腐は止まらない
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18.1.26 タイトル改定
計画通りミストを仲間にした。だがそこで、俺とミストとの握手を舐めるように見ている奴がいた。
そいつは、栗色の髪を軽くパーマのかかったショートボブにしており、所謂エルフ耳が中から伸びている。
瞳の色は青みがかっていて、海を連想させる。
そんなやつが、しゃがみこみながら、こちらを見ていた。
「私ですか?」
そいつは、俺達の誰かという問いに対して、その場から砂を払うように立ち上がり、自分を指差しながら尋ねてきた。
その声は、おっとりしているようだが、確かな芯をもっている。そんな強かさを兼ね備えてそうな、そんな女性の声だった。
首を傾げながら尋ねてくる様は、あざといが実際可愛い女の子がやれば、効果覿面だ。実際、ミストはそんな彼女を見て頬を染めている。
だが落ち着け。ミストよ。そいつは、俺とお前の友情の握手を舐めるように見てきた奴だぞ?
「あっ…。」
証拠に俺達が握手を解いた瞬間に、無駄に色っぽい声を上げたぞ?
だから、落ち着け。余計に頬を染めんな、ミスト!!!燃料を投下すんじゃねぇ!!!
「そ、あんただ。」
ミストはダメだ。現在彼女に夢中になっていやがる。そこで、俺が話を続ける。
「私は、エルフのサクラって言います~。」
「で、何の用?」
「むむぅ。私は名前を名乗ったんですし~、そちらの名前も教えてくださ~い。」
何かイラッとする喋りか、コホン。え~と、独特なしゃべり方だな。
「そ、そそですよね、僕はミスト。こっちはオリオンです。サクラさん。」
お~い、俺がせっかく毒牙から逃げるために、要件を手早く済ませようとしてるのに、なんで名乗ちゃったかなこの子。という、思いを込め睨む。
そして、サクラさんよ。聞こえてるからな?何が、
「オリ×ミスだと思ってましたが~ミス×オリも良いですね~。」
だ。ミストは首を傾げてるが、知らなくていい世界だから、分からなくて良いから頬を染めたままこっちにどういう意味みたいな目を向けんな!!
それを無視して、サクラを見る。
「いや、オリ×ミスが至高ですね~。」
おいこら?何言っての?せめて本人に聞こえないようにしてくれるかな?
溜め息を吐きつつ、話題を戻すことにしよう。
「紹介されたが、オリオンだ。で、だ。君は俺らに何の用かな?」
「そんな言い方無いだろ?!オリオン!」
「そうですよ~。ご馳走様ですが~、仲良くしましょうよ~。」
我ながら、頬が引きつるのが分かる。
自然とため息が漏れる。
「あ。また溜め息。溜め息つくと、幸せが逃げるって言うよ。」
「ああ、そうだな。」
「そうですね~。でも、今がとても幸せですもんね~。」
「おい、こらどういう意味だ。」
「だって~、こんな広い世界で私があなた達に出会えたんですよ~。それってとても幸せじゃないですか~?」
「そ、そうだったね。もう~、オリオン。君そういう事考えてる奴だと思ってなかったけど、良い奴だよね?」
お~い、止まれ。ミスト気付け~、そいつ外面綺麗なエルフだが、中身腐ってんぞ~。
だが、こいつら止まらない、会話の応酬は続く。
そして、結果。
「わ~、嬉しいです。お二人のパーティーに入れてもらえて~。」
メニューのパーティーの欄から、ミストが俺とサクラにパーティー申請を飛ばし、めでたく俺達三人のパーティーが結成した。
このパーティー機能は、他のゲーム同様で経験値の等分配や共闘ペナルティの発生がしなくなるものだ。このゲームの共闘ペナルティは、ステータス低下と戦闘で得られるスキル経験値の低下だ。
「どうしてこうなった。」
そうは言っても、俺らのやることに変わりは無く。現在三人で別行動をしつつ、瓦礫の撤去をしているところだ。
なぜかと言う理由は色々あるが。
最初に俺は、罠がないと何もできないため、純粋に材料となる瓦礫が欲しい。
次にミストは、神殿神の加護から神殿の修復をすべき必要があると考えたから。
最後にサクラ。本当にこいつはキャラが濃い…。こいつの加護は、腐れ神だ。これが選択肢に出た瞬間に迷わず決めたらしい。ここまで来ると、いっそ清々しいな。で、冷静な部分で(へ?あったんだ。)腐れ神なら、毒かな?毒なら闇じゃん。(冷静な部分とは…。)
ただこの闇と言う属性は、曲者だった。この箱庭における魔法の属性で確認されているのは、火、風、土、水、木、光、闇の七属性だ。この中で初期で使える魔法が攻撃魔法では無いのが、光と闇だ。
それ以外は、「○○ボール」という攻撃魔法があるが、光と闇は、ただの光源と、黒い霧のような煙幕だ。
と言うわけで、現在そのレベル上げをしながら、俺達の瓦礫集めに協力をしてくれている。
以上三点から、俺達は引き続き瓦礫を撤去しているが…。
「もう一度言う。どうしてこうなった。」
瓦礫の撤去は良い…。ああ、それに問題はない。
だが、ミストはサクラの近くで話しかけるタイミングを図りつつ、ちらちらサクラを見ながら作業をしている。
ああ、それも今では些細な問題だ。
問題は、だ。
サクラがそんなミストの様子を“分かった”上で俺を見つめる時がある。そちらを見れば、外見上は百人いれば百人が見惚れるような、笑顔を向けてくる。まぁ中身を知っている身では一ミリもときめかないが。
そして、ミストがそんなサクラを見て、俺のこともちらちら見るようになった。
さらに、そんなミストの様子を盗み見て、無駄に色っぽい笑みを浮かべるサクラ。
傍から見たら、これは三角関係な修羅場ではないだろうか?
だから、敢えて言わせてもらう。
「どうしてこうなった。」
っと。
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