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邪魔カッパ

 星空の下、皆で年季の入った雀卓を囲んだ。

 私はカパ郎の傍に座って、雀卓を覗き込んだ。

 実際に見るのは初めてで、四角いパイが綺麗に並べられている様は何故か気持ちが引きしまる。

 カパ郎がパイを一つ摘まんで私に見せた。


「りおな、これはパイじゃ」

「パイじゃ……」


 メガネカッパが不必要に繰り返して、厭らしい目で私の胸を見た。

 カパ郎はちょっとイラッとした様子だったけど、ここで反応するのは良くないと思ったのだろう、メガネカッパの下らない呟きをスルーした。

 私も「カパ郎大人」と誇らしく思いながら、メガネのヤツをスルーした。


「パイくらいならわかるよ。数と字の二種類だっけ?」

「そうじゃ。数のはマンズ・ピンズ・ソーズってあっての……」


 カパ郎が自分の前に並べられたパイを指差して説明している合間に、


「マンズは漢字で書くとのぅ……」


 とまたメガネカッパが喉で笑いながら呟いた。

「やめんか」とポチャマッチョカッパがたしなめているけれど、コイツも多少ニヤニヤしていて「もっとやれ」位に思っているのかも知れなかった。

 色白女顔カッパはパイの並びが少しでも乱れているのが厭なのか、ムキになってピッシリ真っ直ぐ並べるのに夢中だ。

 カパ郎は笑顔を強張らせながらも説明を続けた。

 私も、大丈夫だよカパ郎、と言う意思表示を籠めて、彼の腕にくっつきながら熱心に聞いた。ゲームを教えて貰うのは嬉しいし楽しい。なのに……。


「パイの仲間を十四揃える」

「どんなふうに?」

「パイの仲間……」

「三つの仲間を四つ作るんじゃ。三つは数字を三つ連番にするとか、同じ文字を三つじゃ」

「十四でしょ?」

「三つ仲間を四つと、雀頭ジャントウの二つで十四じゃ」

「乳頭……くひっ」

「……そうしたら上がりじゃ。早く上がったもん勝ちじゃ」

「ふうん……」

「やりながら教えてやるからの」

「ヤリながら……むひひ……」


 いちいちどうっしようも無い呟きを挟んで来るメガネカッパを、とうとうカパ郎が睨み付けた。


「カパ彦、お前いい加減にするのじゃ!」

「ぎゃ!? カパ郎! お主仲間の名を……!?」


 カパ彦って言うのか……。

 と言うか、名前知られたら不味いんじゃないの? いいの? 

 そう思っていると、カパ郎が私を見て何かを訴えている。


 え? 何? キス?


 カパ郎はクイッと顎をメガネカッパ(カパ彦)の方へしゃくった。

 まるで「やってやるのじゃ」と言わんばかりで、私は一泊置いてから「あ」と彼の言いたい事が判った。

 名前を知る事―――それは、服従させられる事……。

 私は先ほど無遠慮に私を見ていたカパ彦を見返した。

 カパ彦はビクッとして私から顔を背けた。

 顔を背けた拍子にカパ彦のメガネが斜め横角度から見えて、実はメガネにレンズがはまっていない事に気が付くと、私の堪忍袋の緒が切れた。


「カパ彦! あんた、メガネごと目潰ししてやろうか!?」

「ひっ!? か、堪忍なのじゃ……」

「おりこうさんに出来る?」

「するのじゃ……」


 しゅんとするカパ彦(メガネカッパ)を見て、結構な効果だ、と私は内心驚きつつ、今回の所は許してあげた。

 カパ郎が「よし、じゃあ遊ぼう」と言ってニッコリ笑った。

 中々腹黒い所もあるんだな、とちょっと思ったけど、それすら魅力的に感じて私もカパ郎に微笑み返した。

 それから、ちょっとだけ不安を覚えた。


 名前を知る事は……。

 まさかカパ郎……違うよね……?


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