幼い頃
ゴブリンの集落を見つけた二人だがまたしても事件の予感がする。ゴブリン族は自分たちの2倍以上大きなイノシシに似たブルテリに食糧を要求されていた。すると1匹がこちらに気づいて仲間に知らせる。
『ブモ?人族がいるブモ。』
『確かにいるブモ。どうする?』
『ボスは毛嫌いしてたブモが…。』
ブルテリ達はブモブモと仲間に話しながら待っていると長老がブルテリに説明する。
「この人族は道に迷っており、たまたまこの場所に行き着いただけ。」
するとイマイチ話が進まない事に理子が苛立ちブルテリ達に話しかけた。
「さっきから待ってんだけど!まだ!?」
理子がブルテリ達を睨み付けるとブルテリ達は動揺して震えて答えた。
『あ、あの人族恐いブモ!』
『ボスより威圧がスゴいブモ。』
『は、早くボスを呼ぶブモ!』
またしても先程のゴブリン族と同様に拳を握り構える。文太も理子を落ち着かせようと両手でストップの構えをとる。
ブルテリ達が来た方角からドスン!と重厚な音が聴こえ、呼びに行ったブルテリの後ろからさらにブルテリより大きく下顎の奥歯から大きく頭の前程鋭く牙が見られた。毛も濃い青色をしており頭の下にどんなにぶつかっても平気な程膨れ上がっている。
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名:ブルテリキング
発見難易度:C
危険難易度:C
対脅威度:E
食用:(鮮度100%)
獲得素材:ブルテリの毛皮、ブルの大牙、魔核
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二人の眼前に情報が映る。大型トラックの様な大きさが二人の前で止まった。観察するように見てから話始めた。
『…同胞を威圧する人族とは主らか?』
「威圧?、よくわからんがすまない!悪気はない。」
文太が答えるとブルテリキングはすぐに否定する。
『お前ではない。そこの女に言っている。早く威圧を解け。』
ブルテリキングは理子を見て睨む。理子は怒りを露にして言う。
「威圧だ?何訳わかんねぇ事言ってんだよ!それに今から襲われる可能性がある以上、敵だろ?」
ブルテリキングは鼻息を深く吹き出して先程より冷静にいい放つ。
『人族を襲う理由ない。もう一度言う。怒りを静めろ。これ以上は譲れん。』
理子は文太を見る。文太は理子に首を振り理子に落ち着けと眼を閉じて合図する。理子は冷静に考察して構えを解いて後ろに向いた。
「襲われても助けてやんねぇーからな!文太のバカ!」
愚痴りながらも構えを解いた理子にそれでいい!といい放つ。
『威圧が消えたな。この状況を教えろ。』
ブルテリキングはゴブリン族の長老に事の経緯を聞く。すると後ろに控えていたブルテリに振り向き一喝する。
『我がブル族の同胞よ。食糧が乏しい季節を耐えうる力を持ちながら弱い部族に略奪を企むとは恥を知れ!』
先程理子に向けた睨みより強い怒りをブルテリ達に向ける。
ブルテリ達は身が竦み上がり顔を地面に伏せる。
もう一度ゴブリン族の長老に振り向き話す。
『ゴブリン族の長老よ、同胞の勝手な行動は生きる為にしたが長として不甲斐ない…許してくれ。』
ブルテリキングはゴブリン族の長老に顔を地面に伏せた。
「フム、食糧が乏しい…これほど暖かい気候なのにか…。」
「春みたいな陽気だけど、ここ日本じゃないんだよ。文太だってわかるだろ?」
すると文太がキラキラした顔を浮かべてゴブリン族やブルテリ達に話しかける。
「勝手ながら少し理解した。つまり腹が減っているんだな!ならば俺がうまい料理を食わせてやろう!」
高々と両手を横に広げてにこやかに言う文太を理子が止めに入る。
「ちょっと待て!お前は何訳わかんねぇ事言ってんだよ!」
「理子よ、俺は大真面目に言ってる。この世界に来てまだ1つも料理しておらん!ハク先生やリース師匠もこの状況になれば確実に料理でもてなしただろう。ウム!そうに違いない!」
文太は徐々に暑苦しくも理子に話す。まさかの熱血モードに理子はタメ息が出た。理子は知っている。文太を料理の道に招いたのは自分の家で雇っていた料理人である事を…
△△△理子の幼い頃の回想始まり▽▽▽
幼少の頃に文太と知り合い、家に招いたのが原因であった。
その頃の理子は友達を家に招くのは初めてで両親に自慢するほどご機嫌であった。文太も近所で有名な大豪邸が理子の家だと知らず文太は大はしゃぎ、理子の心はかなり優越感でいっぱいになった。お昼頃に文太を昼食に誘ってみた。文太は両手を挙げて喜んだ。理子のおもてなしプランはまさに完璧だった…。
昨日の内に二人の料理長に事前に昼食をご馳走したいと言った。
アジア、ヨーロッパ、南国各所に露店を出せば必ず行列が出来あがり、有名な大富豪や成金長者が彼の料理で虜にしファンクラブまで発足させた伝説の流浪料理家ハク・レン。
世界で美味しい料理は?と各世界のグルメレポーターやミシュラン審査員がいち早く出す料理家は決まって一緒であり、彼女の料理は心を閉ざした者を生きる喜びに変えてしまう料理界の聖母リース=ギャロップ。
何故この二人が稲本家で雇われる理由は理子を笑顔にして欲しいと理子の両親がお願いしたからであった。パパはハク・レンの友人、ママはリース=ギャロップの友達であった。
二人の料理家に手紙を出すと1週間もしない内に稲本家に集まる二人の料理人。最初は理子の両親は喜び、気に入らない事があればいつでも出ていっていい、滞在金も住む場所も用意すると破格の条件で厨房に来てもらった。二人が必要な物はすべて稲本家がオーダー通り取り揃えた。
ハクとリースはお互いに話し合い、どの料理を理子に振る舞うか決めて料理を作り夕食に理子に食べてもらった。しかし理子は喜びもせず淡々と済ませて冷ややかにありがとうございましたといいテーブルから出で行った時、さすがの二人も悩んだ。
美味しいと言葉に出させる料理を作った二人だがまさかの違う言葉に自信を失いかけていた。二人は躍起になり毎日理子に料理を食べさせたが「美味しい」との言葉は聞けなかった。
そんなある日、理子が友達を呼ぶから昼食を二人に依頼した。以前はクールで表情に笑顔をが見られない料理がにこやかに頼んだのだ。二人はこれはチャンス!と張り切り昼食の料理を作った。
「理子ちゃん!これ美味しい!これも美味しい!」
文太がワンパクに口もと汚しながら食事する。理子はにこやかに食事をするが近くで待機していたハクとリースの耳には「美味しい」と言う言葉が聞けなかった。すると文太が食事を済ませると理子に言った。
「美味しいのにあんまし食べてないね理子ちゃん。そうだ!最近母さんに料理教えてもらったから!待ってな!」
文太はハクとリースに厨房を教えて貰い何を作るのか見ていた。文太の料理はオムレツ。それも砂糖がたっぷり入った甘みある料理だった。二人はさすがにそれを出すのはと躊躇したが文太は出来上がるとすぐに理子の前に出した。
「なかなか綺麗な出来てるじゃん。」
「へへ、自信作だ。食べてみろ。」
一口食べると理子の表情が変り、案の定…
「って甘過ぎよ!全く!これなら家の料理人の方が遥かに美味しいわよ!」
「ムゥ~、何かくやしい!」
文太と理子の会話を間近に聴いていたハクとリースは驚いた。二人が聴きたくて堪らなかった「美味しい」と言う言葉を同じ歳の子供が理子から引き出したのだ。すると文太が二人の前に近づき話す。
「僕に料理教えて下さい!理子ちゃんに美味しいって言わせたいです!お願いします!」
ハクとリースはお互いに顔を見て笑っていた。
その頃から理子の習い事がある度に文太は厨房に赴きハクとリースに料理を教わっていたと言う。そしてハクとリースも自分の弟子の様に熱血に指導したらしい…
▽▽▽理子の幼い頃の回想終わり△△△
「理子よ、まあ慌てるな!うまい物作るからな。」
次回:準備