05
「あっぐ?」
背に衝撃が走った。
と同時に頬に土の感触。
なんとか首を捻って背後を確認すると、獣の魔物にのしかかられていた。
「ひ、や、あぁぁ……」
悲鳴もまともに出なかった。押し付けられている力は何故だか弱い。
魔物がミアを覗き込む。少々首を傾げたが、結局は喰うことにしたらしい。ぐぱ、と大きく口を開いた。
ミアの脳裏には村一番の剣士である父が過ぎる。此処に居ないのはわかっていても。それでも。
「父さんっ助けて!!!!」
目を強く瞑って、叫んだ。
ひう、と呼応するように頬を風が撫でた。
ミアはそれを喰い付かれる瞬間なんだと思った。
母さんごめんなさい、と最後に思う。そのはずだった。――痛みはいつまで経っても襲って来なかった。
震えながらそっと目を開けた。
誰かの背が目に映る。
細身の体躯。背に流れる紫水晶の髪。それは先程見た魔法使いの姿。
「俺の子に何をする」
先とは違い、意思の宿った声だった。守る意思、それが透けて見える言葉だった。
誰の事だろうと、ミアは呆然とその背を見つめ続けた。
襲いかからんとしていた魔物は深く頭を下げ哀れに鳴き、駆け去った。
あたりにはもう魔物の気配は無く――ミアと魔法使いだけが残った。




