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エルフと登山家さんの旅  作者: 一夢庵
1/1

一山目



(ここはいったい、どこだろう。)


俺の名前は、日高岳人(ひだかがくと)。29歳。

職業は、冴えないシステムエンジニアだ。

好きなアニメの影響で始めた登山に予想外に

ハマってしまい、会社のお盆休みを利用して

北アルプスの槍ヶ岳山頂に向かう岩場を登っていた

……はずだった。


しかし、俺の眼前には草原が広がっており、

見た事もない高山植物の花々が咲き誇っている。


(落ち着け。)


俺は背中のザックを下ろして、その場に座り込み

装備と頭を整理することにした。


調理用のコッフェル、ガスバーナー、

テント、シュラフ、ヘッドライト、軽アイゼン、

帽子、レインウェアのズボン、熊避けの鈴、

トレッキングポール、コンパス、地図、

ファーストエイドキット、ナイフ、サングラス、

携行食、非常食、飲料水、スポーツドリンク、

タオル、洗面用具、コップ、着替えなどなど。


(うん、完璧だ!……違う、そうじゃない。)


思わず、ヘルメット越しに自分の頭を叩いた。


「痛てっ!」


ヘルメットが無い。いや、無いのではない。

俺は、おもむろに顎のベルトを外して

ヘルメットを脱ぎ、ひっくり返して確認する。

そこには、直径十センチぐらいの穴が

ぽっかりと空いていた。


(……なんだ、これ。)


思わず、自分の頭に手をやる。どこも痛くはない。

指に血も付いていない。いったい、いつの間に。

これだけの穴が開く衝撃に気付かないはずがない。

いや、違う。頭部にこれだけの衝撃を受けて

無傷のわけがないのだ。


(俺は、死んだ……のか?)


そうだ、俺は山頂に向かうハシゴ場で順番待ちを

していた。登山道のハシゴ場は安全のため、

一人ずつ登る決まりになっている。

そして、「ラーク!」という叫び声が上から

聞こえたあたりで、俺の記憶は途切れている。


「はははっ、何てこった……。」


俺は、草原に仰向けに倒れた。

登山をするうえで、危険は覚悟していた。

ばったり、熊に遭遇した事もあるし、

数十メートル前方に雷が落ちた事もある。

その度に死を覚悟し、神に祈ったりもした。


(まさか、落石に当たって死ぬとは。)


思わぬかたちで命を落としたにも関わらず、

俺の頭には二つの疑問がわいてきた。


(ここはどこで、俺はなぜ生きているのか。)


前者については、簡単に知る事ができる。

俺は上体を起こし、ウエストポーチからスマホを

取り出して画面を確認した。


圏外。まぁ、これは登山では珍しくもない。

続いて、GPSを有効にして登山用のアプリを起動。


(……おかしい。位置情報が取得できない。)

スマホの電源を入れ直してみたが、結果は同じ。

本体は問題無さそうなのでGPSの故障か、もしくは


「ここは天国か、それとも異世界ってやつか?」


「……ご理解が早くて、助かります。」


弱々しい声と共に突如、彼女は俺の前に現れた。

亜麻色の長い髪を風になびかせ、

透き通る白い肌に、翠玉のような瞳。

白い薄手のローブを身に纏い、先端に宝玉の付いた

木製の杖を手にして立っていた。


この世のものとは思えない美しい容姿だが、

何より際立つのは、その尖った両耳。

ファンタジー物語に出てくる、エルフのようだ。


「異世界の冒険者様……。

どうか、私に力を貸してください。」




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