第13話 零からの頼みごと
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格好つけて2人を帰したのだが、その後意外に客足が増えて俺は少しだけ後悔していた。
「くそ、今頃あいつらは公園でとんでもない事をしてるっていうのに俺は……」
動きを止める暇がない俺の頭の中は、夏花さんや零の事ではなく、あのクレイジーカップルの事でいっぱいだった。
ダメだ……1人でこの信じられない事態を抱え込むのは辛すぎる。
今日の夜、零にでも相談してみよう。
そう思いながら俺は閉店までの3時間、必死に働いた。
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時刻はいつも通り22時ちょうど。
地獄のような3時間が過ぎ、心身ともに疲れ果てた俺は締作業をしながら今日も来るはずであろう零を待っていた。
…カランカラン…
「…あら、今日はまだ全然片付いてないのね。」
そう言って零は、一直線に足を進めていつもの席に腰掛けた。
「あぁ、実は今日とんでもないことが発覚して、全く作業に集中できないんだ…」
そう言って俺は2人分のコーヒーを持って零の向かい側に座った。
「海斗のそんな顔久しぶりに見たわ。…で、何があったの??」
「少し…いや、かなり下品な話になるが聞いてくれるか?」
「ド直球ね。……でも分かった、あんまり力になれないと思うけど話くらいは聞いてあげる。」
そう言うと零は、コーヒーを置き、真剣に聞く姿勢になった。
「ありがとう。驚かないで聞いてくれ…」
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俺は、今日あった出来事を彼女に全部話した。
かなり変な事を話している自覚はあったのだが、零は表情一つ変えずに静かに聞いてくれた。
「……そんなことがあったのね。でも海斗の言う通り、それは温かく見守るしかないわね……」
「だよなぁ〜。しかも、これだけ一緒にいて2人が付き合ってることにすら気がつかなかったなんて…」
「大丈夫よ海斗。別にこのことで3人の関係が終わったわけじゃないんだし、2人の特殊な性癖に触れなければ今まで通り普通に過ごせるはずよ。」
「そ、そうだよな!別に誰も悪いことをした訳じゃないんだし。ありがとう、零。おかげでちょっと気が楽になったよ!」
「それならよかったわ。」
零の薄いリアクションのおかげで、俺が話した事がそんなに気にする事では無いのかも知れないと思えて、体が楽になった。
「じゃあ海斗、私の話も聞いてくれる??」
「俺のこんな変な話を聞いてくれたんだ。何だって聞いてやるよ。」
「ありがとう。話…というか頼みごと何だけどそれでもいい?」
「ノープロブレムだ」
俺は何も考えずに即答した。
こんな美女に頼みごとをされて断るバカがどこにいるんだ。
「…よし…」
よし??
彼女は嬉しそうに小声でそう呟き、こちらを見て再び喋り始めた。
「私たち『電脳少女』が、ニューシングルを出すたびに特典映像をつけているのは知ってるわよね?」
「もちろん知ってるよ。大ファンだからな。」
「そ、そう。それで、次のシングルの特典映像が個人PVって言って、メンバーそれぞれが自分で台本を考えて撮影する映像に決まったの。」
「なるほど、それで俺にシナリオを一緒に考えて欲しいと……そういうことか?」
「いや、シナリオはもう考えてあるの。活動が再開したら長野県のスキー場で撮ろうと思ってて…」
「なんだ、もう決まってるのか。…じゃあ俺は何を手伝えばいいんだ?」
「…その…海斗には……ボディガードとして一緒に下見について来て欲しい……」
零の口から発せられた言葉は、衝撃以外の何者でもなかった。
「…え?お、俺が?」
「そう、海斗が」
彼女は真っ直ぐ俺を見て言う。
「…2人っきりで?」
「私はそうしたかったけど、マネージャーが許してくれなくて…だから3人で。」
おいおい、2人きりじゃなかったのは残念だが最高じゃねえか!!!
「よ、喜んで!!!」
俺は迷うことなく、零の頼みごとを快諾した。
その時だった!!
…バン!!!…
店の入り口が勢いよく開いた!!
突然の事に驚いた俺と零は入り口に目をやった。
そこには、夏花さん…その後ろにはクレイジーカップルの康平&千尋がいた。
「ちょっと零!!それってどう言う事!?」
普段とは違う雰囲気で声を荒げた夏花さんが、ズカズカと店の中に入ってきた。
「夏花…聞いてたの…?」
「えぇ途中からね!!店に来ると零が中に居たから外で中の様子を伺っていたの。」
夏花さんの勢いは止まらない。
「その時、店の外から中を覗くこの2人を発見して、事情を話してから、一緒になって貴方達の話を聞いていたの……そしたら零がとんでもない事を…」
この2人って、クレイジーカップルのことか…
「夏花、盗み聞きはよくない。」
「そ、それは悪いと思ってるけど…零だって抜けがけは良くないんじゃない??」
「まあまあ、夏花さん落ち着いて…」
「海斗さんも海斗さんです!あんな頼みごと…そんな簡単にOKしないで下さい!!」
まずい、こうなった夏花さんはもう止められない…
「だから……私もその下見に同行します!!」
「「え…??」」
「貴方達だけだと何があるかわかりませんから。これはもう決定事項なので異論は認めません!」
「な、夏花……流石に図々しいんじゃない……??」
少し怒りを込めたような声で零が反撃をする。
「あら〜?私が着いて行ったら何かまずい事でもあるのかしら?」
「そ、それは…」
「じゃあ大丈夫よね?」
そこから零は何も言えずに、夏花さんの同行が決定した。
「せ、瀬良さんが着いて行ったらお店はどうなるんですか??」
それを聞いていた千尋が、夏花さんの後ろから俺に聞いてきた。
「そうだな…店は休みにするしか…」
「それではこの2人が可愛そうですよ海斗さん……そうだ!!じゃあみんなで長野のスキー場に行きましょう!人数は多い方が楽しいですしね!」
そうやって、夏花さんがとんでもない提案をしてきた。
零はもう諦めたようで、ずっと浮かない表情で夏花を見ているだけだった。
「え、いいんですか!?」
「もちろんです!」
「やったー!私、スキー場行ってみたかったんですよね!」
千尋は夏花の誘いにとても喜んでいた。
「お、俺はそういうの得意じゃないんで……家でアニメでも観ときます。」
「おい康平、お前は絶対について来い」
俺は康平に腕を回し、ヒソヒソと話を始めた。
「別に、俺が行く必要は無いだろう。」
「男1人とか無理だって…頼むから来てくれ。色々聞きたいこともあるし……」
「嫌だよ面倒くさい。」
しょうがない、これだけはやめておきたかったが最後の手段を使うか……
「康平、俺はお前をクビにすることだってできるんだぜ…?」
「お、お前…汚いぞ!」
「夏花さん、康平もついて行きます!」
「じゃあ決まりですね!皆さんで楽しみましょう!」
「パ、パワハラだ…」
康平には少し悪い事をしたな…だが千尋と一緒に旅行に行けるんだから感謝して欲しいくらいだ。
こうして、俺たちは明後日、色々な思いが混じり合う中、一泊2日のスキー旅行に行くこととなった。
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では!




