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第6話 盗賊の発見と退治

 不味い保存食の問題を乗り切るため、俺たちはホーンラビットを狙って倒し、後2食分(4匹)確保しておいた。保存食はまずいが栄養はあるため、これを食べないというわけにもいかない。仕方ないので、俺たちは保存食で栄養を取った後にホーンラビットの肉で口直しをすることを選んだ。

 料理と言えるものではないが、この世界には<火魔法>と<水魔法>があるので、肉を捌いて食べられるようにするのは難しくなかった。<水魔法>は飲み水として使えるし、<火魔法>は夜の灯にも使える。

 他には<土魔法>も俺たちの旅を助けてくれる。具体的に言うとトイレだ。土の壁を作り身を隠し、終わった後は土魔法で埋めるだけだ。あまり詳しく言うつもりはない。さくらが涙目になるからな。

 なんにせよ、魔法のおかげで俺たちの世界の旅よりは楽なようだ。


 すでに夜になって、野営の準備をしている。結局、盗賊のアジトまではたどり着けなかった。食糧問題による、ホーンラビット狩りで時間を食ったのが大きいだろう。

 道中のゴブリン相手にさくら1人で戦闘をさせてみたが、特に問題はなかった。これでさくらの戦闘に関する懸念はほとんど消えたと思っていいだろう。


 後、ちらほら新しい魔物とスキルが出てきたので紹介しておく。


マッドボア

LV4

<身体強化LV1><突進LV2>

備考:イノシシの魔物。突進はビビる。


ファングウルフ

LV3

<身体強化LV1><咆哮LV1>

備考:牙の発達した狼の魔物。


ゴブリン・アーチャー

LV4

<身体強化LV1><弓術LV2>

備考:弓を持ったゴブリン。


 こいつらとの戦闘に関しては特に言うことはない。強いて言うならゴブリン・アーチャーから初めて遠距離攻撃をされたことくらいだろうか。<身体強化>は動体視力も上がるらしい。矢を剣で撃ち落とせた。

 他の2匹は食えるけどホーンラビットよりは不味いらしい。ボアなのに…。マッドがいけないのだろうか。

 テント内で2人寝袋を準備し横になる。2人旅だと寝ずの番がつらいので裏技を使う。マップで敵の接近アラームをかけるのだ。寝る前に付近の敵を殲滅し、1km範囲の接近でアラームが鳴る。熟睡はできなくても時間は稼げるだろう。

 2人とも寝袋で寝るだけなので、色っぽい展開は期待できない。

 どうでもいいことだが、魔物がいる場所で寝袋で寝るのは間違っているのだろうか。

 3度ほど、うろついていたスライム(寝ない)が探知に引っかかるものの、瞬殺する。スライムに限り、アラームを10mにしたらそれ以降は起こされなくなった。


 おおむね、俺たちの旅は順調なようだった。


「今日は盗賊と戦おうと思う」

「はい」


 翌日、盗賊に対する方針を相談しつつ進む。


「基本的にはマップの有利を活かして、奇襲を仕掛けようと思っている」

「ちなみにアジトはどのような場所なんですか」

「洞窟だな。洞窟は森の一部らしく、同じエリア扱いだ。だから内部の詳細もわかる」

「洞窟って奇襲できるものなんですか?」


 確かに道が限られていて、奇襲はしにくいだろう。


「いや、敵の位置さえ分かれば、攻撃を仕掛けるタイミング次第ではいくらでも奇襲になるぞ」

「そうですね。本当にチートですよね。マップ」

「そうだな。流石に盗賊もそんなモノを想定してはいないだろう」


 チートがあるなら使います。当然だね。


「俺が盗賊を殺すのは当然として、さくらは何をする?」

「今回、相手は魔物ではなく人間ですからね。私がとどめを刺すのは無理でしょう。なので回復と支援、ウォール系の魔法だけでもいいでしょうか…」

「わかった。それだけしてくれれば十分だ」


 まあ、スキルを奪う関係上、すべての止めは俺がほしいという裏事情もあるけど。

 盗賊がいる森に入る。ここはゴブリンだけしか出てこない、などということもなく普通に森の動物や魔物がいる。普通の猪が魔物を倒すレアな光景も見られた。魔物と普通の動物の違いは、基本的には魔石の有無だけらしい。魔力の塊である魔石を持っている方が、能力が高くなるのは当然だろう。そんな魔物を倒す猪、マジ猪。


 盗賊のアジトに近づいてきた。盗賊は全部で10名。ちなみに盗賊だとわかるのはマップ上の称号に「強盗殺人者」とか「盗賊」とかあるからだ。無実のやつはいないみたいだから、全員殺してもいいみたいだ。

 気になる盗賊のスキルだが、持っていないスキルがいくつもあった。


<斧術>、<格闘術>、<暗殺術>、<鍵開け>、<恐喝>、<泥棒>、<拷問>、<魔物調教>、<夜目>、<狂戦士化>


 うん。ダーティなスキルが多いね。そして、1番気になるのが<魔物調教>だ。俗にいう、テイミングスキルって奴かな。2人が持っている。


盗賊A

LV6

<魔物調教LV2>以下省略


盗賊B

LV8

<魔物調教LV2>以下省略


 しかも2人合わせればLV3に届きそうだ。これはとっておきたい。マップを見ていると他にも気になることがあった。盗賊のお宝部屋の中に檻に入った魔物がいるのだ。


フェザードラゴン

LV2

<竜魔法LV3><飛行LV1>


 フェザードラゴンは羽毛みたいな翼をもつ白いドラゴンだ。愛嬌があってなかなか可愛いが、とても珍しい種族とのこと。盗賊が見つけたら、そりゃ捕まえて売るよね。どうやら幼生体らしいし。でも、<魔物調教>スキル持ちがいるのになんで、テイム状態にしていないのだろう。さっき盗賊は10人といったが、実はテイム状態のブラックウルフが1匹番犬のようにアジト入口に座っている。


ブラックウルフ

LV7

<身体強化LV3><咆哮LV2><噛みつきLV2>

備考:ファングウルフの黒い上位個体。


 この世界でスキルを具体的に見えるのは俺だけだが、普通の人たちにも「なんとなくこれ得意そう」という予感がある場合がある。スキルの概念こそないが、自分にできることというのは案外わかるらしい。

 少し話がそれたが、テイム状態の魔物がいるなら、<魔物調教>スキルに気付かずに生きてきたわけではなさそうだ。にもかかわらず売れば高額になるフェザードラゴンをテイム状態にしていないのは何でだろう…。


 ヘルプ先生から返答があった。フェザードラゴンのテイム条件はLV3だそうです。


 逆にいえば俺だけはテイムできる状況にある。倒してスキルを奪う。スキルを奪った状態で売りに出す。等色々な扱いが考えられるが、俺の心の中ではテイムして仲間にすると決めてしまっていた。理由としては、状況が整いすぎているということだ。テイムされていないレアな魔物がいて、その周辺に合計すればテイムできるレベルの<魔物調教>がある。これは神が俺にテイムしろと言っているようなものじゃないか。女神は信仰してないけど。

 俺自身テイムには興味がある。ヘルプ先生によると、テイムされた魔物は、飼い主に親愛のようなものを抱くらしい。この世界の住人の中で初めて心を許せる相手となるかもしれないのだ。最初が魔物というのも締まらないが…。


「さくら、広範囲の魔法は使うな。特にアジトの奥の方では」

「何を見つけたんですか?」

「テイムできそうなドラゴン。盗賊がテイムスキル持ってるおまけつき」

「売り物として捕まっていたのでしょうか。それも含めてお宝に被害は与えたくないですよね」

「そういうこと」


 身を隠しながらアジトに近づく。ブラックウルフは臭いで敵の位置を知ることができる。マップで念じたら、その索敵範囲が表示されたのでその外側ギリギリで準備を終える。

 洞窟では、今までよりも武器の運用に気をつける必要がある。ステータスがあったって、人は簡単に死ぬことを忘れてはならない。


 準備を終え、いよいよ盗賊のアジトに襲撃をかける。基本戦術のようになっているが、俺が1人で特攻してさくらが別の位置からフォローをする。正直、ステータスを比べると俺1人でも全然苦労しそうにない。<生殺与奪ギブアンドテイク>によるステータス強奪は、通常の経験値によるレベリングに比べ、はるかに高い成長効率を誇るのだろう。


「ウィンドバレット」


 戦闘開始だ。ブラックウルフの知覚範囲外からマップを頼りに方向を調整し、ウィンドバレット(威力は低いが、着弾時に大きな音がしない)をぶち込み、門番のブラックウルフを倒す。盗賊にテイムできる程度のブラックウルフでは、LV1魔法とはいえ強奪によって強化された魔力の一撃に耐えられないようだ。

 静かな戦闘開始のため、盗賊は気付かず、外に出てこなかった。

 1人洞窟に入る。後ろの方からこっそりさくらもついてくる。マップによると2人の盗賊が話をしているようだ。気付かれないように近づいていく。


「…の街の貴族様が、フェザードラゴンを買ってくれるんだとよ」

「マジか。いくらになったんだ」

「1000万ゴールドだとよ。お頭がスゲー喜んでた」

「俺らの分け前も期待できる額だな」


 フェザードラゴン…渡さないよ…。


「おっと、そろそろ持ち場に戻るか」

「そうだな。こんなところでサボってるのがばれたら、分け前減らされちまう」


 こいつらサボってこんなところで話し込んでいたのか。この場を離れようと盗賊2人が後ろを向いた隙に剣を抜き、盗賊のうちの1人に切りかかる。こちらに背を向けていた盗賊は反応が遅れ、袈裟懸けに切り捨てられる。HPが0になっている。この世界で行った最初の殺人は、こうしてあっけなく終わった。まさかここまで何にも感じないとは思わなかったな。もしかしたらステータスの抵抗なんかが精神的な強さに影響しているのかもしれない。


「てっ、敵襲―!」


 もう1人の盗賊が大声で仲間を呼び始めた。おっと、余計な考察はあとにしよう。すかさず死体からスキルを奪う。戦闘中に隙を見つけて能力を奪う。こうすると雑魚を倒した分だけ戦闘中に強くなるとか、イカサマにもほどがある状況になる。


「くっ、アルフレッドの仇―!」


 話をしていた片割れが、ナイフを手に突っ込んでくる。言いたいことが2つある。

 1つ目、殺した盗賊の名前がかっこよすぎる。どっかの英雄みたいな仰々しい名前の盗賊だ。盗賊相手では名前なんていちいち見てないからな。ちょっと吹きそうになった。

 2つ目、せっかく仲間を呼んだのに、相手よりリーチの短い得物で突っ込んでくるのはどうなんだ。時間稼ぎに徹し、数の有利を活かそうとするべきじゃないのか?


「ふんっ!」


 剣の間合いを維持しながらの一閃で盗賊が崩れ落ちる。この程度の相手なら、一撃で倒すことができる。

 実はこいつが<魔物調教>のスキル持ちだったので、しっかりと奪っておいた。とりあえずあと1人…。

 奥の方から盗賊が4名やってくる。武器を持って臨戦態勢だ。うん、意外と対応が早いな。


「アレックスとアルフレッドがやられただと…」

「てめえ、冒険者か!」


 殺気のこもった目と武器を向けてくる盗賊達。やや遅れて、残りの4人も到着する。


「お頭!アレックスとアルフレッドがやられた!多分冒険者だ!」


 お頭と呼ばれたのは、2m近い大男だった。武器はバトルアックスといわれる大斧だ。


ドルグ

LV22

<身体強化LV4><恐喝LV3><夜目LV2><泥棒LV3><斧術LV4><狂戦士化LV1><格闘術LV2>

「怨嗟の大斧」


怨嗟の大斧

分類:大斧、呪い

レア度:希少級

備考:同種族の殺害人数に応じて強化


 なんか怖い効果持っているんだけど…。盗賊にしか使い道のない武器だよね。あ、詳細確認したら、所有者が変わると上昇分リセットだそうよ。

 お頭は俺の方を睨み付けると警戒しつつも話しかけてきた。


「てめえは冒険者だろ?なんで1人で俺の前に立っている?普通討伐依頼ともなるとそれなりの人数が用意されるはずだが…」


 冷静に現状を分析している。なんで?普通仲間が殺されたらそのまま襲い掛かってくんじゃないの?

 と言うかいろいろ勘違いされてそうだから訂正しておこう。


「いろいろ考えてるとこ申し訳ないけど、俺は冒険者じゃなくて旅人だ。だから討伐依頼じゃないし、他に人もいない」

「んなわけあるか!てめえが囮で伏兵がいるとかだろ!そんな見え透いた嘘に引っかかるかよ!」


 お頭は怪訝な顔をして言い返してきた。

 確かに嘘っぽいけど事実です(さくらが後ろの方にいること以外)。それにこんな洞窟の一本道で伏兵とかいらんよね。


「本当なんだけどな…。まあいいや。依頼じゃないけどアンタらを倒すつもりなんで…」


 俺も武器を構える。変なものでも見るかのような目を向けて来るお頭が宣言する。


「ちっ、よくわからない野郎だ。だが1人で俺らの前に立っていて、仲間を殺したとあっちゃあ、生きて返すつもりなんざ微塵もねえ!ぶっ殺してやるよ!」


 お頭の宣言が終わるか終らないかの内に俺は走り出し、お頭に向かって剣を振るおうとするが、大斧を振り回してきたので1度下がる。

 お頭が繰り返し大斧を振るう。しかし、思っていたよりも大雑把な振り方ではなかったな。縦に斧を振るったと思ったら、回避した先に手下が攻撃を加えてくる。手下が攻撃をしてきていると思ったら、手下が急に避けて大斧が振るわれる。

 斧の振り方も一定ではなく、力任せに振るうこともあれば、最小限の動きでこちらに牽制をしてくることもある。


「おらおら、逃げてばっかのチキン野郎が!最初の威勢はどうした!」


 そんな挑発に乗れるか。こいつ口は悪いが全く油断してない。狭い洞窟内で大斧なんて正気を疑っていたが、フレンドリーファイアどころか完全に手下と動きを合わせてきている。

 牽制と大ぶりを使い分ける。大斧使いの印象を覆すような戦術に俺は感心すらしていた。まさか、盗賊からチームプレーを見せられるとは思わなかったからだ。


「お前たちこそ盗賊のくせに小賢しい戦い方をするじゃないか。最近の盗賊はチームプレーが流行なのか?」

「…盗賊が技術のある戦いをしたら問題なのか?盗賊がチームプレーの練習をしたら問題なのか?盗賊の頭がよかったら問題なのか?俺たちは、それができるから小規模ながらもここらでシマ張れる盗賊やってんだよぉ!」


 どうやらこのチームプレーはこのお頭が主導したもののようだな。要はもちろんお頭だ。しかし、このお頭相当頭がいいし、これだけのことを盗賊なんて荒くれ者に言い聞かせているからには、カリスマもあるのだろうな。


 その後しばらく膠着状態が続く。お頭の牽制や、手下のヒットアンドアウェイの戦い方により、決定打に欠ける。こちらも回避力には自信があるんで、まともに攻撃を喰らっているわけではないのだが。

 多人数相手も対人戦も初めてで、正直なめていたところがあった。盗賊がここまで見事な連携を繰り出してくるとは…。

 膠着が続くときは隠し玉を1つ切り、状況をこちらに傾けるべきだろう。というわけで、接近戦をしながら雷魔法の詠唱を開始する。


「なに?こいつ魔法使いか?」

「しかも近接戦しながら詠唱してやがる!」


 手下どもは大いに驚いてくれたようだ。だが、さすがお頭。すぐに指示を飛ばす。


「てめえら、魔法が何だってんだ。詠唱してるんだから回避力も落ちてるだろ!1発ぶち当てて、詠唱止めやがれ!」


 しかし遅い。雷魔法LV1魔法サンダーバレットは5秒で詠唱が終わる。魔法を止めようと通常より離脱の遅い盗賊に対し、剣をはじき隙を作ると…。


「サンダーバレット!」


 雷魔法をぶち当てる。身体が痺れて動きが悪くなったところに、斬撃を加える。これで8対1が7対1になった。


「くそっ、またやられた」


 お頭がいらだたしげに吐き捨てる。だがさすがに逃げるという選択肢はないのか、攻撃を続けてくる。しかし1度戦況が動くと流れは簡単に変えられないようで、次々と手下どもが倒れていく。続けて3人殺し、残りが4人になった時にお頭が叫ぶ。


「おめえら!アレをやる!離れてろ!」


 その言葉に手下どもはハッとした顔になるも、すぐに指示に従い洞窟の壁際に離れる。


「うおおおおおおおおお!!」


 お頭の目が血走り、ただでさえパンパンな筋肉が膨張する。これがスキルにあった<狂戦士化>のようだ。理性を減らし、戦闘能力を上げる。


「ぐりいいいいいあああああああ!」


 今までと比べ物にならない速度で接近してくるお頭。しかしそれは悪手だ。俺が盗賊たちに苦戦したのは、戦術やチームワークがあったからだ。強みである頭脳を捨てた攻撃なら…。


「ふっ!」

「あああ…」


 相手ではない。


 バタン。斬撃がクリーンヒットし、お頭が倒れる。


「「「うっ、うわああああああ」」」


 切り札である<狂戦士化>が通じず、お頭がやられたことでついに手下どもが諦め、洞窟の外に逃亡しようとする。まだ、<魔物調教>持ちが倒せていないので逃がすわけにはいかない。急ぎ追いかける、が…。


「ファイアウォール!」


 洞窟内で発生した火の壁に足を止める。


「何だ!?」

「ここから先は通しません!」


 さくらだ。フォローをしてくれたようだ。

 逃げ場を失った盗賊に切りかかる。3人はそれからほどなく地に伏すこととなった。


「ふう、これで全員倒したな」


 今回は得るものの大きい戦いだった。単純なスキルやステータスだけではない。戦術の大切さを盗賊から教えられることになるとは思わなかった。

 だが、おおむね作戦通りにいったと考えてよいだろう。まず、俺はステータスやスキルの一部を封印した状態で盗賊を相手にする。これにはいくつかの理由がある。

 俺の能力的に今後もステータスは向上し続けるだろう。しかし、ステータスだけで得た力は単純になりがちだ。能力を封印しパワーゲームにしすぎないようにしてから戦い、地力を高めるという訓練も必要になると考えたのだ。もっとも、初めての殺人と訓練を含んだ戦闘を同時に行うというのには、賛否が分かれるところだろう。

 次にフェザードラゴンの件だ。フェザードラゴンを仲間にする以上、能力を与える必要があるだろう。奪った全てを使って戦闘していたら、与えることによる能力ダウンに耐えられないと思ったのだ。普段から制限することに慣れておけば、今後仲間が増えて、個人戦闘力が落ちることがあっても大丈夫だろう。


「さくらのおかげで、テイムスキルを逃がさないで済んだよ」


 さくらにはフォローを…。盗賊を洞窟の外に逃がさないように足止めすることをお願いしていた。今回もこちらの勝利条件は、相手の全滅だったのだから。お頭は最後に倒す予定だったが、<狂戦士化>のせいで先に倒すことになり、結果、手下には逃げられそうになってしまったわけだ。本当はさくらの出番がなかった方がよかったんだけど。


 ちなみにさくらは今…。


「おええええええ」


 洞窟の隅で吐いている。そこ、ゲロインとか言わない。剣で切った中には相当グロイ部分も多く、戦闘という緊張の糸が切れた段階でひどく意識してしまったようだ。かくいう俺も多少返り血を浴びている状態だ。血まみれ少年とゲロ吐き少女、どこに需要あるんだこれ?

 息も絶え絶えにこちらの発言に返してくれる。


「えへへ…。でもそれしかしてないんですけどね…うっ、うえええええええ」

「無理すんな」


 すべての死体からスキルを奪う。無事、<魔物調教>がLV3になった。<狂戦士化>は俺の目指す戦闘スタイルとは違うから死蔵決定だな。

 <恐喝>は絶対不要というわけでもないが、<泥棒>に関しては死蔵しておきたい。これに頼るようになったら、いろいろおしまいだ。


 とにかく、今回に関してはさくらは明確に役に立った。盗賊が洞窟の外まで行ってしまったら、確実に面倒なことになっていたからだ。


「とりあえずお疲れ様。それだけとはいっても、今回はそれがありがたかったのは間違いないからな…」

「よかった。私でも役に立てたんですね」

「ああ、間違いない。今後もよろしく頼むな」

「はい」


 やっと立ち直ったさくらが、こちらに笑顔を向ける。ちょっと口元にアレ付いてますよ。

 アレは<土魔法>で掘った穴に入れ、上から土をかぶせて隠す。俺は<水魔法>で体を覆うと血を吸収させて服をきれいにする。出来るだけ水気をなくしてから<火魔法>と<風魔法>で服を乾燥させるという魔法の無駄遣いをしていた。攻撃力のない簡単な水や火の操作はLV1でも可能である。攻撃魔法だけが魔法スキルの全てではない。

 ちなみに<生活魔法>スキルというものがあり、これを使うと体や服を一瞬できれいにできるらしい。いずれ欲しいものだ。


20150902改稿:

「怨嗟の大斧」の分類に「呪い」を追加


20150911改稿:

修正(6)の内容を反映。


20151004改稿:

盗賊のスキルに<暗殺術>を入れ忘れていたので追加。


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マグコミ様にてコミカライズ連載中
コミカライズ
― 新着の感想 ―
[気になる点] >普通の猪が魔物を倒すレアな光景も見られた。 ということは、アンデッドが発生すると言うことでは?
[一言]  もうそろそろ普通の武器じゃ傷付かなくなってるんじゃないでしょうか…w
[一言] 恐喝とか泥棒とか必要なくね(笑)特に交渉威圧気配遮断時空間魔法だので他用できるし
2019/11/08 18:42 退会済み
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