ、今回の事件が初めての担当でとても張り切っているんです……まぁ私みたいに勝手な行動は許されていませんが。だから仲のいい私に相談してきたのでしょう。」



「そういう事だったんですね。…いいですよ、協力します。それで、警察署にはいつ行けばいいんですか?」



「あーー…警察署は上からの許可が出てないのでダメなんです…」



「…じゃあ、今度うちの店にでも来て話し合いましょう。それなら大丈夫ですよね?」



「助かります……これも滝沢からの頼みなんですが、できれば3人一緒で話し合いたいとのことでして…」



「それは他の2人の日程が合わないかと……とりあえずマネージャーさんに聞いてみて、都合が合いそうだったらまた連絡します。」



「ありがとうございます……それでは失礼します。」



そう言って、榎本さんとの電話は終了した。



滝沢さんか……ちょっとでも力になれれば良いんだがな……



俺は寝れないと分かっていながらも再び横になり、まぶたを閉じた。




➖➖➖➖➖




12月25日午後18時45分。


俺は零との待ち合わせ場所に車(高めのレンタカー)を止めて待っていた。



駅前などの目立つ所での集合は、今後の彼女のアイドル活動と俺が殺される確定演出に繋がりかねないので、こういう形を取るしかなかったのだ。



コンコン……


変装していたので一瞬不審者かと焦り散らかしたが、窓をノックしていたのが零だと分かり、俺は軽く手をあげた。



ガチャッ…



「ごめん海斗…待った?」


「5分しか待ってないよ。」


「そこはふつう待ってないよ、でしょ…」



どうやら俺は開口一番で発言を間違えたらしい。



「それで海斗…これからどうしよっか?」



「う〜ん…本当は食事とかイルミネーションとかが定番なんだろうけど、人目につくところは避けたいよな…」



昨日の深夜に今日のデートが決まったので、プランはまだ決まっていなかった。



「…じゃあさ、ドライブしようよ!私、こういうノープランなデートしてみたかったんだ」



「デ…デートってそんな…もっと他に言い方あるだろ…」


暗くて零には見えていないだろうが、俺の顔は真っ赤になっている。

情けない…



「もしかして嫌だった?」


さっきまでの声とは違い、どこか寂しそうな声で零が呟いた。



「嫌だったら来てないし…その……めちゃくちゃ嬉しかった…」


お互いに顔を背け、しばらくの間、自分の心音だけが頭の中に響いていた。




➖➖➖➖





「ねぇ海斗、なんか曲流してよ。」


「おう…スマホ繋げてあるから音量上げてくれないか?」


俺たちは今、東京から出て千葉県の南の方に車を走らせている。


零が昔生まれ育った場所で、連れて行きたい場所があるのだという。



俺たちは『電脳少女』の曲を目的地まで延々と2人で歌い続けた。


歌詞を間違えた零をイジったり、逆に俺が気持ちよく歌っている時に零が音楽を止めてきたりと、とても楽しいドライブデートだった。





「零、ここで良いのか?」


「うん。」


到着した場所は、街灯もない海辺のような所だった。



「海斗…こっちこっち。それと、私が良いって言うまで上を見ちゃダメだからね?」



「分かった分かった。」



車から出た俺は零の足元に視線を落とし、彼女について行った。



「ほらここ…一緒に座りましょ。」


そう言って零が座りながら地面をポンポンと叩いた。

そこは防波堤のような場所で、俺たち2人は足を宙にぶら下げるような形で座った。




「海斗…上を見て。」




「………っ」





その星空の美しさに、俺は何も言葉が出なかった。


東京に来てから、いや、生まれてからこんなに綺麗な星空を俺は見た事がない。



こんなに星があったなんて知らなかった…



「どう?綺麗でしょ?」



「うん…このまま吸い込まれて行きそうだ…」



「私ね、小さい頃から嫌な事があったらよくここに来てたの。自分の悩みなんか小さいんだって、星空はあなたの味方だよって、そう言われている気がしたの。」



「みんな同じ空を見てるのに、どうしてこうも違うんだろうな……」



「あの日、海斗が助けてくれなかったら、この星空をこうして見ることは出来なかったんだよね。」



「そうだな…」



「ありがとう海斗……」




「「……」」



今までとは違う、心地の良い沈黙が俺たち2人を包み込んだ。





「ねぇ海斗……」


「なんだ?」






「好きだよ。」









読んで頂きありがとうございました!

では!

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