男ッパイ
お食事の前後はお避け下さい。
脳みそって、目の前の事を自分に都合よく情報処理してくれたりする。
自分の心に深刻なダメージを負わない様に、そうして自分を守るのだ。
けれど、今目の前で展開されている何もかもに、情報処理が追い付かない!
変態カッパもきっとそうなのだろう。そして、結局改ざん出来ずに芋アナを放して二三歩後退った。
解放された芋アナは、浴衣の襟をギュッと合わせ、身体を縮めて立っていた。
「芋アナ……」
傍に寄って声を掛けると、芋アナは私を見て「見られちゃったねぇ……」と、痛々しい苦笑いを返した。
私はどう返していいか判らなくて、ただ無言で首を振る。
「お、おのれ……男ッパイじゃと……!?」
苦々し気なだみ声が、弱々しく響いた。
私は芋アナを守る様にして、彼女(彼?)と共に一歩下がる。
変態カッパは「パギャルルルウゥ……フシューッ」と、気持ちの悪い唸り声を上げながら、縦笛を尻から取り出し(お嬢様と尻の間に突っ込んでいた)くちばし? に咥えた。
縦笛に『咲綾』と可愛い字で名前が記されているのがチラッと見えて、私は巨乳小学生サーヤちゃんに激しく同情した。
大事な物を奪われて、凌辱されたのは私だけではない。
サーヤちゃんもまた、私と同じ被害者だ。
もうあの笛も、取り返したところで浄化は不可能。美しい音を奏でるのは無理だ。
きっとサーヤちゃんの手に戻ったところで、サーヤちゃんを守る為、自ら発火するに違いなかった。
汚物を見る目で変態カッパの動きを油断なく見ていると、変態カッパは縦笛を吸い始めた。
スココーーー……スコ……ヒュ……スコーーーーッ。
「?」
一体何故吸っているのか。
縦笛は吹くものじゃないか。……わからない。一体何を……。
私は心を落ち着けて敵をよく見る。心の目で視るのだ。心の目が開いた時、この世に分からない事なんてないのだから……!!
変態カッパは縦笛を吸いながら、呼吸を整えている様に見える。
奇妙な時間が、ただ不気味に流れて行く中で、変態カッパの表情が「ぐあああぁ……!」から「うぇへへへ……」に変化して行くのを見切った瞬間、私はハッとした。
―――それは、幼子が指をおしゃぶりしてしまう時や、未成熟な大人が某ハンバーガーチェーン店のシェイクストローの太さに夢中で安息を求める様な―――
今まで穢れ無き巨乳小学生(美少女)が縦笛に吹き続けた、清らかで甘い甘露の様な吐息の痕跡を、根こそぎ吸い尽くさんばかりのこの吸引ップリ……そう、奴はチャージしている。
縦笛を吸う事によって、男ッパイで萎えた変態をチャージしているのだ!!
このままでは変態が復活してしまう!!
「くっ……!! そうはさせるかぁぁぁっ!!」
私はおぞましさに震えながら、芋アナが床に落としたT字箒を手に取り、変態カッパの持つ憐れな縦笛向かって振りかぶった。
気まずくなってしまった芋アナとの距離感と、男ッパイポロリを無駄にするわけにはいかない。
「ウィヒャァーーーッ☆」
奇声を上げて、変態カッパが私の攻撃をヒラリと避けた。
しかし、私は目を光らせる。
「かかったなっ!!」
ギャンッ!!
私のT字箒が弧を描いて翻る。
「な、なんじゃと!?」
T字箒の『T』部分をドゥルルッと音を立てて回転させ、私は見事に変態カッパの『Y』の部分に囚われたお嬢様へ『T』を絡ませた。
スクリュー回転した『T』部分に、ガッチリとお嬢様は巻き込まれ、変態の『Y』部分が際どい露出狂そのものとなったが知ったっこっちゃない。
私は容赦なくT字箒をクルクルと回転させ続け、変態の『Y』をお嬢様で捻じり上げた。
「か、かぴゃ……っ!? 締まるっ! ぬわ、クククワァ~ッ!?」
「ククク……じわじわと潰れ死ぬがいいわ!!」
私は顎をしゃくらせて、腹の底から憎悪の声を出す。
捻じり上げられたお嬢様のフリルが揺れて、一瞬迷ったけれど、グッと堪えた。
もうどっちにしろ駄目なのだ。お嬢様はヤツに喰い込み過ぎた。
このまま捻じり切って、変態から解放してあげるからね……!!
「うぉぉぉーーーーっ!! 爆ぜろ悪玉金!!」
「りおなさん……!! ちょっとマッテ!!」
燃え上がる私を芋アナが止めた。
「芋野アナ……どうして!?」
「ダメだぁ、アイツの顔見て見んさい!!」
「!?」
「ふぃひ……ふぃひひんっ」
何とも言い難いけど強いていうなら悦びに咲く~みたいな顔をし始めた変態カッパ、性懲りもなく縦笛をまだ吸っている。
駄目だ、完全に喜ばせている!?
私が絶望を顔に滲ませた事に、変態カッパはニヤリと笑い、縦笛をくちばし? から離すと「ウィッウィッウィッ……」と声を上げた。
「どうしたのじゃ小娘……締め付けに迷いがあるぞよ……」
「……くっ」
「ウィッウィッウィッ……」
「りおなさん! 迷ってはダメ!」
T字箒の手を緩めかけた私に加勢する為、芋アナがT字箒に手を掛けた。
すると、変態カッパがたじろいだ。
「ぐわぁぁっ!! 野郎は手を出すでないのじゃっ!! オナゴにして欲しいのじゃ!!」
変態だな。
「ア、アタシだって、オナゴよッ!!」
「嘘じゃ嘘じゃ~っ!! どんなに隠したって、あれは男ッパイ!! 男のパイじゃ~!! お主からは〇玉の匂いもぷんぷんするのじゃ~!!」
「!!」
変態カッパにそう言われると、芋アナはちょっと内股になって唇を噛みしめた。
「変態じゃ~!! オナゴのフリした変態じゃ!! オナゴ男じゃ~!!」
ギャーギャー笑う変態カッパ、芋アナを馬鹿にした様に縦笛をピョローッと吹いて囃し立てた。
芋アナは少し俯いて、顔を赤くし黙ってそれを聞いている。
私はなんだか無性に腹が立って来た。
だって、私から見て芋アナは完璧な女の子だったから。
元気いっぱいの笑顔や、優しい物腰、気配り上手で頑張り屋。そんな芋アナを、私は毎朝観て来たんだ……!!
今私が着ている浴衣の帯を、凄くキレイに締め直してくれたのも芋アナだ。
おっぱいが無くて〇玉があろうが、どんな事情で――イヤ、嗜好? だろうけどサ――女の子になっていようが、こんな変態ガッパに馬鹿にされるなんてそんなの許せない!!
私は喚いた。
「か、カパ太! カパ雄! カパ太郎!! カパ彦!! カパ助!!」
「……なんじゃ……?」
「カパ三郎! カパ……カパ……」
うう……カッパの名前バリエーションが意外と膨大な気がして来た。
そう、私は一か八かで変態カッパの名前を呼んで、服従させられないか試みたのだ。
「カパ之助! カパ造! カパ悟! カパ……」
「ウィッウィッウィッ!! 無駄じゃ無駄じゃ!!」
「無駄でも良い!! 芋野アナを馬鹿にしたアンタは、この私が絶っ対に倒す!!」
「り、りおなさん……っ!!」
「カパ司、カパ樹、カパ五郎、カパ四郎、カパ……」
シャアアアーッ! と、くちばし? から変態カッパが臭い息を吐いた。
「か……むぐぅっ!? くっさ……!?」
「く……ッ!! やいやい変態さん!! アタシを見ろぉぉぉーーー!!」
「い、芋野アナ!?」
苦戦する私を見かねたのか、芋アナが自ら浴衣の上半身を剥いて、再び男ッパイを露わにした!!
「ぐわぁぁぁっ!! 男ッパイなんぞ見とうないのじゃ~!!」
おお、効いている!?
芋アナは恥ずかしそうにしながらも男ッパイを晒し、私の持つT字箒を一緒に持って、再びお嬢様を捻じり上げる。
「ホレホレ! 男ッパイにやられンぞ!! イヤなんだろ!!」
「かぴゃ~!? 厭じゃ~! こんなのはただ痛いだけじゃ~!!」
芋アナ……!!
「りおなさんは詠唱(?)に集中して!!」
「は、はい!!」
ああああ……でも、そんなに男の名前出てこないよ!! 「カパ」が必須だし多分……!!
「ええと……ええと……カパ吉、カパ座衛門、カパ……カパ……」
「カパ千代じゃ!!」
行き詰る私の背後で、ふいに声がした。
その声は、今、一番聴きたい声だった。
声の方を見ると、ちょうど窓の外にある、突き出している木の枝にしがみ付いたカパ郎が変態カッパを真っ直ぐ指差して叫んでいる。
「カパ千代じゃあ~!!」
「な……あれは……カパ郎!?」
顔いっぱいに『ヤバイ!!』を貼りつかせた変態カッパに、私はニヤリと笑った。
チェックメイトだよ!! 変態!!
「カパ千代!! 両手を上げろ!!」
「ひぃぃぃ!?」
名前を知られ、いいなりの変態カッパカパ千代が、バンザイをする。
ヤツの履いていた私のお嬢様パンツが、男ッパイパワーの芋アナの捻じり上げにより、ちょうどタイミング良く引き千切れ『思い残すことは無い』と言った具合に散り散りになった。




