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第5話 殺す覚悟と村からの脱出

 ゴブリンの森でするべきことを全て終え、村へ戻るために森を出たところで、さくらがお願いをしてきた。


「仁君、私もそろそろ魔物にとどめを刺させてください」

「唐突だね。何か心境の変化でもあったの?」


 覚悟が終わったのだろうか。もしそうなら俺が思っていたよりは肝が据わっていたということか…。


「はい。今のところ私は囮役しかこなしていません。これは役に立ったといえるのでしょうか。正直、仁君1人でどうにかできた状況に無理やり役目を追加しただけに思えるのです」


 正直に言えばそうだ。さくらに渡している分のステータスを俺に加算すれば、今の戦いはもう少し楽になっただろう。そうでなくても、つまり今のステータスのままジェネラルたちと戦ったとしても、俺は負けなかっただろう。時間は長くかかったかもしれないが。


「何でもするといったのに、役立たずにならないといったのに、完全に役立たずです。少しでも、役に立てるようになりたいんです」


 なるほど。覚悟を決めたわけではなく、それより嫌なことがあるから葛藤を無視することにしたのか。確かにそれも乗り越え方の1つではある。


「とはいえ、能力が強化された今となっては、とどめは俺が刺した方が得なんだよな…」


 <生殺与奪ギブアンドテイクLV2>により、死体からでも能力を奪える状況では、俺が殺して経験値と能力の両方を得る方が効率がいい。この力では、俺が直接止めを刺さないといけないので、さくらにとどめを譲ると、経験値か能力のどちらかを諦めなければならなくなる。もちろん、諦めるのは経験値だが。


「はい、ですから数回だけ試させてください。いざというとき、とっさに動けるようにしたいんです。普段のとどめはもちろんお譲りします」


 なるほど、俺がとどめを刺すのが効率がいいとはいえ、実現できない時もあるだろう。そういう場合に、とどめを刺す経験の有無は影響するかもしれないな。


「わかった。じゃあ俺がスキルをとって弱らせたら、さくらがとどめを刺してね。腹パンで」

「いえ、腹パンは無理です」


 無理か。腹パン強いんだけどな。


「最初は魔法で遠距離から、次に杖で直接倒す予定です。流石に素手はちょっと…」


 武器があるのにわざわざ素手で魔物を殺すメリットもないだろう。


「それで、その…」

「どうしたの?」


 歯切れが悪い言い方をするので聞き返す。


「できれば、ゴブリンのような人型の魔物ではない方がいいのですが…」


 なるほど、確かにいきなり人型の魔物を殺すのは抵抗が大きいかもしれない。と、ここまで考えて1つ大きな事実に気付いた。

 あれ、俺ゴブリンしか倒してなくね?

 今まで倒した相手がすべてゴブリンだったことに驚愕しつつ、さくらに返事をする。


「わかった。マップを見ればゴブリン以外の魔物も探せるから安心してね」

「はい、それで最初は魔法で距離をとって倒して、次に杖で倒すようにしたいです。その後、ゴブリン相手にも魔法と杖で1度ずつ、合計4回協力いただけないでしょうか?」


 なるほど、意外とよく考えているな。魔法と直接攻撃で徐々に慣らしていく感じか。

人型じゃなければ多少は抵抗も少ないから後回しというわけだな。俺はいきなりゴブリンを腹パンで沈めたって?キニスンナ。

 本当は各パターンで繰り返し戦闘をした方がいいけれど、そこまで迷惑をかけられないから、最低限の4回でいいといったのだろう。


「わかった。ただ、次のパターンに進むのが辛かったら言ってくれよ。頑張りたい気持ちは分かるが、無理はしてほしくないからね」

「はい。ありがとうございます」


 マップで敵の位置を確認する。


「おっ、向こうにスライムがいる。魔法があれば簡単に倒せそうだな」

「スライムですか。ゲームによってパターンありますけどどういうタイプですか?可愛い系ですか?ホラー系ですか?」


 特徴はあまり変わらないのに、物によって外観は大きく変わる。詳細を確認するとさくらに伝える。


「普通にホラー系。完全に粘液」

「うわ…」


 雫型とか甘くはなかった。


「まあ、可愛いよりは心理的な抵抗が少なくていいかもね…」

「はい…」


 女の子に粘液の魔物との戦闘を強制させる俺。変態か?いや、別に無理矢理ではないけど…。

 5分ほど歩き、スライムを視認できた。

 スライムは本当に粘液の塊としか言いようがなかった。スキルを確認する。


>野生のスライムがあらわれた


スライム

LV2

スキル:<吸収LV1><分裂LV1>

備考:水色の粘液状の魔物。


 俺、分裂できるかなあ…。スキルを奪うってことは俺のステータス欄に<吸収>と<分裂>が付くってことだよな。まず俺の腕が千切れ飛びます。そこから徐々に胴体、手足顔と再生していきます…。


「どうしたんですか?急にぼうっとして?」

「はっ!」


 さくらの声により俺は、心の中にある真なる異世界から、この異世界アークスに帰ってくる。


「いや、千切れた腕から俺が生えてくるところを想像してた」

「何それ怖いです」


 イメージの中で俺は100人以上に分裂していた。だいぶ怖かったよ…。


「後、あいつ腹パンできない…」

「お腹どこでしょうか…」


Q:俺は分裂できるのか?後、スライムの腹はどこか?

A:分裂はできません。種族固有スキルのほとんどは、他種族が入手しても使用できません。

スライムに腹部と呼べる部位は存在しません。


 どうでもいい話をしながらスライムに接近する。さくらには一応少し距離をとってもらった。スライムが体を変形させて飛び込んでくる。とっさに避け、能力の強奪を開始する。

 心の中ではスライムの体当たりという、ある意味ファンタジーの基本を見れて感動していた。

 スライムは体当たりを数度繰り返すが、俺はその攻撃を全て避けている。剣で受けたらダメージ与えちゃいそうだし。

 正直ワンパターンであまり強いとは言えない。避けている内に能力を奪いつくすことが出来た。うん、最初より明らかに動きが悪いね。


「さくら!能力奪ったから魔法でとどめを!」

「はい!」


 俺が叫ぶとさくらが詠唱を開始する。敵は弱っているので、ボール系でいいと伝えてある。きっちり5秒後詠唱が完了したようだ。


「ファイアボール!」


 動きの遅いスライムにファイアボールが当たり、残りHPが0になる。こうしてさくらの初の討伐は終了した。


「お疲れ様。どうだった?」

「意外と大丈夫でした…。次は杖でとどめですね」


 声色もしっかりしているし、表情にも大きな変化はない。これなら大丈夫だろう。

 ちなみにヘルプ先生の言う通り<吸収>と<分裂>は俺には使えなかった。でもとりあえず試してみる辺り、俺の業も深いのかもしれない。


「わかった。近くにもう1匹スライムがいるから、今度はそいつと接近戦をしてね」

「はい」


 マップを確認し、近くのスライムの方へ向かう。同様に能力を奪った後にさくらにとどめを任せる。


「せい!」


 杖による一撃がスライムに決まり、潰れるように倒れる。


「これも、大丈夫です…」


 先ほどよりは、辛そうな顔をして言う。一応は大丈夫そうだが、次のゴブリンが分かれ目だな。


「次、ゴブリンに魔法は行ける?」

「はい、大丈夫だと思います」


 ゴブリンは探さなくてもどうせ出るので、村の方に向かう。案の定5分もしないうちに出てきた。ゴブリンから能力を奪うのは慣れたもので、2m圏内を維持し続け、すぐに奪いつくす。


「ファイアボール」


 ファイアボールはゴブリンに命中し、そのHPを奪いつくす。

 さくらはその場でしゃがみ込み、俯いている。


「次で最後だが、行けそう?」

「し、しばらく待ってください」


 やはりここで躓いたか。無理をさせるつもりはないので、しばらく休ませる。5分したら立ち上がってきた。


「すいません。もう何度か魔法でとどめを刺すパターンを続けさせてください」

「わかった。ちょっと待っててね」


 マップによりゴブリンが多めにいる方を探す。


「行こう。こっちにはゴブリンが多めにいる」

「よろしくお願いします」


 移動した先にはゴブリンが複数匹いた。さくらは3匹ほどとどめを刺したところで、もう平気だといった。


「じゃあ、次はいよいよ杖でゴブリンにとどめだね」

「はい、行けます」


 杖を握る手に力が籠っているようだった。

 ゴブリンに接近しいつも通り能力を奪い切る。


「さくら!行け!とどめを刺せ!」

「はい!…えい!」


 ゴブリンに一撃を当てる。当然ゴブリンは死ぬ。ついに、人型の魔物を自らの手で殺したさくらは、自分の手を見つめていた。


「どうしたの?きつかった?」

「はい、手に残っている人型の魔物を殺した感触が、少し気持ち悪いです。これに慣れるのは難しそうです」

「まあ、俺みたいにすぐに慣れるのは難しいと思うし、慣れていいものでもないよ。今の様子を見れば、いざというときに動くぐらいはできそうだからね」

「はい。それに関しては平気そうです」


 ある程度の自信がついたのだろう。これならある程度は安心できそうだ。

 そんなことを考えていると、さくらの方から話を切り出してきた。


「1つお聞きしたいことがあるのですけど…」

「何かな」

「はい。その口調です。さっき私がとどめを刺すときに『行け!とどめを刺せ!』と命令口調でした。仁君は私と話すとき、あえて優しい口調をしているんですよね。さっきのが素だと思うんですけど、どうでしょうか?」


 とっさに出ていたか。まあ、その通りだ。絶対に使わないという程ではないが、さくらと話すときの口調は、余所行きというか、さくらに警戒させないことを意識した口調であることは間違いない。


「あー、そうだね。絶対使わないって程じゃあないけど、普段使いの口調じゃあないね」

「そうですか。その、できれば普段使いの口調でお話ししていただけないでしょうか」

「いいの?じゃあ、ちょっと失礼して…ゴホン。これでいいか?俺の普段使いの口調だ。いきなり、他のクラスの女子に使う口調じゃないと思って変えていたが、少し厳しめだぞ?いいのか?」


 さくらは何やら赤くなっている。そして潤んだ目でこちらを見て言う。


「いい、です。それでお願いしています…」


 何かがさくらの琴線に触れたようだ。こちらの方が楽だし、さくら相手ではこの口調で話すことにしよう。


「わかった。それにしてもさくらは頑張ったな。この短時間で苦手だった戦闘にも慣れてきただろう?」

「いえ、まだとどめしか刺してないから、戦闘に慣れたとは言えないと思います」


 それもそうか。じゃあ少し趣向を変えてみよう。


「なら今度は1からさくらが戦うんだ。1匹くらい能力奪わなくてもいいだろう。今日は遅いから今度にするけど…」

「あ、そうですね。1からの近接戦も経験した方がいいですよね」

「頑張ってくれ。俺も人は殺したことがないからな。人を殺せるように頑張るつもりだ。一緒に頑張ろう」


 俺がそう言うと、さくらはひどく驚いた顔をする。


「ハードル高くないですか?というか以前お話ししていましたけど、本当に人を殺す気なんですか?」

「ああ。敵対するなら容赦する気はないし、その選択肢の中には殺すというのも入っている。最初は盗賊あたりで肩慣らしするけどな。次の目的地の近くにいるし」

「盗賊が近くにいるんですか!?マップはそんなこともわかるんですね…」


 マップによると次に行こうとしている街の近くの森に、10人くらいの盗賊が集まっている。ほぼ全員同じ場所にいるから、隠れ家だろうな。後でつぶす。


「ああ、そいつらは倒していく予定だ」

「はい。ちょっと不安ですけど、仁君なら大丈夫ですよね」


 頬を染めて照れたように言うさくら。気付いたら、さくらさんの信頼度と好感度がやばいことになってそうだ。


 少し暗くなってきたので、村へ向かうのを急ぐことにした。魔物は避けずに俺が瞬殺する。

 日が落ち切る前に村に着いたので、早速魔石を売りに行く。


「ほう、すごいね。これはゴブリン・ジェネラルの魔石かい?このランクの魔石となると、1個で5万になるよ」


 昼の老婆にジェネラルの魔石を渡すと、驚いた顔をして言う。

 いきなり5万は美味しい。ただのゴブリンの50倍の価格になるとは思わなかった。ジェネラルの剣は俺が使うから売らない。ヒーラーは4000、シャーマンはソーサラーと同じ3000、ナイトは2000となった。他の魔石も全て売り払い、7万ちょうどになった。これで旅支度ができそうだ。


 まだ日が落ちるまで多少の時間があるから、今日中にできるだけ準備をしておこう。さくらと話し合って決めた次の目的地は、ここから歩いて1日ちょっとの場所にある少し大きめの街だ。野営を含んだ旅にも慣れようという試みも含まれている。


「テントは2人で1つでもいいよな。1人1つだとかさばりすぎるし」

「はい。大丈夫です」


 現在も宿は2人同じ部屋だが、昨日は2人ともすぐ寝てしまい、素敵イベントなどは一切なかった。テントとなれば今まで以上に距離が縮まるだろう。さくらの方も慣れてきたのか感覚がマヒしてきたのか快諾する。


「寝袋と、保存食とー…」


 2人してあれこれ物を買ったり、荷物が大きくなると諦めたりしていた。結局3万くらい使い準備は万全となった。宿に戻り食事をとり、おじさんに話しかける。


「水桶2つお願い」


 流石に現代日本で暮らしていた高校生に、2日風呂なしはつらい。せめて体を拭くだけでもしておきたい。<水魔法>でシャワーをするのもありだが、外で素っ裸になるわけにもいかないし…。

 部屋を貸し切り交代で体を拭き、もう1人は1階で飲み物でも飲んでいることにした。うっかり部屋に入ったりしないように鍵を閉めている。

うん。余計なハプニングは信頼関係を崩すからね。まだ焦る時ではないさ。


「おやすみー」

「おやすみなさい…」


 まだ少し早いが寝ることにした。一応寝る前に奪ったステータスとスキルをさくらに分配することは忘れない。ちなみにさくらに渡す能力は、俺が所有する中のほんの少しだけだ。

 さくらとしても、俺の能力で得たスキルやステータスを、自分に回してもらうのは悪いと思っているようだった。

 まあ、少しとはいえ普通の人から見れば破格なんだけどね。本人は「何もないところで転ぶことが少なくなった」と喜んでいた。さくらさん、何もないところで転ぶ子だったんだ…。そして「少なくなった」のか。「無くなって」ないのか…。


 次の日、宿の窓から外を見ると、人だかりができていた。マップを確認すると、王都から来たらしき兵士が4人ほど確認できた。


「さくら、外に王都から来たっぽい兵士がいる」

「それは…。まさか私たちを探しに来たんですか?」


 その可能性は低くない。念のため死体でも見てこいとか言われて…。もしくは能力奪った兵士関連で何かあったとか。


「少し様子を見よう。それで目的が俺たちみたいだったらどうする?」


 兵士の数名なら倒せないこともないだろう。マップで見ても十分に倒せる範囲だ。でもわざわざ騒ぎを大きくすることもない。幸い、昨日のうちに出ていく準備は完了している。さっさと次の街へ向かっても問題はない。


「俺としては、見つからないようにこの村をさっさと出るべきだと思う。全滅させるのは難しくなさそうだから、さくらが望むなら皆殺しでもいいけど…」


 この村からは移動先の候補がいくつかある。この村を出てしまえば、追手を差し向けるのは困難になる。とはいえ王国内にいる限り、追手が来る可能性は残り続ける。出来る限り早く王国を出ていきたいものだ。

 それでも、この村で魔石の売買をしていたことがバレる可能性は高いだろう。特に口止めもしていなかったし…。その場合、俺らの手元にまとまった金があることと、魔石にして5万にもなる魔物を倒す力があることもバレてしまうのだろう。

日銭に追われて王都からほど近い村で力を隠さなかったのは失敗だったかもしれないと反省する。口止めのために、兵士の方々には闇にのまれてもらうのもありではある。


「戦略的撤退でお願いします」


 ちょっと怯えた目をしている。いかんいかん。殺気が漏れていたようだ。


「とりあえず1階で情報収集だな」


 旅支度を終え、今すぐでも村の外に出られる状態にしてから1階に行き、おじさんに話を振る。


「おはようございます。窓から外を見たら人だかりができていましたけど、何かあったんですか?」

「おう、おはよう。それなんだが、なんか王都の兵士がこの村に来たらしいぞ」


 それは知っている。欲しいのはもう少し踏み込んだ情報だ。


「そうですか。この村にはよく兵士が来るんですか?」

「いや、そんなことはないな。この村は王都から近いから、王都から来た役人が連れてくることはある。だが、今回みたいに兵士だけが来ることはめったにない。あるとしたら、この辺にお尋ね者がいる場合くらいかな」


 俺たちを探している可能性が上がった。これはさっさと出ていくことが確定だな。


「逃げましょう」

「さっさと出ていこう」


 小声で話す俺とさくら。朝食を食べている暇はなさそうだ。おじさんに頼んで出来合いの料理を少し包んでもらう。まさか朝食が食えないとは思ってなかったから、昨日のうちに払っていたんだよね、料金。で、チェックアウトを済ませる。


 マップにより兵士から見えない位置取りで村の外を目指す。王都の時と異なり、今度は準備できているので、その分だけマシだろう。

結局、何事もなく村の外に出ることができました。あの国の兵士、練度低すぎ。

 マップがチート?今更でしょ?

 村も出たので、堂々と道を歩く。道といっても舗装などされてなくて、ただ草の生えていない馬車道でしかないけど。


「今日中に盗賊倒せるといいな…」

「あ、それ予定に入っているんですね…」


 だって盗賊ですよ、盗賊。剣と魔法のお約束じゃないですか。ヘルプ先生に聞いたけど、盗賊が略奪したものは、盗賊を倒した人のものにしていいんだって。


Q:この世界の盗賊の扱いってどうなっているの?

A:暴力によって、他者の財産・生命を奪おうとする存在のことです。襲われた場合、反撃して殺害しても罰則はありません。盗賊が強奪したもの(その場に当事者がいない場合)は、盗賊を討伐した者に所有権が移ります。冒険者ギルドで賞金を懸けられていることもあります。


Q:冒険者(ギルド)て何?

A:冒険者は魔物や盗賊の討伐。魔石や素材の収集などを依頼を受けて実行し、対価をもらう職業のことです。冒険者になるには冒険者ギルドという、冒険者の互助組織に登録する必要があります。多くの依頼はまず、冒険者ギルドに対しての依頼となります。


 盗賊退治なんかはギルド自体が依頼者になることも多いらしい。事後報告でも、討伐を証明できればお金はもらえる。ただし、討伐者は公開され、盗賊が奪った宝に関して、元の所有者(の遺族)と返還交渉が始まることもある。

 つまり、お金を払ってでも取り返したいものがある人にチャンスを与えるということだ。もちろん所有権は冒険者の方にあり、突っぱねることも金額をはね上げることも可能だ。言い方は悪いが、「一応話ができる盗賊」と何ら変わりがない。

 つまり何が言いたいかというと。


「盗賊はレアドロップが確定したエネミーです!」

「ひどいです。ひどすぎます」


 そうは言うが俺のことを本気で非難しているようではなさそうだった。まあ、俺のおふざけに反応してくれたんだろう。大分距離感も近くなったからね。

 それに、この世界にはレアドロップなんてないけどね。魔物が持っているか持っていないかだから。倒した時に決まることなんてほとんどない。


「盗賊なら殺しても心が痛まない。盗賊が集めたものが手に入る…。完璧だ!」

「さすがに私は殺すのは無理だと思います…。お手伝いはさせていただきますけど…」

「ああ、フォローだけ頼む。いつの間にかLV7になっている<身体強化>の力を見せてやるぜ」

「私もLV5にしていただきましたしね。これだけは持っている相手が多いからすぐ上がるようですね」


 LV5でも、現代日本のスポーツ選手を瞬殺できるくらいの力はある。盗賊から逃げるくらいは簡単だ。でもたまに転ぶらしいさくらさん…。

 昼頃になり、ある大きな問題が発覚する。異世界に来て以来、最大の危機といっても過言ではない。


「「保存食まずい(です)!」」


 そうなのだ。道具屋で買った保存食は、栄養はあるのだがとにかくまずい。正直これを一食にはしたくない。保存食というより非常食だ。

 現代日本に生きてきた俺たちにとって美味い食事というのは、最低限必要なものになっているのだろう。俺たちはホーンラビットという角の生えたウサギの魔物を見つけ、瞬殺し<跳躍>と魔石を奪う。ヘルプ先生から食べられるとの回答を受け、ナイフで解体し(俺が)し、<火魔法>で焼いて食べた。


ホーンラビット

LV3

<身体強化LV1><跳躍LV2>


「料理、できる?」

「ごめんなさい、無理です…」

「俺も…」


 ホーンラビットは美味かったが、2人の間に重い空気が流れる。異世界で最初に死の危険を感じたのが食糧問題とは…。


「家庭科でおっかなびっくり料理するのが関の山だからなー」

「お母さん、いつもおいしい料理ありがとう。そっちに戻ったら料理、教えてね」


 さくらさーん。現実逃避しないでー。


「とりあえず、肉を焼くだけならできる。食事のことは後で考えよう。でも、絶対、後で、考えよう」

「うん。本気、出します…」


 2人の絆が強まり、その目に覚悟が宿る。食糧問題で…。


*************************************************************

進堂仁

LV7

スキル:<剣術LV4><槍術LV3><棒術LV5><盾術LV1><火魔法LV1><水魔法LV1><風魔法LV1><土魔法LV1><雷魔法LV1><氷魔法LV1><闇魔法LV1><回復魔法LV2><呪術LV1><憑依術LV1><統率LV2><鼓舞LV2><身体強化LV7><跳躍LV2 new>

異能:<生殺与奪ギブアンドテイクLV2><千里眼システムウィンドウLV-><???><???><???><???><???>

装備:ゴブリン将軍の剣


木ノ下さくら

LV4

スキル:

<棒術LV5 up><火魔法LV1><水魔法LV1><風魔法LV1><土魔法LV1><雷魔法LV1><氷魔法LV1><闇魔法LV1><回復魔法LV1><身体強化LV5><跳躍LV1 new>

異能:<???>

装備:ゴブリン魔術師の杖


20150819改稿:

仁のセリフから、逃亡者を思わせる部分を削除。


20150911改稿:

修正(6)の内容を反映。

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マグコミ様にてコミカライズ連載中
コミカライズ
― 新着の感想 ―
これだけ覚悟きまっててしっかり受け答えも出来るのになんでいじめられてたんだろ? なんで腹パンにこだわってるんだろ、普通に頭殴ったほうが良いでしょ。 現代日本人高校生としては主人公の素の喋り方のほう…
[気になる点] ナイフで解体し(俺が)し、
[一言] 肉は塩さえあれば大概うまい
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