暗闇に光が差す
18.1.26 タイトル改定
20.10.14 文章の修正。
さて、俺のスキルによるステータス補正はひどい。なんて言うか、生きるのが無謀なくらいひどい。
そんな俺のスキルによるステータス補正(長いから補正で良いっか)では、まともな武器は振れない。おそらく、きっと、メイビー。
そこで、武器『罠』だ。
例えば、最初に錬成できる『罠』、タライを【罠鑑定】で見た場合はこうだ。
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タライ 武器カテゴリ- 《罠》
設置-発動型タイプ。スキル【罠設置】で設置し、スキル【罠発動】で作動するタイプの罠。
発動者の物攻と魔攻の平均の数%を固定値で与える。
スキル【罠】をメインスキルにセットしてない状態で発動しても、ダメージはゼロである。
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という感じだ。ここで重要なのが“固定値”であることだ。このゲーム、プレイヤーに防御を示す補正ががあるなら、当然モンスターにあっても不思議ではない。
つまり、俺の補正から鑑みるに下手すればダメージ0もあり得る。小さいと言っても1でも確実に与えれるのならっというわけだ。
問題は器用の補正が低すぎて、【罠錬成】が失敗することだが、俺はその辺はぬかりなく、器用が高いドワーフにした。それに所持していた補正ポイントを器用に全部つぎ込んだ。
だが、ここで新しい問題が出た。
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【罠錬成】
錬成できる罠がありません。
―――――――
さっそく【罠錬成】をしようとしたら、できなかったのである。
不思議に思って、【スキル鑑定】で【罠錬成】を鑑定してみると、確かにタライを錬成をできるはずだが、その文字は灰色になっていた。
空中に浮かんだ長方形型の薄い青色の板に載っている、その灰色の文字を軽く押してみた。
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タライ
素材が足りません。
必要素材
金属または木材。
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…。あ、つんだ。
実は、このゲーム現在NPCと呼ばれる存在がいない“らしい”。いや正確には、会話をできるNPCがいない。(このゲームを管理をしているメインの神は高度な人工AI。その他の現地民はいない。)
このゲームは、現実で一週間後にどれ程開拓が進んでいるかで、その時に行うアップデートの際にやって来るNPCが増減する。開拓が進み安全を保障できる場所であれば、たくさん来るのだと言う。
現在は、運営もとい神が用意したと思わしき神殿が平原にあるのみ。ここから、半径50mの円内では安全にログアウトができる。その外だと、体が残ってしまうらしい。その場合ログインしたら死亡してましたって可能性もあるらしい。
そして神殿は、西洋で見られる教会のようだ。だが見たところ、所々朽ち果てていて、見るからに廃墟感が漂っている…。
うん。見るからに危ない感がヤバい。
半円のすぐ外では、既にプレイヤーが兎のような魔物を狩っている。
つまり何が言いたいかというと、罠の素材調達はプレイヤーと交渉する必要がある。だが見る限り、プレイヤーは魔物を狩っていて、素材となりそうなものを持っていそうにない。
ちなみに、現在ゲーム時間で正午であり、(北半球換算で)教会のある場所から南方にはは海が見え、北は山がある。東は森で、西の方は荒野が見える。
恐らく木材は、東へ。金属は北に“行ければ”取れると思う。だがしかし、俺にはできない。その前に確実にその辺の兎に殺される。
「さて、どうしたもんか…?」
「わはははっは、たのしいいいいいいいいいいい!!!!!!」
…、なんだあれは…。朽ち果てた教会から、叫びながら一人の少年が飛出しって行った。
ん?教会の周りでは、その残骸であるような瓦礫を撤去している人がいた。
その人は、さっき飛び出していった少年を目で追った後に視線を戻していく。結果、俺と目が合った。
「こんにちは。」
俺はそう言って、その人に近付いていく。
「こんにちは。」
そう言ってその人も返事を返し来てくれたので、しばらく談笑をした。
その人の名前はミスト。鬼の種族をしたら男性だ。鬼である証拠に彼の額には二本の角が小さいが生えていた。
髪と瞳の色は、赤より紅に近い感じの色だ。柔和な顔立ちで目を細めて笑えば、大変絵になるタイプのイケメンだ。
このゲームは、現実を元にアバターを作成しているので、現実でもイケメンなのだろう。
俺?ドワーフは顔の下半分を髭で覆てっいる。その上、顔の上半分も髭と同じ白に近い灰色な前髪で覆ってるため、現在俺唯一の自慢である筋の通った鼻のみが、毛の塊から出ている形だ。
「そう言えば、こんな所で何をしてるんだ?」
「ああ~。それを聞いちゃうか…。」
「あれ、まずかったか?」
「いや、君が悪いわけじゃないし。」
そう言って微笑むミスト。くっ、そんな寂しそうに笑うとか、反則だから!
「ごめん。言いたくないことを聞いてしまったようだ。」
そう言って俺は、頭を下げる。
「いやいや、オリオンが悪いわけじゃないんだから。ほら、頭を上げて?」
ミストは俺の肩を押すようにして、そう言った。
「別に大したことじゃないから言うよ。」
「いいのか?」
なんだ、せっかく“話をさせるための策”を幾つか練っていたのに…。
「なんか、寒気が…。」
「気のせいじゃないか?」
そう嘯く。
「まぁいいか。僕がここにいるのは、見ての通りここの掃除のためなんだ。」
「掃除?」
「そ。所でオリオン。君は加護の中に効果が発揮されてないものが、あるのを知っているかい?」
効果が発揮されてない?
効果って、俺の運命神で言う補正低下とかだよな。
「いや、聞いたことないな。」
「まぁだろうね。掲示板でも話題になってなかったし。」
「つまり、ミストの加護がその効果が発揮されてない加護だったと。」
「そ。」
なるほど、俺みたいに加護選びで失敗している奴って結構いるみたいだな。
「で?何でそれが、ここの掃除に繋がるんだ?」
「僕の加護ね、神殿神の加護なんだ。」
そう言って彼は、メニューのメモ機能を、こちらに見えるように可視化してくれて、その神殿神の加護の効果を写したものを見せてくれた。
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神殿神の加護 Lv.1/5
『』
現在条件を満たしてないため、効果が発揮されてません。
―――――-
なるほど、条件、ね…。
「見て分かると思うけれど、条件が満たしてない。」
「つまり、神殿神の加護を発揮させる条件は分からないが、この朽ち果てた神殿の惨状を見ると…。」
朽ち果てた、神殿…。金属?
「まさか!」
俺は走った。朽ち果てていて廃墟のような神殿だが、この神殿、“石造り”である。
試しに神殿の周りに落ちていた大きめの瓦礫に手を触れて、自分の何も入っていないイベントリに入れてみる。
「錬成。」
その言葉をつぶやくと、目の前に板が出てきて、そこには。
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【罠錬成】
石のタライが錬成できます。
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と書かれていた。
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