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第11話 まさかの来客

よろしくお願いします!


「…さん。瀬良さん!2番卓さんにオーダー入ってますよ!!」



「お、おう悪い悪い…」


もう夕方になるが、今日はずっとこんな調子だ。昨日の一件があってから、俺は気持ちが浮ついていて何も手がつかない状態になっている。


《気になってるのは…瀬良さんの方です…》


風見さんが放ったその一言が頭から離れてくれない。というか、絶対に離れてほしくない。


今日も仕事が終われば風見さんが来てくれるかも知れない……そう思いながらふわふわと仕事をしていた。



「瀬良さん、何かいい事でもあったんですか?」


明らかにおかしい俺の働きぶりを見て、千尋が不思議そうに問いかけて来た。


本当は昨日の事を全て話して自慢してやりたいのだが、風見さんの名誉に関わるかもしれない上に、口の軽い男は嫌われるだろう。


この事は絶対に隠し通さなければ……


「いや、別に?何もないけど?」

俺は何も無かった風を装って返事をした。


「瀬良さん……コップ溢れてますよ。」


「う、うわっ!やっちまった…」


とぼける演技に集中してしまうあまり、俺は今までしたことのないミスをしてしまった。




「怪しい…怪しすぎる。ねぇ、康平さんは今日の瀬良さんどう思いますか?」


「う〜ん…確かに変だな。あいつ、仕事の時はあんな気持ちの悪い顔してないもんな。」


「「間違いない、絶対何か隠してる……」」


2人が俺に疑いに眼差しを向けているとはつゆ知らず、俺は閉店を待ち遠しく思いながら働いていた。



➖➖➖➖



時刻は22時ちょうど。

この時が来るのをどれだけ待っていたか、、今日は1日がとても長く感じたが、全てはこの時間のためだ。


ウキウキで店を閉め、神経を入り口に集中させながら締作業をしていた。


その時だった。


…カランカラン…


「こんばんは〜」


ん?この声は?…風見さんではない。

まず風見さんは「こんばんは〜」なんて言わないだろう。

タイミング悪く入り口から遠くにいたので、あまり聞き取れなかった俺は、厨房から出てその声の主を確認した。


瞬間、目を疑った。

そこには、赤く長い髪の女神が立っていた。


「…ゆ、結城さん!!??」


「あはは、バレちゃいました??零が、ここで瀬良さんが働いてるって教えてくれて…来ちゃいました。」


風見さん、昨日のこと話したのかな…?


「バレるも何も、変装してないじゃないですか!!危ないですよ!!」


「店に入る直前に取っちゃいました笑。不審者だと思われたく無かったので…」


「そ、そういうことだったんですか。…まぁ狭苦しいところですが、好きなところに座って下さい」


「ありがとうございます。」


そう言って彼女は、2人用のテーブル席にちょこんと腰掛けた。


今後、男性はあの席を使用禁止にしよう。


「タクシーとはいえ寒かったでしょう。これ、お口に合うか分かりませんが、飲んでください」


そう言って俺は、風見さんのために作るはずだったとっておきのホットコーヒーを彼女に差し出した。


「まぁ、美味しそう。私、コーヒー大好きなんですよね!」

彼女は赤い目を輝かせながらそう言った。



もちろん彼女がコーヒー好きである事は知っていた。

以前、芸人のラジオでゲスト出演していた時に彼女がコーヒー好きである事が判明し、俺はその事を覚えていたのだ。


彼女は、コーヒーをその赤くふっくらした唇に運び一口飲んだ。


「美味しい…」


もしかすると俺は、この瞬間のためにカフェを開いたのかもしれない……そう思えるほどに、この瞬間が幸せだった。


しかし、風見さんとはもう結構喋って仲が良くなっていたのだが、よく考えると結城さんとは全く喋っていないことに今更気がついた。


き、気まずい…何か話さなければ……


沈黙に耐えかねた俺は、何とか会話をしなければと思い結城さんに話しかけた。


「「あ、あの…」」


お互いの声が盛大に被った。


「ゆ、結城さんからどうぞ!」



「あ、ありがとうございます。その…昨日、零がここに来ませんでしたか??」


「はい、昨日のこの時間に…」


「やっぱり…メッセージを送っても何にも返事が来なかったんです。。」


「それだけでよく零がここに来たって分かりましたね。」


「い、いえ!!!なんていうかその、2人結構仲良くなってたから……もしかしたらと思っただけです!」


動揺しながら結城さんは答えた。


「そ、それで瀬良さんは何を言おうとしてたんですか?」


「僕は、結城さんがどうしてここに来たのか知りたくて…」

この質問、風見さんにもしたっけな。


「それは……瀬良さんと零が仲良さそうにしてることを考えると、何故かもやもやするんです...…そしたら私、いてもたっても居られなくて..….」


俺の質問から少し間が空いて、彼女はもじもじしながら話し始めた。


「え…?」


おいおいまさかこれって…嘘だろ…


「それに2人はもう敬語じゃないですし…多分私、そんな零に嫉妬してるんだと思います……」


まずいまずい…この展開は予測していなかった!!


ていうか、俺完全にあの日から生まれ変わったわ。もしかしてあの時俺は死んでいて、実はもうここは天国なんじゃないか??


「し、嫉妬って、俺と風見さんそんな関係じゃな…」

「だから、今すぐ敬語は無理でも、せめて下の名前で呼び合いませんか??ダメですか?無理ですか?」


結城さんのマシンガントークが止まらない。結城さんってこんな感じだったっけ…



「夏花さん落ち着いて!」



「あ、今名前で…」


「名前で呼ぶなんて、こっちからお願いしたかったくらいですよ。だから、そんなに焦らないで」


「ご、ごめんなさい…私焦ると周りが見えなくなってしまうんです……」


しょんぼりとうつむく彼女は、いつもよりひと回り小さく見えた。


「…とりあえず私、今日はもうダメダメなので帰ります……それじゃあまた来ますね、()()さん」


…カランカラン…


結局最後まで俺に口を開かせる隙を与えなかった彼女は10分もたたないうちに帰ってしまった。


 

俺のこの夢物語はいつまで続くのだろうか……



読んで頂きありがとうございました!

では!

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