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お土産会議

 少し汚い木の看板。

 書かれた文字は『鳥八』の2文字。


 町にほど近い場所にあるこの店が、村で唯一の居酒屋だ。

 客はそこそこ、料理はまあまあ、親父はハゲ頭、嫁が若い。


 死ねハゲ親父!


 5年前に村の男全員が密かに思っていた『陽子』ちゃんを射止めたのが2回りも年上の店長だった。


 もう陽子ちゃんも30目前だが、女っぷりが上がって以前に増していい女だ。


 鳥八の 

 奥の座敷は 

 指定席


 一句読みながら指定席の座敷に座ると、


「はい、生4っつ」

  

 とりあえずと陽子ちゃんが4つのジョッキを持ってきた。

 

「串盛りと陽子ちゃん」

「ハゲ頭の串刺しと陽子ちゃん」

「店の権利と陽子ちゃん」

「陽子ちゃんと陽子ちゃん」


「はい、串盛りね」


 陽子ちゃんは呆れながらもニヤリと笑い店の奥に戻っていった。


「じゃあ、とりあえずは乾杯」

「おう」

「だな」

「うん」


 俺たちはガチンとジョッキをぶつけ合い、無事に帰ってきたことを祝った。


「なんだ? 今日は随分と大人しいじゃねえか」

 

 タコが喋った。

 ああ、店長か。


「まあ、俺の家が大破したからな。祝うような事でもない」


 幼なじみの3人の、そんな事もあったな、みたいな顔が目に付く。


 忘れてやがったな。

 

 それはさて置き......。


「どうするよ?」

「僕は自家製ベーコンかな?」

 そう言ったのは女子っぽい男子の『耳森 啓吾』別名、啓子ちゃんだ。


「おお、いいね」

「俺は米がたっぷりあるから握り飯でも作っていくかな」

 『横耳 タケシ』がなぜか力こぶを見せつけそう言った。


「お、手伝うぞ」

「俺も手伝うかな、後は炭と焼き物ぐらいしか無いしな」

 『奥耳 太一』がジョッキ片手にそう言った。


「いいね僕も手伝うよ」

 啓吾もタケシの案に乗り、明日は朝からおにぎり作りとなることが決定した。

 すでに日も傾いているので、今から用意できるのはこんなもんだろう。


 明日エルフの里に行かないという選択肢は無かった。


   

 エルフの彼女達を思い出すと、憧れていた陽子ちゃんも、随分と普通の女に見えてくる。


 月とスッポン。

 伊勢エビとザリガニ。

 マーライオンと泥酔したおっさん。


 そのぐらいの違いがある。


「そういや亘はなんか無いのか?」

「そうだな、今から用意できる物ってなると......」

 

 俺が考え込んでいると。


「はい、串盛り」

 スッと焼き鳥が盛られた皿がテーブルに置かれる。


「これだっ! おいみんないくら持ってる?」


 俺の言葉に、みんなも思いついたのか、ガサゴソと財布を取りだし中身を確認していく。


 

「行けそうだな」

「ああ」

「なんか良い酒も持っていくか」

「......泥酔エロフ」

「「「いいねっ!」」」


「親父っ! 串盛り200本持ち帰りで!」

「それと酒も色々買わしてくれ!」


「なんだ? どうした? 構わないが、宴会でもあるのか?」

「ああ、そんな所だ」

「時間掛かるぞ」

「おう、待ってるぜ。陽子ちゃん生おかわり!」


 結果、太一の炭を使って暖め直そうと言うことになり、明日持っていくお土産は決定した。


 焼き上がった大量の焼き鳥を袋に入れて、鏡石から一番近い俺の家で保管することにした。


 家に戻ると、壊れた居間が酔いを少し覚ましてくれる。

 

 そんなことよりも、まずはあれだ。


 俺は焼き鳥を台所に置いて、自分の部屋へと駆けていった。



 

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