エルフの里でバーベキュー
お土産を持って、再びエルフの里を訪れた俺たちは、里長のサクヤ様をはじめとした里の人々に大いに歓迎された。
そして持ってきたお土産をお姉さんエルフのサキさん立ち会いの元、サクヤ様に一通り見せていく。
危険な物が無いことの確認と、習慣的に食べれない物がないかを1個づつ説明しながら確認してもらった。
「とりあえずは大丈夫みたいですね。よかったです」
「様々な品を持ち込んでいただき感謝致します」
ひとまずは大丈夫そうだ。
「その首から下げた物は?」
「ああ、これは見える物を記録する道具です」
俺はそう言って、サクヤ様にデジカメの画面を見せながら記録されている画像を再生していった。
「おお、これはタケシ様ですね。あ、ワタル様も」
「サクヤ様も写してみましょう。少し光りますが危険はありませんので」
「は、はい」
俺はサクヤ様から少し離れ画面の中央に彼女を捉えるとボタンを押した。
フラッシュに少し目を細めるが、画像にはちゃんと美しい彼女の姿が映っている。
「め、目を瞑ってしまいました! 平気でしょうか?」
いつも落ち着いているサクヤ様が慌てる姿は、とても可愛いかった。
「平気ですよ、見てください」
「ほぉぉぉぉ、すごいものですね」
その後も、サキさんが咳払いをするまで撮影は続いた。
もちろん彼女も撮り、サクヤ様とサキさんの2ショットまで写真に収めた。
そして幼なじみ3人からは「帰ったらデータくれよ」と小声で言われた。
任せとけ。
と云うことで宴会の準備が始まる訳だが。
里の人間が総出で行えば準備はあっという間に終わってしまった。
女性ばかりの里だが、みんなパワフルだ。
「やっべ、ライター忘れた」
「ええ!?」
バーベキューセットも準備が終わり、炭が中に並べられた所でタケシがそんな事を言い出した。
もちろん俺も持っていない。
「どうされました?」
動揺する俺たちに話しかけてくれたのはエルフ少女のスミちゃんだった。
「いやぁ、火をつける道具を忘れちゃって」
「火ですか、これでどうです? もっと大きい火が必要ならサキ様にお願いしますけど」
そう言って彼女は人差し指を立てると、結構大きな炎が指先から現れた。
おおっ! 魔法っ!
スミちゃんの顔が見えなくなるぐらいの大きな炎に少しビビった。
「ぜ、全然それで平気。もっと小さくてもいいよ」
俺はそう言って炎を小さくしてもらい、丸めた新聞紙に火を燃え移らせた。
「今のって魔法?」
「はい、そうですよ」
「俺たちの世界には魔法は無いんだよ」
「え? そうなんですか? ......大変ですね」
「う、うん。その代わり道具が発達したんだ」
「なるほど」
俺の話をうんうんと聞いてくれるスミちゃんは本当に可愛い。
食べちゃいたいぐらいだ。
「よし、始めるか。タケシはじゃんじゃん焼いてくれ」
「おうっ!」
「僕は野菜を切っていくよ」
そう言って包丁を持つ啓吾。
「おにぎり配ってくるかな」
駅弁売りのように、おにぎりの入った箱を持った太一。
そしてデジカメを構える俺!
「お前が一番重要だからな」
「後で2ショット頼むわ」
「おう」
「亘、撮って~」
すでに啓吾の隣には手伝いにきた少女が立っていた。
やるな。
俺はパシャリと啓吾と美しい少女を写真に収めた。
バーベキューには俺たちが持ち込んだ食材以外にもエルフの里で穫れた様々な食材が振る舞われた。
そして俺たちが持ってきたお土産もかなり好評だった。
「これは塩を使っているようだが、長耳村というのは海沿いの村なのか?」
「いえ、ここと似た山の中ですよ」
そうおにぎりを手に聞いてきたのはサキさんだった。
「米も驚くほど美味しい、どちらも伊勢会との取引を断り手に入らなくなった物だ」
「こっちから町に買いに行ったりはしないんですか?」
正直、彼女たちの身体能力なら、荷物を持っての山道もへっちゃらな感じがする。
「そうか、エルフの事については知らなかったのだな。我らエルフは森の民、自然がなければ力も弱まる。人間の町は自然が少なくてな、最悪は死ぬかもしれん」
「なるほど、僕たちも都会は苦手なんですよ」
「では、先祖はエルフなのかもしれんな」
そう言って俺とサキさんは笑ったが、以外とその話は当たっているのかもしれない。
俺たちは少し耳の形がおかしい。
それに都会が苦手なのだが、人混みに酔っているのだろうと思っていた。
だが、自然が少なくなるせいだとしたら?
あの鏡石を通れる事も、その事に関係しているのだろうか?
「そういえば鏡石って里の人は誰も通れないんですかね?」
「ふむ、今度サクヤ様に相談して確かめてみよう」
それにしても彼女、結構いい顔で笑えるじゃないか。
「ねえ、サキさん。1枚いいかな?」
「う、うむ」
俺は彼女の美しい姿を写真に収めた......。