1ページ目 主人公、召喚されるの巻
初投稿です。誤字脱字の修正が予想されます。気になった点は指摘してもらえれば幸いです。気軽に読んで頂ければ。
最初の話は主人公の奇行がチョット目立ちますが後々になれば落ち着くのでご安心下さい。
昔、母が読んで聞かせてくれたある物語がとても好きだった。
あるお姫様が悪魔によって、石になり眠りにつくという場面から物語は始まる。
唐突にヒロインが死んでしまうということはこの後の話にどう関わるのか、それがとても印象的であった。
しかし、それ以上に俺の心を釘付けにしたのは、この後の展開である。
そのヒロインは遺言と受け取れる台詞を残す。
「私が死んだら、私を棺に入れて教会に安置して下さい。そして正直な人を見張りとして立たせてください。三日三晩見張ることができたら、私はもう一度生き返ることが出来るでしょう」
そう、ヒロインの復活イベントが発生するのである。
ほ~ん、三日三晩見張ればいいわけね?楽勝っしょ!そう思っていた当時5歳の純粋な俺……。
そうは問屋が卸さないのである。王様は娘であるお姫様の遺言通りに見張りを立たせるのであるが、一晩経って教会を開けてみると、見張りの姿は無くお姫様の棺のみが鎮座しているのだ。
そこからは、まぁ主人公的な平民が登場する。それまでに何人犠牲になればいいんですかね……。
実際はお姫様が夜な夜な悪魔達と踊り狂い、見張りを見つけたら悪魔たちが石にしていたらしい。主人公が追体験してたから本当のことだよね!怖すぎる…。
主人公はお姫様(本命は悪魔たち)との恐怖の隠れんぼから生還して復活したお姫様と結婚エンド。めでたしめでたし。
うん、そして1番ココが気になってたんだ。思い出した。
何でお姫様とこいつ結婚してんの?
そんな怖い思いしたのなら、うん、まぁ、いいのかな?平民だけどいいのか王様。
主人公になる為にはそれくらい乗り越えなきゃダメだそうです。母が言ってたから本当のことですね!
……母の男気溢れる解説まで飛び出したが、やはりこの物語は当時読んだ絵本の中でも群を抜いた内容だったのだ。
「おい、話聞いてんのか」
隣からの罵声で現実に引き戻される。うわ、ちょー睨まれてる……。
「はいはい、聞いてますよ森山さん。うん、やっぱりポテチよりポップコーンの方が腹持ちイイよね~」
あれ?蹴られた……。食べ物の話のはずじゃ……。
放課後、クラスメートに呼び出し食らった俺こと岸恭一。高校二年生花盛り男子である。
行動的に、性別的にどうなの?な彼女は森山優姫さん。染めていない綺麗な栗皮色の髪を肩のあたりで切りそろえている。山猫を連想させる顔立ちはよく見なくても整っている。背丈は少し小さめのスレンダー美少女である。今期の空手のインターハイに出場が決まった俺の心優しいクラスメートです。解説の後半が丁寧な理由はチョット目線が痛いからではない。断じて。
「だからぁ、アンタどうせこの後予定ないでしょ?演劇の台本作り手伝え」
「高ニ男子に何を求めてんだ?ヤダよ、ハズいし。……え、ホントむりっす」
「……クラスで役割ないのアンタだけなんだけど」
あ~、今日あったと専らのウワサであるブンカサイデノダシモノのことか。いや~、今日の昼寝はとても高水準だったと思ったら裏でそんなことがあったとは。
昨日の深夜に日ぃ跨いでゲームしてた自分、反省シナサイっ!
そんな訳で思春期の葛藤的な事情で過去の純朴な少年時代の記憶を掘り返して現実逃避もとい建設的な思考の迷路に没頭していた訳である。
「……森山の助力は?」
流石にもう逃げられないらしいし、本格的に取り組むことにした。
「まぁ、時間あればね~。アドバイスするか、アドバイザー用意するかくらいね」
クラスの雰囲気は活発な討論をする空気ではない。こうして1日で決着していることから、彼女が尽力したことがわかった。
森山はクラスの中でこういう行動をしても誰も悪い顔をしないポジションなのだ。
「ご協力、感謝します!」
ドラマでの警官の常套句を真似てみる。森山さん首肯。
まぁ、やるだけやるか。
森山と別れて下校スタート。
夕方の気配を残しつつ空は夜の様相を呈している。通行人は同じ制服を着た生徒がチラホラ見える程度。車通りの方が多い感じ。
ウム、脚本作るってなると周りを注意深く見るようになってくるな。それにしては情報取得できてねぇな俺、ムフぅ……。
……気がついたら本屋さんに入っていた。この乱雑な本の配置。日に焼けた背表紙。埃臭いスメル。ふるほんややっ!
何の心の準備もしてなかったので暫く物色することにした。文化祭近くってテストに追われるから心の清涼剤が欲しかったというのもある。
漫画じゃなんなので童話とかの棚へ移動する。演劇だし、簡単な奴引っ張ってくればいいよなっと。えぇっと、
瞬間、体が硬直する。
目線が一点に集中し、そこから少しも動いてくれない。異様に口の中の唾がその存在の不快感を放ってくる。
何かの皮を素材とした本の背表紙がそこにあった。
色は木の皮を剥いだらこんな色してるよね、って感じの茶色。所々で色が違っているのが妙に生々しい。
厚みも今高校で使ってる国語辞典と大差ない。まぁ、学校のロッカーに置きっぱで専ら電子辞書だけど
え?なにこれ、ココって幼稚園児が読む本の棚だよな?ん?ぜってぇこんなの子どもが読むようなシロモノじゃないだろ
「どうしたの?坊や」
「ウヒャひゃ!?」
背後からの強襲。やめてホントマジかんべ~ん……。
「は、ハイ!?」
「なに探してるの?」
挙動不審な行動にも冷静な対応。店主のおばあちゃんに毒気を抜かれて俺も鎮火した。
腰を少しも曲げていない姿は、凛とした印象を与えてくる。薄手のベージュのカーディガンを羽織っている。灰色に澄んだ瞳はどこか気品を感じさせる。俺としては何とも話し続けられるか不安になる感じだな……。
「いやー、ちょっと演劇の参考に絵本でも選ぼうかな~、なんて思いまして」
「……それ買うのかい?うちは立ち読みを良しとはしないんだよ」
……店内で立ち読みしてる数人の客が居づらそうにこっちに目線をよこす。
「あー、や、俺はまだ立ち読みなんてしてないですよ?」
「それ買うのかい?」
「いや、まだ買うと決めたわけじゃ」
「買うのかい?」
……帰宅。
夜の7時になった頃であった。
俺の手には茶色い紙袋がおも~く鎮座しております。税込280円也。押し切られたにしては安いような印象。いらね~。
とりあえず二階にある自室に移動。制服から部屋着に着替えるか迷ったけど、まずはあの本に興味を割くことに。
なんか、気になっちゃいますね
最初見たときは気色悪かったけど、手に取ってみると肌触りがイイ!サラサラ~
ふむ、店内にいたとき中身確認する空気、もとい余裕がなかったからな、ちょいと読もうかのぅ……。
ペラッ
……ペラッ
………………ペラッ、ペラッ、ペラッ
え?白紙……?
「キョ~、ごはーん!」
下から母の声。
「はーい、りょーかーい」
ぼったくられ感を否めないまま夕食を済ませることに。クッソ……。
夕食後、風呂に入ったあと特にすることもなく本をいじくりまわす俺。フハハハッ、どうだ~、思い知ったか~!
……特に何の変哲も無い、でかいメモ帳である。もう飽きてきたぞよ?
ん……。なんか眠くなってきたかも。
あっ、ヤバイ、ちゃんとベットで寝ないとまた明日引きずっちまう……。
案の定暗転。まぁ、いい感じで微睡んでたしまどろむっていいよね……。
「おお!キシよ!目が覚めたようじゃな!」
ん……?なにこの野太い声……?お父さんでは断じてないし先生でこんな声の人いなかったよな……。
「ん?覚醒しとらんのか?おおい!キシよ!返事してくれんか!」
「……え?」
なんか王冠被った壮年の男性が目の前にいました。
ビックリした?夢ではありませ~ん☆
「あ、あ?ここ、え!?何処ってか誰ココどこ!?」
「ふむ、どうやら多少記憶の混乱が見られますな。いや、ただ純粋に驚いているだけかもしれませんが」
フードを軽く被った骨ばった老人がなんか言った気がするが。そんなことに意識を割くことは現状の俺にはできなかった。
何だここ……。あれ、自分の部屋じゃない?
うん、頭ついてこないな。
「……アンタ誰だ?」
「ワシか?ワシはこの国の王、ガウル=ノストラ=ブルーメルである!よろしく頼むぞ?異国の騎士よ!」
…………誰かこの状況説明してクレマセンカ。