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第10話 雨のち晴れ

よろしくお願いします!


興奮で一睡もできなかった俺だが、今から女神たちに会える事を考えると警察署に向かうその足取りは非常に軽快なものになっていった。


警察署に着いた俺は、受付窓口で榎本さんの名前を出し、案内された部屋で待機していた。


結城さんと風見さんはまだ来ていないようで、どうやら俺は早く来すぎたみたいだ。


ガチャッ…


っ!!!き、来た!!!

ドアが開く音がして、俺は満面の笑顔でそっちを向いた。


「うぉっ…び、びっくりした。お、おはようございます瀬良さん。今日は朝からわざわざありがとうございます。」


俺は幻を見ているのか、部屋に入ってきたのは30歳くらいの体格の良い角刈りの男だった。


結城さんと風見さんがこの2日間で変わり果てたのかと思ったが、おそらくそれはあり得ないだろう。

となると可能性として考えられるのは...


「…あの〜…ボディガードの方ですか…?」


「い、いえ、昨日電話した榎本ですが……」


「そうでしたか……それで、2人は後どれくらいで来そうですか?」


「…?今日は瀬良さん1人にお話しをお伺いするので、他には誰も呼んでいませんよ?」


「…え?」

その瞬間、体から一気に力が抜け、俺の顔から笑顔が消えた。


「せ、瀬良さん!?やはりあなた、人格を複数持っていますよね!?」


「そんな事はもうどうでもいいんです……話を始めましょう。」


血の涙を流しながら俺は榎本さんにそう言った。


「い、一体何が君をそうさせるんだ……」



〜〜〜




「…私が知っている事はこれで全部です。」


俺は、事件について覚えている事を榎本さんに全部話した。


「なるほど…やはり他の2人と同じ証言ですね。。今のところ事件を解決する手がかりは見つかりそうにないな……」


「…榎本さん…今、他の2人って言いました?」


「は、はい…」


冷静を取り戻していた俺は、榎本さんの失言を聞き逃さなかった。


「それってもしかして、結城夏花さんと風見零さんですか?」


「そうです。お2人にも昨日お話をお伺いしました。」


「…個室で?」


「はい、個室で。」


「…警察呼んでもいいですか?」


「私がその警察なんですけど……と、とりあえず今日はもう帰って頂いて結構ですので!また何か思い出したら教えてください!」


困り果てた顔をした榎本さんになだめられながら俺は、行きとは違う重い足取りでカフェへと向かった。




➖➖➖➖




少し飛んで時刻は午後22時。


閉店時間になったので、俺はその疲れた体で店の締め作業をしていた。


千尋と康平は20時には退勤するので、そこからは基本的に俺1人で店を回している。


一睡もしてないということと、久しぶりの勤務で俺は果てしなく疲れていた……


半分ほど作業を終えた俺は、あまりの疲れにテーブル席の椅子に腰掛けて少し休憩することにした。。


「残りは明日来てからやろう……」




その時だった。


…カランカラン…



店の扉が開き、人が入ってきた。


「す、すみませんお客様、今日はもう閉店いたしまして…」


俺は椅子から立ち上がり、店事情を伝えて帰ってもらうよう促した。


「…こんなに近くでも案外気づかれないのね。それとも瀬良さんが鈍いだけなのかも。」


「え?」


落ち着いた可愛い声のその人は、俺の目の前で帽子とマスクを外し素顔を見せた。


「!!か、風見さん!!??」


疲れが全て吹っ飛んだ。

ど、どうして風見さんが!!??


「ビックリした?」

少し笑ったような顔で風見さんは俺に見つめてきた。


「そ、そんなことないよ…」


俺は風見さんに全て見透かされたような感じがして、全く意味の無い見栄を張った。


「嘘……明らかに動揺してる。」

やはりその綺麗なブルーの目に全て見透かされていた。


「そ、そんな事より、危ないじゃないか!!まだ黒服の犯人は捕まっていなくて、また狙われるかもしれないんだぞ!?」


これは本心から出た言葉だった。


「大丈夫。今日は家の入り口からこのカフェまでタクシーに乗ってきたから。」


「で、でも…」


「それに、もしまた襲われても瀬良さんが助けてくれるんでしょ?」


「…それは…」

そんなこと言われたらもう何も言い返せないじゃないか……



➖➖➖➖



そこから30分ほど俺たちは話をした。

榎田さんの髪型や体型をいじったり、お互いのプライベートのことも話したりした。


「瀬良さん、明日も仕事?」


「うん、朝からね…」


「そう……じゃあ今日はもう帰るね。瀬良さんの勤務に支障が出たらいけないし。」


そう言って風見さんはスマホでタクシーを呼んだ。


「い、いや!俺はまだ全然…」


「ダメ。今日はもう疲れたでしょ。」


俺の返事を遮るように風見さんは言う。


くそ、俺の馬鹿野郎……朝から仕事なんて余計な事言わなければよかった。


「じゃあ最後にひとつだけ!!どうして今日俺のカフェに来てくれたんだ?」


これは本当に謎だった。


「…この前瀬良さんがこのカフェで働いているって言うのを聞いて…ずっと気になっていたの……」


「そっか…でもこんなカフェじゃ風見さんの期待とは違ったんじゃない?」


少し変な間が空いて、風見さんが口を開いた。



「…いえ、気になっていたのはカフェの方じゃなくて……その……瀬良さんの方です」



俺に背を向けて帽子とマスクを被った彼女が少し言葉に詰まりながらそう言った。


「…え?それってどういう……」


「そ、それじゃ」


…カランカラン…

そう言って彼女は足早に店から出ていった。


俺は彼女の言った言葉の意味をすぐには理解できず、ただ呆然とその場に立ち尽くしていた。



…カランカラン…


再び扉が開き、変装でどんな表情をしているか分からない風見さんが、顔だけを覗かせていた。


「風見さん…?」


「…あの……また来ても良い?」


「も、もちろん!今度はコーヒーでも用意しとくよ」


「よかった…それじゃまたね、()()



…カランカラン…



なんだろう、体がふわふわして現実感がまるで無い。

さっきは全く分からなかったが、今になって喜びが体の底から湧き上がってきた。


「しかも、風見さん…俺のこと名前で……」


今日も寝れそうにないな……そんな事を思いながら俺は帰り道をゆっくりと帰った。




読んで頂きありがとうございました!

では!

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