恩恵
地方のなまり言葉と書きましたが…適当なのでご了承を。
無事に惑星トゥーラに着いた文太と理子。
その場所は一言で言えば広大な草原。地球と似たような青空、風が辺りを通るとなびく草木…しかし違う景色もあった。
「文太、あの奥にあるのがくっついてる星らしい。」
「ほぉ。なかなかデカイな。」
地平線を見る様に遠くを見ると地上から見る月の様に輪郭がハッキリと見える。
「…遠くに来ちまったな…」
理子が改めて実感する。
「稲、俺達はもう生きてるんだ。喜ぼうではないか!」
文太は太くなった腕を上げてガッツポーズする。
「文太…そうだな。」
理子が頷くと少し考え文太に話す。
「文太、もう「稲」なんて呼ぶな。俺らは地球では死んでるんだ。親もいない。でもこの星で生きてるんだ。」
「それはそうだが…」
「だから俺は苗字を捨てる。今から「理子」でいい。」
文太は理子を見て考えた。
理子はかなりのお金持ち、裕福な家で育った為か大人によく名前ではなく「稲本」を誉められる事が多く、自分で覚えた事もすべて「稲本」のおかげと言われるのがかなり苦痛で嫌だったと幼い頃の時に文太によく言っていた。
「いいのか?俺が下の名前で呼ぶと嫌な顔するから苗字で呼んでいたが?」
「それは中学の話で…もういい!文太も今から「理子」って呼ぶ事を許す!この話はおしまい!」
理子は途中で何かを言いかけたが勢いで決定する。
「そうか!ならい…理子と呼ぼう。」
つい呼び慣れた苗字を言いかける文太。
「む~、まっ、許してあげる。立ってても始まらないし歩くか。」
理子は文太から後ろに向いたが文太でも分かるほど機嫌は良かった。
二人で歩いていると地球ではあり得ない体験をする。
「おい、文太!見てみろよこれ!」
「どうした?ほぉ!」
草木に生える一本の花があった。色鮮やかな花だが二人が驚いたのは今、眼前に映し出す光景に驚いていた。
▼▼▼▼
名:セピアラ
発見難易度:G
▲▲▲▲
見つけた花にゲームなどで見るカーソルが花を囲み、情報が車のカーナビの様に見つけた花の横に種類と難易度が映し出す。
「文太にも見えてるようだな…」
「バッチリ見えている。便利だな!」
理子は冷静に状況を見て考える。
「……これが神様の恩恵なのか?」
理子が神から貰った恩恵を思い出す。すると文太が頷きながら納得する。
「なるほど!俺の料理愛に手助けした訳か。この花が食用か否かも分かるって事か…便利だな!」
「食用?何の事だ?」
「発見難易度の下に出てるヤツだ。んっ?無いのか?」
理子の確認している謎の表記には食用は表示されてはいない。考えながら辺りを見ると近くに奇妙な白い物体がある事に気付いた。
「文太、その白いのは何だ?」
「白いの?…フム、何かの獣の死骸のようだな。」
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名:ラビラビ(死骸)
発見難易度:G
危険難易度:G
食用:腐敗度(85%)鮮度(15%)
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「どうやらラビラビと言う獣のようだな?かなり腐敗が進んでいるな。」
理子が確認すると表示されるのは…
▼▼▼▼
名:ラビラビ
発見難易度:G
危険難易度:G
対脅威度:G
獲得素材:ラビの毛皮(不良)
▲▲▲▲
「…少し理解した。文太、どうやら恩恵で間違いないようだな。ただお互いに別の恩恵を授かったらしい。」
理子が自分と文太が見ている表記の違いに神にそれぞれに別の恩恵を願った事を思い出す。
「まだ決まった訳ではないけど、文太は神様に料理の願いをしただろ?俺は強さを願った。その恩恵に沿った能力がお互いに利益になる形に映し出されていると考えられる。」
「つまり…その…何なのだ?」
「簡単に言うと俺が敵の状況や得られる物の表記。文太は食べれるか、料理できるかの表記って事だよ。」
文太がそうか!と簡単に納得している中、理子はまだ自分の表記されている物に疑問を持ち考える。
(文太の恩恵は聞けば分かるが俺のこの「対脅威度」って何だ?)
理子は心の中で自分の恩恵がまだ把握できていない事に悩んだ。
しばらく歩くと奥の方で白い煙が空に昇るのが見えた。
「おお!理子、あっちに人がいそうだな。」
「かもな。っておい!」
文太はドタドタと重くなった足を動かして目的の煙の方に走って行く。いち早く目的の煙がある場所に着くと文太は置物の様にその場で立ち尽くしていた。
「どーした?何か…」
理子も文太の近くに行くとその光景に言葉が途切れ息を飲んだ。
確かに村があった、いや集落と言った方が正しい。真ん中に大きく作られた木の枝や草木を集めたたき火、周りに動物の皮で縫い合わせたテントの様な物がいくつもあった。しかし二人が驚いたのはそこに住まう者の姿であった。
確かに人の様に2本足で歩き、道具を使う。しかし姿は全身黄緑色で耳は縦に細長く、小学生くらいの背丈、二人の前に見たことがない生物が現れたので戸惑っていた。
「ん~?人族だぁ。めんずらしい。」
「まずがいねぇ、人族だば。」
…地球での地方独特のなまり言葉が二人の耳に届く。文太はポカンとして拍子抜けしていたが理子は警戒を緩めず拳を握りながら構えをとる。
「そこの女っこ!物騒なオーラが出とらぁ。あんましおごるでねぇ。キモさぁ冷えるんだば。」
一人?の原住民が理子を指さし話しかける。その指先はプルプル震えていた。
「理子よ、落ち着け。どうやら敵ではなさそうだぞ?」
「……わかった。」
理子は辺りを見渡しながら接近する者がいないか確認した後、ゆっくり拳を緩めて肩の力を抜いた。先程理子に指さした原住民は肩で息をするように安堵していた。
文太はタメ息が出た。理由は理子の構えを見た為である。
(全く変わらんな…こっち来ても健在なのか…)
文太が心の中で理子の恐ろしさを再確認していた。
咳ばらいをしてから話しかける。
「ゴホン、俺達は敵じゃない。その…道に、道に迷ったのだ!」
文太が何とか敵じゃないアピールをする。
「道まいっただ?長老さ呼ぶだば。」
一人の原住民が二人から後ろを向き歩いて行く。
少し待つと丈夫そうな木の杖をつきながら二人の前に着く。
「んだ~、人族の迷い人は珍しい。」
先程の原住民と違い長老と呼ばれる者はなまり言葉がなく流暢に話す。
「ここはゴブリン族の集落。疲れたならゆっくりしていけと言いたい所じゃが…」
原住民ことゴブリン族の長老がなにやら申し訳なさそうに言葉が詰まる。
「んっ?何か…」
「長老!またきよりやがってだば!」
文太が言う前に他のゴブリン族に遮られる。遮ったゴブリン族が指差す方にドスドスと地面を踏みつける音がした。
『ブモウ~!ゴブリン共。食糧は集まったブモ!』
『早く食いたいブモ。』
奥からズカズカと6匹の文太と同じ位のやや薄い青い色のイノシシに似た生き物が現れた。
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名:ブルテリ
発見難易度:F
危険難易度:E
対脅威度:F
食用:(鮮度100%)
獲得素材:ブルテリの毛皮、いの肉、ブルテリの牙
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二人の視界にまたカーソルナビが現れた。
次回:幼い頃






