列伝第3話 B級冒険者クロードの冒険譚(4/5)
無事、日刊ペースです。
次の日曜には本編再開予定。
登場人物紹介もねじ込みます。
「っつ……」
目が覚めた時、痛む体の節々にうめき声をあげる。
「あ、クロード起きたのね」
「おはよ~」
「お疲れ様です。クロード君」
倒れたまま横を見ると、ココ、シシリー、ユリアさんが僕の近くで座り込んでいる。
彼女たちも『精霊化』の影響でまともに立ち上がれないようだった。
「どう、なりました?」
「私たちの勝ちよ!ジオルドはまだそこで気絶しているわ。相当なダメージだったみたいで、ゆすっても蹴っ飛ばしても起きなかったわ」
「蹴っ飛ばしたんだ……」
「念のためね」
ココは結構乱暴だからなー(仁様のいる場所は除く)。
ジオルドが倒れている辺りを見る。
ジオルドは倒れ伏しているけど、どうやら死んだわけではない様だ。
かなり頑丈なようだ。
少なくとも、これで僕たちの勝ちなのは間違いがないだろう。
このまま殺すことも出来なくはないし、そうすべきなのかもしれないけど、あまりそんな気分にはなれないな。
彼には邪気というものが全く感じられなかったから。
《あ、クロード君起きたのね!》
見れば、光の精霊であるアカリさんがフワフワと浮かんでいた。
他の精霊は送還したようだけど、アカリさんだけは残っていたみたいだ。
《おめでとー!ご褒美にぱふぱふしてあげる。あ、この状態じゃ無理か。ユリアちゃん、ちょっと魔力借りるね》
「え、ちょ……」
ユリアさんが戸惑っている間に、アカリさんの身体が輝いて僕よりも身長の高いお姉さんになった。
ユリアさんからの魔力供給を増やして、実体化の方に力を入れることで、人間と同じような姿になれる、らしいです。
《ほら、ぎゅー!》
そう言って僕をその豊満な胸に押し付ける。
この状態だと、普通に人間と変わらない感触で……、死にそうになる。
「むぐー!!!」
俗にいう窒息だ。
「放しなさい!この色ボケ精霊!クロードが死ぬわよ!」
《あ、ごめーん》
ココがアカリさんを叱ってくれたので、僕は窒息死の危機から解放されたのだった。
レベルがいくつあろうと、人間は息が出来なければ死ぬからね……。
「ぷはっ!た、助かったよ、ココ」
「クロードも嫌ならちゃんと態度で示しなさい!」
「善処します……」
好意を向けられて、明確にそれを拒絶するというのは、苦手だ……。
《ごめんねー、呼ばれるのが久しぶりだったから、少し興奮しちゃったー》
「これを見て呼ぶ気になる方がおかしいわよ」
「まあまあ、ココちゃん。アカリさんも悪気はないから~」
《そうよー》
アカリさんは以前、ブラッドタイガーに丸飲みにされていたところを助けて以来、僕のことをやたら気に入ってくれたらしい。
ユリアさんとの契約に応じたのも、僕のそばにいるためだとか……。
好意を向けてくれるのは嬉しいんだけど、ちょっとスキンシップ過剰なのが問題だ。
でも、ジオルドへの最後の攻撃のように、ここぞというときには頼りになるのも事実だ。
「アカリさん、ありがとうございました。それではさようなら」
《ちょ、反応冷たいわよ!勝手に魔力持って行ったのは謝るから。あ、ほんとに召喚解除して……、クロード君、またこん》
ただでさえ精霊の3人同時召喚と維持でMPの減っていたところに、実体化によるMP消費を強要されて怒り心頭なユリアさんが、アカリさんを強制送還する。
「クロード君好きが度を越してなければ、良い精霊なのですけどね……」
ため息をつきながらユリアさんが呟く。
「まあ、クロードだから」
「クロード君だからね~」
「そうですね。クロード君です」
「え、何でそこに落ち着くの!?」
腑に落ちない着地点に驚きの声を上げる。
「拙者は……負けたのか……」
しばらくして目を覚ましたジオルドは開口一番そう言った。
「はい。さすがにこの状態で『負けてない』と言い張ったりはしないんですね」
「当然だ。気絶した状態で生かされただけなのにそんなことを言えば、拙者は武人を名乗る資格すらも失うだろう」
「本当に戦闘狂ね……」
「ここまで徹底していると、むしろ好ましく思えてしまいますね」
「だね~」
目を覚ましたとはいえ、起き上がる力はないようで、倒れたまま話を続ける。
僕たちはポーションを飲んだりして、何とか立って動ける程度には回復している。
「どうして、拙者を殺さなかった?」
「貴方は戦いに負けたらここを出て行ってくれるんですよね?僕たちの依頼は、貴方の討伐、もしくは追い払うことですから」
「くくくっ、殺した方がはるかに楽だろうに。本当におぬしたちは面白いな。ああ、約束だ。拙者はこの森から出ていこう」
笑いながら出ていくことを了承するジオルド。
「依頼達成の確認のため、明日また来ます。出来れば、それまでにこの森を出て行ってください。後、出来ればこの国以外の場所に行ってくれると助かります」
「エルディア王国とか、勇者がいるからおすすめだよ~」
シシリーがちゃっかり吸血鬼をエルディアに追いやろうとしている。
僕らのご主人様である仁様は、エルディア王国が大嫌いだ。
詳しい話は聞いていないけど、なんか色々あったらしい。
そして、仁様のエルディア嫌いは、じわじわと僕たちにも伝染していたりする。
より正確に言うのならば、エルディア王国に益することをして、仁様の不興を買ったら目も当てられないという理由の方が大きい。
だからエルディアまでの護衛依頼なんか絶対に受けないし、エルディアとの国境の街、リラルカに行くことがあっても、街のエルディア側には入りもしない。
「ふむ、拙者もそろそろ他の国に行こうと思っていたところだ。エルディアで勇者と戦う。あるいはエステアで、愚かな兄者を殺しに行くのもいいかもしれんな……」
兄弟を殺しに行くとは物騒なことを言っているね。
エステアの吸血鬼は多分、仁様が倒した吸血鬼のことだよね。
あー……、ミラさんに『吸血鬼を殺しませんでした』って報告しなければいけないのか。
少し気が重いな。でも、さすがに今から殺すのも後味悪いし……。
「2つ聞きたいことがある」
「答えられることなら」
仁様関係の話は大半が答えられないので、『答えられること』は意外と少なかったりする。
「<縮地法>対策、していたのか?」
この質問になら答えても問題はなさそうだ。
「ええ、強力なスキルですからね。万が一相手が使ってきたときの準備はしていましたよ」
「そうか……。強力だが移動中の制御が出来ぬから、どうしても攻撃が単調になってしまうのが課題だったが……」
「はい。ウォール系の魔法で移動を止める訓練をしました」
「クロード君が頑張ったものね~」
シシリー、それは言わないで……。
強力だけど制御のしにくいスキルに頼る戦い方は、弱点を突かれたときに取り返しが利かないから、どちらかと言うと対処は簡単な部類だ。
「くくくっ、切り札を切ったと思ったら、それが付け入る隙になるとはな」
「僕としては、その前の隙のない戦い方の方が厄介でしたけどね」
「クロード君が何度も吹き飛んでいましたからね」
ユリアさんも、それを言わないで。
「全く、世界は広いということか。拙者も修行をし直さなければならんな」
「僕より強い人もまだまだたくさんいますからね」
主に、カスタールの屋敷に……。
仁様、マリア先輩、ミオ先輩、セラ先輩、ドーラさん、タモさん、ルセア先生……。
模擬戦をして負けた相手だけでもこれだけいるから。
「む、それが2つ目の質問だったのだが……。おぬしより強い者の心辺りを聞いておきたくてな。このまま挑むつもりはないが、いつか戦ってみたいからな」
「あー、すいません。そのことについては教えられません」
「だめだよ~。絶対ダメ!」
シシリーの語尾が伸びなくなった。
仁様に害が及ぶことを想像して、精神的な余裕がなくなったのだろう。
「む、そうか。それは残念だ。だが、おぬしたちよりも強い者がいると知れただけでも僥倖だろう。いずれ来る戦いのために、鍛え直さねばいけんな。まずは<無詠唱>と『精霊化』対策、<縮地法>と<竜血覚醒>の運用見直しだな」
もう次のことを考えている……。
頭の中には戦いのことしかないのだろうか?
「あー、出来れば、『精霊化』については秘密にしてほしいんですけど……」
一応は僕たちの切り札だ。
あまり大っぴらにされても困る。
何が困るって、話を聞きに仁様の屋敷に詰め寄られでもしたら困る。
本当に……、困る。
「む、そうか。良いだろう。勝者が望むのなら、敗者は黙って従うのみだ」
「助かります」
本当に……、助かる。
もし吹聴するというのなら、今からでもとどめを刺さなければいけないから。
「では、そろそろ旅立つとするかな」
「え、もうですか?体力もそうですし、そもそも今、日中ですよ」
「太陽、平気なのですか?確か、お兄さんは太陽を克服しているとおっしゃっていましたけど?」
僕とユリアさんが質問をする。
太陽が平気なら、態々森の中にいる必要もないだろう。
「体力なら多少は回復しているから大丈夫だろう。太陽は厚手のコートで全身を覆えば問題ない」
「そんな簡単な対処でいいんですか?」
大分雑な対処だよね!?
「構わん。約束はさっさと守るに限るからな。おっと、最後に1つ。いつかまた戦ってはくれないか?今回、久方ぶりに全力が出せた。拙者の生の中でも、最も充実した戦いの1つに数えられるだろう。いずれ、さらに強くなった拙者と、同じくさらに強くなったおぬしたちとで、再び高め合いたいのだ」
「うっ、あんなギリギリの戦い、何度もしたくないんですけど……。でも、はい。わかりました。いずれ、また戦いましょう」
ギリギリの戦いは心臓に良くないけど、得る物がないわけではなかった。
いずれSランク冒険者になるためにも、今は貪欲に強さを求めて行きたい。
「そうか、それは良かった。では、また、いずれ……」
そう言ってジオルドは本当に森から出て行ってしまった。
いくら対策しているからって、本当に太陽が出ているうちから森を出ていくなんて、豪胆な性格しているなぁ……。
吸血鬼を追い払った(ほぼ自分で出て行った)後は、ギルドに依頼達成の報告をするために近くの街に戻った。
ギルドの職員を連れて森に行く途中で山賊に襲われたり、ギルドに戻って依頼が完了する直前で、他のCランク冒険者から因縁を付けられて、決闘騒ぎを起こしたことは、大した話でもないから省略したいと思う。
所変わって王都クインダムの冒険者ギルド。
「そうか、吸血鬼は追い払うにとどめたか」
僕たちの報告を聞いてギルド長が呟いた。
「ええ、彼は戦うことしか頭にありません。それも、相手も戦いを望んでいる場合に限ります。依頼の内容が討伐、もしくは追い払う、だったので、その選択は僕たちに裁量があると考えたのですが、何か問題だったでしょうか?」
「いや、問題はない。クロード君の言う通り、選択権はクロード君たちにある。考えていたのは別のことだ。まさか吸血鬼が<縮地法>を使えるとはな……」
「僕も驚きました」
「対策してなかったら危なかったわね」
……実を言うと、ギルド長には<縮地法>のことを話している。
正確には、元々<縮地法>を知っていたギルド長に、僕が<縮地法>を使えるということがバレたという方が正しい。
何でも、かつてギルド長のライバルだったSランク冒険者が得意としていた技だったらしい。
もちろん、仁様に絡むような話は一切していない。
<縮地法>を何で使えるのか、という話も聞かれたが、正直に『答えられない』と答えた。
後、『精霊化』と<竜血覚醒>についてもボカさせてもらった。
<竜血覚醒>について説明をしたら、僕たちの切り札である『精霊化』についても話さざるを得なくなるからである。
「昔、我がライバルが<縮地法>はある存在から教えられたと言っておったのだが、もしやと思ってな……」
「吸血鬼が、人間に技を教えたというのですか?」
あの吸血鬼だと、もしかしたら教えたかもしれないな。
色々と変わっていたし……。
「わからん。その吸血鬼も旅立ったし、我がライバルは連絡が付かんしで、真実は森の中ということだ。吸血鬼だけにな」
「つまんないわよ!」
「まあまあ、ココちゃん、我慢しようよ~。つまらないからって怒るのは可哀想だよ~。本当につまらないけど~」
むしろシシリーの言い方の方が傷つくんじゃないかな?
「ワシ……泣きそう……」
やっぱり凹んでた。
「話を続けてもらってもいいですか?」
「ん、ああ。そうだな。ワシの判断では、その吸血鬼の実力はSランク相当だ。正直、依頼のランクを完全に間違えているな。それについては謝罪のしようもない。本当に、済まなかった」
そう言ってギルド長は頭を下げた。
「最近、エステアの方でも依頼ランクに見合わない吸血鬼が出てきたそうだからな。近く、吸血鬼関連の依頼の最低ランクがAになるかもしれん。謝罪込みで今回の依頼料はAランク相当にさせてもらう。それでもSランクの報酬には届かんが……」
「いえ、Aランク相当の依頼料を貰えるだけで十分です。それよりも、今回の依頼でクラン結成の要件は満たせるんですよね?」
「それはもちろんだ。君たちさえ望むのなら、今すぐにでもクラン登録が出来るぞ」
その言葉を聞いて、ようやく一息つくことが出来た。
最終目標のSランク冒険者はまだ遠いけど、また1つ大きなチェックポイントを越えられたからね。
「やっとなのね。長かったわ……」
「そうですね。でも、多分平均的な冒険者から見たらこれでも早いと思います」
「そうだね~」
「それは当然だ。冒険者登録からクラン設立まで3カ月以内とか前例がないぞ」
時々、とんでもない速さでランクを上げる冒険者がいるみたいだけど、そういった冒険者はあまりクラン設立をしないらしい。
クラン設立の条件は、若干ランクを上げるのとは別の要素も必要になるから仕方がないかな。
「ギルド長、クラン申請は明日にしてもらってもいいですか?」
「それは構わんが……、ああ、別行動組か」
「はい」
今回、冒険者組8人の内、4人で依頼達成をした。
でも今回いなかった4人だって遊んでいたわけじゃない。
別の仕事をして、たまたま今この場にいないだけだ。
折角なんだから、クラン設立と言う記念はみんなで喜びを分け合いたいよね。
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Q&A
Q:なんで実の兄とガチ喧嘩したの?
ジオルド:同じ女に惚れたからだ。
Q:喧嘩に勝った後、どうなったの?
ジオルド:その女は嫁になった。娘もいるぞ。
Q:嫁と娘を放って修行の旅に出てるの?
ジオルド:…………。
Q:そんな奴が武術の頂とかほざいてるの?
ジオルド:……………………。
Q:ねえ、何か言ったらどうなの?ねえ?
ジオルド:…………………………………………。
ジオルド仲間に加えようかな?
→男はいらないや(真理)。クロードたちだけで十分だ。
とは言え、使い捨てるにはもったいないキャラだよなー。




