13ページ目 主人公、褒美を貰う?の巻
意外と時間かかったのですね。その割には少ない……。
この気持ちは、何なのだろうか。
部屋での一悶着があった後、少し遅めの朝食をとることになった俺。朝食は濃い小麦色の麦パンや、薄くスライスされたベーコン、色とりどりの野菜など、目でも楽しめる豪華なものであった。本当に美味しそうである。
しかし、イマイチ俺の食指が動かない。原因は、同席して朝食をお召し上がりになっているのがいつものメンバーに姫様も交えた王家トップ3だからである。三度目だから慣れる?わけないだろなめてんのか!
ホントこの気持ちは、あぁ、贖罪か。簡単なことだったヨ。
あ、姫様と目が合った。
すると、にこっと困ったように笑いかけてくるシャウラ姫。若干顏を赤らめていることから、彼女が先ほどのこと、を、気に、してホントゴメンナサイ反省してます!!
こんな感じで姫様に謝罪の気持ちでいっぱいになっていて、今口に入っている食べ物の味がわからない。後でもう一回謝っとこうと心に刻み付ける。
「いやー、本当にめでたい!シャウラとまたこうして一緒に朝食をとることができるとはな!本当によくやったぞキョウイチ殿!!」
「本当ね……。娘を助けてくれたこと、心から感謝しています……!」
王様と王妃様は先ほどから姫様にべったりくっついている。その眼の周りが少し赤く腫れていることに気づき、さっきまで彼らがどんな状態だったかはおおよそ見当がついた。
2人にくっつかれた姫様は、朝食をとることも少し手間取っている。その光景が微笑ましく、俺も周りのメイドさんたちもほっこりしていた。
そんな姫様が時折こちらに恥ずかしそうに視線を送ってくることもやはり俺の心的に効果は抜群だ!!ほほえま~
しばらくすると王様の威厳というものを今更意識し始めた王様がもとの席に戻り居住まいを正した。
「オホン!あ~、シャウラ?そなたに言っておかねばならないことがある。
心して聞くように。」
?姫様に、か。というか俺はここにいてもいいのだろうか。
姫様が王様に身体を向ける。
「其方の呪いを解くために見張り番についてなのだが、成功した者には褒美としてお前との結婚を条件として提示していたのだ。」
俺、フリーズ。
「そのことは知っています。先ほど、お母様からお話しをお聞きしました」
「……そうか。ワシが勝手に決めてしまったことではあるが、了承してはくれまいか、シャウラよ?」
「ちょ、ちょっと待ってください!!」
あぁ、思わず止めてしまった……。いやでもこれはさすがに見過ごせない
「ん?何かね?キョウイチ殿」
「いくらなんでもそれはめちゃくちゃなんじゃないですか?シャウラ姫殿下の御意思を全くご考慮されていないじゃないですか!
それに、俺は他の世界の住人です。王家の繁栄には全く関係のない身分です。」
「ふむ、とすると、シャウラがどう思っているのかというのが君の言う障害の一つなのだな?
……シャウラ、其方の考えを聞こうではないか」
「そうね、そのほうがいいわね。」
王妃様も王様の意見に同調するようだ。
俺たちの視線を一身に受けたシャウラ姫はというと、王様に向かってこう答えた。
「私は、彼のことをまだよく知りません。三度の夜の間に少し言葉を交わした程度ですし」
そこまで言うと、今度は俺を真っ直ぐ見据える。エメラルド色の綺麗な瞳に強い光を宿しながら。
「でも、キョーイチ、様は、私の呪いを解くために一生懸命動いてくださったんですの。そして、私の呪いを解いてくださいました。それは、自分の利益だけ考えた人では到底成し得ないことですの。
私が呪いにかけられていたことは、とても苦しく辛いことだったけれど。それでも、その呪いにかけられたことで、彼と出会うことができた。それは、とても良かったこと、だと思っていますの、お父様。
……それに、彼はとても勇敢で、かっこいいんですのよ?」
そう言って、恥じらいつつもにこっと笑いかけてくるシャウラ姫。
……あ、れ?
やばい、顔めちゃくちゃ赤くなってるぞ、俺。
「あらあら。まあまあ!」
楽しそうですね。王妃様。
「う、うむ。シャウラの気持ちがよく分かった、な?
……シャウラよ、ワシの言い方も悪かったかもしれぬが、我が聞きたかったのは、其方がこの結婚について嫌ではないかが聞きたかったのだ。シャウラに、こうも厚く思われているのだな、キョウイチ殿は」
「え?」
数秒固まる姫様。そりゃそうだ。結果的に彼女は、両親を目の前にしてリアルタイムで告白めいたことを言ってしまったのだから。
「ッ!?
……そ、そうですわその通りですのよ!だから、私の気持ちは、何の問題もありませんっ!!」
それだけ言うと顔を隠して小さくなってしまった。え、なに、あの可愛い生き物。というかいい加減静まれ俺の心臓!!撤退しろォォォ!!
「ワハハハハ!シャウラの気持ちはよぉくわかった!
ではもう1つの問題、かの?キョウイチ殿の身分についてだが、ワシとしては別段何も思うところはないのだ。当代の国王であるワシが推すのだ。誰も異論はあるまい。
それにな、他の世界から来たお主だからこそ見えてくるもの、というのもあると思うがな?」
「さっきから気になっていたのですが、俺が他の国ではなく他の世界から来たと貴方は仰っていますね。」
「ん?何か不思議なことがあったか?お主を呼んだのはワシだぞ?それくらい気づいとるわ」
「さいですか……。」
「細かいことはすべてワシに任せておけ!悪いようにはせんぞ!?ワハハハハ!!」
「それで、貴方はシャウラのこと、どう思っているのかしら?」
「そ、それはですね……」
おっと、やはり王妃様はそこんところちゃんと突いてくるか。
姫様はちゃんと俺に向き合ていた。俺もそうするべきだろう。
「俺も、姫様のことはまだよく知りません。でも、それはこれから共に過ごす時間の中で少しずつ見つけていくものだと思っています。
それに、こんなに正直に自分の考えを言葉にできる姫様は素晴らしい方だと、俺は思っています。」
ぐおお、これはハズイな、かなり!
ちゃんと目を合わせてくれる姫様は流石です。あ、オレモウゲンカイカモ。
「うむ!両者の意見も聞けたし、良かった良かった!
それでキョウイチ殿の今後の予定についてだが、この後すぐにここを発たれるのか?」
話が急に逸れて危うく振り落とされるところだった。
でも、俺的にもそっちの話は重要なものだ。忘れてたけど。
「あ……。はい。ですが、本当ならこちらでもう少し過ごした方がいいのではないですか?」
「なに、余計な心配はするな。シャウラもこの通り回復したしの。今夜にでも送り届けることはできるだろうな。
キョウイチ殿にはキョウイチ殿の世界というものがある。まずそちらを整理するというのも必要なことであろう?」
この王様、マジでパねえ。俺ごときにこんな待遇いいの?こっちとしてはありがたい限りです!
「まあ、それが終わったらいろいろとこちらでも働いてもらうかの!やることは山ほどあるな!!」
ですよねー。