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啓吾の両親

 啓吾とエルフの里の女性、マユさんが結ばれ、その事を里長であるサクヤ様に報告をした。


「幸せになりなさい」

 と、2人の関係は認められたのだが......。



「婚姻の儀を行いたいと思うのですが」


 サクヤ様の言葉だった。


 準備にはかなりの時間が掛かるそうだが、俺たちのほうも動かねばならないだろう。


 まずはマユさんを啓吾の家族に紹介か。


****


 長耳村に戻った俺たちは、啓吾の家へと向かった。


「こらぁ! いい年こいて朝帰りかぁ!」

 とまずは怒られる啓吾である。


 だが啓吾の親父さんは、息子と手を繋ぐ女性を見て固まってしまった。


「お父さん、お母さんは居るかな? 大事な話があるんだ」


「わわわわ分かった! すぐに呼んでくるから、ななな中に入ってもらえ」


 2人の雰囲気から、そういう話だと察したのか、えらい慌てようで親父さんは家を飛び出していった。


 マユさんは見るもの全てが珍しいと目を丸くしていたが、自然の多い長耳村に体調も悪くないと言っていた。


「素敵なお家ですね」

「ここで僕と暮らして欲しいんだ」

「......はい!」


 啓吾の言葉に笑顔で答えるマユさんに、俺たちは啓吾が羨ましく思えた。


「なぁに? 随分、お父さん慌ててたけど何が......っ!」


 頭にタオルを巻いて麦藁を被った啓吾のお袋さんは、マユさんを見ると親父さんと同じように固まっていた。


 そして、あわあわと慌てて居間から出ていってしまった。


「ちゃんと言ってよお父さん! こんな格好で恥ずかしいじゃない!」

「ネネネ、ネクタイ曲がってないか?」

「知らないわよ!」


 丸聞こえの会話に俺たちは思わず苦笑する。

 啓吾も顔が真っ赤だ。


「ごめんね、今のが僕の両親」

「ふふ、良いご両親ですね。私の両親は随分昔に亡くなっていますので羨ましいです」

「ご、ごめん」

「いいんですよ、これからは寂しくありませんから」

「う、うん」



 暫くすると一張羅に身を包んだ啓吾の両親が部屋に入ってくる。

 その格好に啓吾は余計に恥ずかしそうにしていた。


「すまん、すまん、お待たせした」

「ごめんなさいね。あ~恥ずかしい」


 そんな2人にマユさんはスっと頭を畳に着くほど下げた。


「マユと言います、よろしくお願いします」

「こ、こりゃ、ど、どうも。こちらこそお願いいたします」

「あらまあ、ご丁寧に。宜しくね」


「えっと、マユさんと結婚しようと思うんだ」

「うんうん、いい娘さんじゃないか。さ、酒だな酒。母さん一番良い奴持って来てくれ」

「はい」

 

 啓吾の親父さんもお袋さんも涙ぐんでいる。

 

 お袋さん持ってきた日本酒の瓶にマユさんは目を輝かせながらも驚いていた。


「1つの家にあんなにお酒が?」


「ああ、僕たちは沢山飲むし、そんなに高くないんだよ」

「ん? いい酒だぞこれは」

「あ、えっと。どう説明しようかな」


 そこで俺が前に出た。

「おじさん、おばさん、これを見てくれないかな」


 俺はデジカメを出してエルフの里で撮った画像を見せた。


「おお、啓吾とマユさんか。太一も写ってるな。それにしても綺麗な人ばっかりだな」

「本当に綺麗な人ばっかりね。お父さん、鼻の下伸びてますよ!」

「それにしても何処なんだ? それになんだか」


 マユさんの美しさに目を奪われていたようだが、ようやく違いに気づいたようだ。


「マユさんは、こことは別の世界の人なんだ」

「ふぇ?」

「な、なんなのそれ? 外国?」


「行ってみたほうが話が早いと思う。長耳神社まで来て欲しいんだ」


 俺たちの予想では、おじさんとおばさんは鏡石を通れると踏んでいる。


 2人とも長耳の系譜の家の出だ。

 都会の空気は合わないと言って村で暮らしてきたらしいが、エルフの血が入っていると考えれば納得もできる。


 俺も都会は、というか自然が少ない場所は苦手だ。


「マユさんが生まれ育った場所なんだ、一緒に見に行こう」


「お、おう」

「は、はい」


 こうして俺たちは啓吾の両親を連れて鏡石へと向かった。

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