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第226話 石化解除と記念パーティー

まだ、細かいお話はできませんが、書籍化、コミカライズが決定しました。

続報をお知らせできる場合、活動報告からお伝えさせていただきます。

本当は本編の更新で伝えたいですが、更新頻度ォ・・・

 聖への質問を終えた俺は、聖のことを凛に任せ、凛の部屋を後にした。

 部屋を出た俺は、外で待機していたマリアやメイドと共にエステア迷宮へと転移する。


「この辺が良さそうだな」


 迷宮54層、戦闘訓練区画の適当な広場を見繕い、<無限収納インベントリ>を発動し、必要な者を取り出す。

 そうやって取り出したのは、4581体の石像……石化した魔族達である。

 今から、魔族達に<祓魔ふつま剣>と<奴隷術>を使い、人類種への憎悪を消して、無害な奴隷にしようと思う。


 実体のない刀である『精霊刀・至世いせ』を取り出し、<拡大解釈マクロコスモス>により強化した<祓魔ふつま剣>を発動して、メイド達に1列に並べてもらった4581体の石像に向けて……。


「<飛剣術>」


 実体のない飛ぶ斬撃を放った(意味不明)。

 斬撃は1列に並んだ石像を次々と通過していき、瞬く間に全ての魔族を祓った。

 これが、最高効率というヤツだ。


 石像のステータスを確認すると、種族の欄が『魔族』から『魔人族』に変わっていた。

 これは、今まで魔族は『人』として扱われていなかったという証拠だろう。なお、石像の見た目は一切変化していない。

 そもそも、石化状態では、スキルなどで肉体的な変化を与えることはできない。

 四天王を魔族から人間に戻すときは、一度石化状態を解除しなければいけないのも、これが理由である。

 逆に言えば、魔族から魔人族への変化は、肉体ではなく魂の変化ということになる。


 次に、4581人の石化した魔人族達に向けて<奴隷術LV10>を発動する。

 一切の抵抗なく、全ての魔人族が俺の奴隷となった。


 ここで<祓魔ふつま剣>、<奴隷術>の順で使用したのには理由がある。

 <奴隷術>には『人類種の要素がない者は奴隷化できない』という制約が存在する。

 この制約により、ハーフ魔族や四天王を除く、魔王が直接生み出した魔族は奴隷化することができないので、先に<祓魔ふつま剣>を使う必要があったという訳だ。


 <祓魔ふつま剣>により人類種への憎悪が消え、<奴隷術>により俺に逆らえなくなったので、4581人の魔人族は無害化できたと言えるだろう。

 問題は、石化から復活した魔人族達の意識がどうなっているか、である。

 憎悪がなく、逆らえないとは言え、今までの記憶がなくなる訳ではない。襲撃され、石化させられ、奴隷にされた魔人族は、俺達に敵意を持ってもおかしくない。

 当然、敵意を持った魔人族は調教され、それでも駄目なら処ぶ……いや、なんでもない。


 とりあえず、1人石化解除してから対処を考えよう。

 俺は適当な女魔人族の石像を掴み、他の魔人族の石像が見えない場所に転移した。


「『アンチストーン』」


 俺が石化解除の魔法を発動すると、紫の肌をした女魔人族が復活した。


「私は、ここは、貴様は……、うぅ……。そ、そうか、魔王様は、倒れたのか……」


 女魔人族は自分の身体、周囲、俺の順で見回し、魔王の死を理解した後、突如ブルブルと震えだした。


「おお、この開放感……。心の平穏……。これが、これが、自由……!?」


 一見、歓喜に震えているように見える女魔人族だが、よく見ればその顔には絶望としか言えない表情が張り付いていた。

 女魔人族は、そのままへたり込み、自分の身体を抱きしめる。


「お、落ち着かない……!?何だ、この不安感は……?自由とは、これほどまでに恐ろしいモノだったのか……?」

「?」


 女魔人族が何を言っているのか、理解できないので首を傾げる。

 アルタ、この反応の意味は分かるか?


A:推測ですが、魔族は元々、他者に隷属することで安寧を得る性質を持つのだと考えられます。一般的な生物とは異なり、上位者である魔王の命令に従うことに最適化されているのでしょう。魔人族となった今もその性質は残り、魔王と人類種への憎悪を失ったことで、精神の安定を保てなくなったのだと思われます。


 なるほど、簡単に言えば、魔人族は奴隷にするのに適した種族ってことだな。

 これなら、上下関係を正しく理解させれば、俺達に対する敵意を持つことはなさそうだ。


「安心しろ。お前は自由ではない。魔王の死後、俺達に捕縛され、奴隷となった」

「ど、奴隷だと……!?」


 何故か、少し嬉しそうな顔をする女魔人族。何だかなぁ……。


「命令だ、跪け」

「うっ……」


 <奴隷術>による命令に反応した女魔人族は、明確に嬉しそうな表情をしてから跪いた。


「お前、お前達には、自由などなく、俺の奴隷として一生を過ごして貰う」

「おお……!分かりました、私は貴方の奴隷として生きます。どうか、ご命令を!」


 アッサリと奴隷になったことを受け入れる女魔人族。チョロすぎる。


 命令して欲しそうだったので、とりあえず着替えてもらった。

 元々、魔族は全員が同じような服を着ていた。魔王に生み出された魔族に個性はなく、着飾るような必要もないからだろう。

 魔人族という別の種族となったので、今後は個性も出てくるはずだ。その一歩として、まずは服装に個性を出してもらうことにした。


 余談だが、魔人族に羞恥心はないようで、女魔人族は俺の前で普通に全裸になった。

 最低限の衣類しか身に着けておらず、女はパンツもブラも着けていなかったので、上下一枚ずつ脱いだらすぐに全裸になったのである。

 調べてみたら、男女関係なく、全ての魔人族が同じ状態だった。


 もう1つ余談だが、2つの理由から、用意した服装はメイド服ではない。

 理由1。個性を出すと言っているのに、画一的なメイド服を着せる意味がない。

 理由2。メイド服は厳しいメイド検定に合格した者しか着ることを許されていない。……初めて聞いたんだが、その設定?


 最初の命令が終わったので、次は最初の命名をしよう。

 実は、魔族には名前を付ける文化がなく、女魔人族の名前の欄も空欄だった。

 最初に復活させた魔人族なので、アルファという名前を付けてやった。流石に、残る4580人に名前を付ける気はないが、1人も名前を持っていないと不便だからな。


「アルファ、それが私の名前……」


 着替え終わった女魔人族改めアルファが感慨深そうに呟く。

 アルファには最低限の説明だけして、残る4580人の石化を『エリアアンチストーン』の魔法で一斉に解除した。そして始まる阿鼻叫喚の地獄絵図。


「落ち着かない!落ち着かない!落ち着かない!」

「自由なんて要らない!俺は不自由が良いんだ!」

「頼む!誰でも良いから俺の主になってくれ!俺に命令してくれぇ!」

「嫌よ!アンタが私の主になりなさいよ!」

「どうやって、生きていけば良いんだぁ……」


 4580人の魔人族が誰一人、何一つ決めることもできずに右往左往している。

 集団をまとめようとする者は1人もいない。全員が、誰かに決定を委ねようとしている。

 これは、考えを改めた方が良さそうだな。奴隷に適しているのではなく、奴隷以外のことができないと言う方が正しいだろう。


 少し離れた場所から5分程眺めていたが、状況が一向に改善されなかった。

 仕方がないので、近づいて奴隷にしたことを伝えると、全員がアルファと同じようにアッサリと受け入れた。うーん、マジで奴隷種族だな。


 しかし、魔人族の奴隷精神はそれだけに留まらなかった。


 驚くべきことに、ここが何処か、自分達は何故奴隷になったのか、俺達は何者なのか、といった重要な情報に欠片も興味を持たないのである。

 なにせ、最初に聞いてきたことが『何か命令は無いのか?』だからな。いや、他に聞くことは幾らでもあるだろう。


 その後、命令をしてアルファと同じように着替えさせたのだが、ここでもカルチャーショックがあった。

 どうやら、魔人族には羞恥心に加えて性欲も無いようで、4580人も居るのに異性の全裸に関心を持っている者が1人も居なかった。

 話を聞いてみると、魔族時代も今も全く性欲がなく、上位者の指示なく繁殖することを忌避していた。逆に、上位者の指示があれば、誰とでも性行為をするそうだ。ヤバいね。


 そして、最終的に魔人族は全員を末端として扱うことになった。

 アルファを含め4581人も居るので、ある程度の階層構造で管理をしようとしたのだが、誰一人階層の上位になろうとしないのだ。

 全員が全員、最下層のメンバーとなることを望み、まとめ役になることを望まなかった。

 向上心が全くなく、他人に指示を出すことが極端に苦手らしい。


 この時点で、俺は魔人族を普通の人類種と同様に扱うことを諦めた。

 もしかしたら、いずれは心境に変化が現れるのかも知れないが、現時点では無理だ。

 仕方がないので、適当にチーム分けをして、上位者としてメイド達を設定し、メイド達の指示を聞くように命令した。

 どうやら、最上位者の命令しか聞かない訳ではなく、中間となる上位者を設定すれば、その人物の命令もしっかりと聞くようだ。


 正直、若干の扱い難さはあるが、命令に忠実な魔人族が、4581人も配下になったのは良いことと考えることにした。

 この後の魔人族達の扱いは、いつものようにメイド達に任せよう。

 基本的には、迷宮内で何らかの作業に従事してもらうことになるはずだ。



 次に向かったのは、同じく迷宮54層にある別の広場だった。


 ここでも、先程と同じように<無限収納インベントリ>から石像を取り出した。

 取り出したのは、武神アスラと美神フレアの2体の石像であった。2体とも石化する前から全裸だったので、裸婦像と呼べる状態になっている。


 先程と異なるのは、<魔物調教>は<奴隷術>とは異なり、石化状態の相手に使うことはできない点だろうか。

 何故ならば、<魔物調教>を成功させるには、魔物に自身が上位者であることを認めさせないといけないからだ。当然、石化している魔物に、相手を判定することはできない。

 一応、2体とも石化前に配下になることをほぼ認めていたので、それ程面倒なことにはならないと予想している。


「『エリアアンチストーン』『エリアハイヒール』」


 2体まとめて石化解除し、2体まとめて回復をする。

 同時に石化解除したのは、同じ説明を2回するのが面倒だからである。まさか、魔人族のように何の質問もしてこないなんてことはないだろう。

 同時に回復したのは、両者とも現地勇者組との戦闘直後に石化したため、HPが瀕死と言える程に低くなっていたからである。


「あら、石化が解けたわ。……アスラちゃんも、無事のようね」

「フレアも生きていたか。そして、貴様達は何者だ?」


 石化が解けた2体は最初にお互いの無事を確認していた。仲良いね。

 そして、アスラの視線が俺に突き刺さる。これは、警戒されているな。


「ワタシ達の石化を解いたみたいだし、敵という訳ではなさそうだけど」

「我らを石化した者達が居ないからな。何とも言えん」


 ミスったか?現地勇者組が戻ってきてから石化解除すべきだったかもしれん。

 いや、まだだ。まだ、説得することができるはずだ。


 俺は2体に<拡大解釈マクロコスモス>で強化した<魔物調教>の陣を飛ばす。


「俺の名前は仁、魔王を倒した男だ。石化前の約束通り、お前達には俺の配下として、俺に従ってもらう。抵抗したければ、抵抗すると良い。2体まとめて相手にしてやろう」


 よし!パーフェクトな説得だった。


「その言い方、貴様はあの少女達の関係者のようだな」

「貴方の言う通り、魔王様の気配はもう感じないけど、流石に信じがたいわね」

「細かい説明は、俺の配下になった後にしてやろう。……どうする?大人しく俺の配下になるか、俺と戦うか、好きな方を選べ」


 俺がそう言うと、アスラはニヤリと口角を上げた。


「我は武神の名を冠するのだ。闘うに決まっているだろう」

「そうね。確かに従うとは言ったけど、最低限、力は示してもらわないとね」

「フレアよ、安心しろ。<求道>の疼きが止まらん。確実に、強いぞ」

「そう、それじゃあ、最初から全力を出した方が良さそうね」


 2体は臨戦態勢となり、アスラの闘気とフレアの魅力が高まっていくのを感じる。

 すまん、嘘だ。フレアの魅力が高まっているのか、よく分からない。


「はぁ!!!」

「『ビューティビーム』!」


 ほぼ同時に放たれたアスラの闘気弾とフレアの魔法が俺に向けて飛んでくる。

 闘気弾と魔法が俺に直撃する直前、素早く殴って消し飛ばした。やはり、力の差を理解させるには、素手の戦いを見せるのが一番効果的だろう。


「何と!?」

「嘘でしょ!?『ビューティバリア』!」


 パンチの威力を見て、フレアが防御を固めようとバリアを張る。

 俺はフレアに近づき、バリアを軽く殴った。


-パリン-


「そんな!?」


 一撃で粉砕される『ビューティバリア』を見て愕然とするフレア。

 そのまま、フレアの顔面に向けて本気のパンチを繰り出す。


「ひっ!?」

「フレア!」


 フレアが悲鳴を上げ、アスラが叫んだ。

 当然、フレアに当たる直前で寸止めをする。念のため、<手加減>も使ってある。

 全力パンチの風圧で、フレアの長い髪が荒れ狂う。目の前に迫る拳を見て、その威力を想像して、フレアがその場にへたり込んだ。


「まだ、続けるか?」

「ま、負けを認めるわ。ワタシは、アナタに従います」


 俺が降伏を促すと、フレアは両手を挙げて負けを認めた。

 直後、<魔物調教>の効果が発動し、フレアが俺の従魔となった。


「強いことは理解していたつもりだが、これ程とは……」

「降参するか?」

「断る。我を従えたければ、その拳で屈服させて見せよ」


 俺の全力パンチを見ても、アスラの闘志は衰えなかった。

 更には、寸止めなんてしないで、全力で殴ってこいという宣言までしてくる。


「分かった。行くぞ」

「来い!」


 全速力でアスラに接近し、<手加減>をした本気パンチを腹にぶち込む。

 アスラは辛うじて俺の動きを認識できていたが、反応して防御することまではできず、直撃を喰らってしまった。

 本気腹パンの直撃により、アスラが身に纏った闘気は一瞬で全て消し飛び、アスラ自身も吹き飛んだ。下からアッパー気味に殴ったので、放物線を描いて飛んでいく。


「っ……!?」

「アスラちゃん!」


 アスラは意識を失っていなかったが、身体からは完全に力が抜けていた。

 アスラのHPは<手加減>の効果で1になっているので、このまま放っておくと落下ダメージで死にかねない。

 俺はアスラの落下地点に転移すると、衝撃を与えないようにキャッチした。


「『ハイヒール』」


 <回復魔法>により、アスラのHPを安全圏まで回復するのも忘れない。


「我の……負けだ……。貴様に……従おう……」


 魔法によりHPは回復しているが、身体の衝撃は抜けていないようで、アスラは脱力し、呂律の怪しいまま己の負けを認めた。

 フレアの時と同じく、<魔物調教>によりアスラが俺の従魔となった。

 これで、無事に目標達成だな。


 アスラを抱きかかえたまま、フレアの元へ転移する。


「アスラちゃん。良かった、生きているのね」

「辛うじて……だがな……」


 俺はへたり込んだままのフレアの横に、脱力したままのアスラを寝かせる。


「従えると言ったのに、殺す訳がないだろう」

「それはそうかもしれないけど、あの時のアナタの迫力は、死を覚悟する……いえ、死の恐怖を感じるモノだったわ」


 フレアは俺の本気パンチを思い出して、身体をブルリと震わせ、胸もプルリと震えた。


「こんなの、初めての経験よ。美しくないなら、死んだ方がマシなはずなのに、恐怖に我を忘れて、情けなく悲鳴を上げてへたり込むなんて……」

「悪いが、自殺は禁止させてもらう」

「大丈夫よ。従うと言った直後に自殺なんてする気はないし、ワタシの心が『アレは仕方ない』と叫んでいるから、そのつもりは最初からなかったわ」


 俺が自殺を禁止すると、その気はなかったとフレアが否定する。

 しかし、美意識の化身であるフレアの場合、何が原因で死にたくなるか分からないから、自殺を禁止しておくのは最初から決めていたことでもある。


「フレアの言わんとすることは、我にも分かる気がする」


 少しだけ回復したようだが、起き上がる力まではないアスラが、フレアに理解を示した。


「貴様……いや、貴方の拳は、身体だけでなく、魂にまで衝撃が届いた気がする。確かに初めての経験だが、できれば経験したくなかったものだ。闘いの中で傷つくことを厭わぬ我が、二度と受けたくないと心から思ってしまったのだからな」

「このワタシが美を忘れ、アスラちゃんが闘いを恐れる。普通に考えたら、あり得ないことよね。……アナタ、一体何者なの?」

「そうだな。2体とも配下になったし、そろそろ説明してやろう」


 そろそろ、説明が必要な頃合いだな。俺は2体に向けて、かくかくしかじかをした。

 今までの経緯とかに興味はないだろうから、出自や大まかな能力の説明だ。


「なるほど、異世界人なら、変わった能力を持っているのも納得ね」

「ふむ、彼我の力量が分かり、隠れた能力も明らかにする力か。道理で強い訳だ」


 両者、微妙に観点が異なっているが、納得してくれたようで何よりである。


「1つ、聞かせて欲しい。何故、我らを配下に加えようと考えたのだ?貴方の力ならば、我らを配下にする必然性はないように感じる」

「確かに、危険を冒してワタシ達を従える必要はないわよねぇ」

「大した理由は無い。俺は気に入った魔物をテイムしているだけだ」


 人を奴隷にするときは色々と考えるけど、魔物のテイムに関しては一切躊躇しない。

 気に入ったらテイムする。気に入らなかったらテイムしない。それだけだ。


「……くくくっ、そうか。我らは貴方にとって、その辺の魔物と大差ない存在なのだな」

「酷い侮辱に聞こえるけど、実際にそれ程の差があるみたいなのよね……。ショックだわ」


 最終試練って、ちょっとレベルが高くて、倒すと良い報酬をもらえる魔物のことだろ?

 最終試練が大量発生してくれれば、色々と捗るのに……。


「それじゃあ、俺の従魔となったお前達に、最初の命令をする。服を着ろ」

「「!?」」


 両者とも、理由があって全裸になっているようだが、俺の配下となった以上は、常に全裸でいることを許可することはできない。

 外出時や人目のある場所では、服を着ることを強制させてもらう。

 服を着るため、アスラとフレアはメイド達に連れられていった。



 アスラとフレアを見送った後、その場で最後の石化解除をすることにした。

 魔族、最終試練と来て、最後の石像は先代魔王の四天王シェドールである。

 もう1人、今代魔王の四天王ヴィンヴァルトも魔族領で石化させたが、こちらは石化した時点で<祓魔ふつま剣>により祓われているので、既にメイドの手によって石化解除と奴隷化が済んでいる。


 シェドールの石化解除が後回しになっていたのは、現時点でシェドールだけが先代魔王の情報を持っているからである。

 色々と謎の多い先代魔王の情報は、可能ならば確保しておきたいところだ。

 ……魔王の情報を軽視したせいで、ひじりの存在に気付くことが遅れたという、苦い経験をしたばかりだからな。


 俺は石化したシェドールを取り出し、<生殺与奪ギブアンドテイクLV9>と<多重存在アバターLV7>のコンボを発動して、魂から直接情報を読み取る。

 アルタ、先代魔王に関する情報で、重要そうなモノはあったか?


A:残念ですが、先代魔王に関する新しい情報は一切・・ありませんでした。


 一切?流石に新情報が0は有り得ないだろ……何があった?


A:どうやら、<存在継承クラスエクステンド>の副作用のようです。今代の魔王に知識を譲渡した際に、シェドールの魂……記憶に大きな欠損が発生しました。シェドールは、断片的な情報と先代魔王への忠誠心だけでここまで行動していました。


 つまり、魔王ホーリーの人格を復活させない限り、先代魔王の情報は得られない訳だ。

 シェドールにそのつもりはないのだろうが、上手い具合に情報を隠蔽されてしまった。

 というか、シェドールって<存在継承クラスエクステンド>によってスキルやステータスも失っていたよな。その上、記憶まで失っていたのか。少し哀れだ。


 情報が得られない以上、シェドールの人格を残す意味はない。

 サクッと石化解除して、サクッと<祓魔ふつま剣>で斬って、メイドに任せた。



 その日の夜、現地勇者組が帰宅した後、魔王討伐記念パーティーが開始された。

 今回のパーティー会場は、ミオがデザインした天空城ver2.0である。


 参加者、スタッフを合わせて3000名を越える大規模なパーティーを、下手な王城よりも豪華な天空城で開くことになったのだ。

 これは今回の魔王討伐作戦で、包囲作戦組に入らなかったメイド達が、スタッフとして会場のセッティングなどを行ってくれた。

 加えて、天空城という立派すぎる会場では、カジュアルな格好は違和感が凄いので、ドレスコードを設定することになった。

 俺も珍しく正装をしている。当然、正装これはメイドが用意したモノだ、

 割と急に予定が決まることが多い中、対応してくれるメイド達には感謝しかない。


「皆の協力のおかげで、最高と言える結末を迎えられたことを感謝する。乾杯!」


 パーティーの主役なので挨拶をすることになったのだが、真面目な挨拶は苦手なのでどうしても短いモノになってしまう。

 参加者は全員が配下なので、俺の性格を理解しているから、短くても文句は出ないのがせめてもの救いだろうか。


 挨拶を終えた俺は、真っ先に本日の功労者達、現地勇者組のところに向かった。


「今回は色々と手間を掛けたな。ありがとう」

「手間などとは滅相もありません!是非、またお呼びください!」


 リコの言葉にメイド達が強く頷いて同意を示した。


「そう言ってくれると助かる。探索者組は流石の連携だったな」

「旦那様に褒められたのです!シンシアも楽しかったのです!」

「良い経験になったね、ソウラちゃん」

「良い修行になったね、カレンちゃん」

《はい。旦那様のお役に立ち、成果をお褒めいただけ、戦いの経験も得られた。まさに最高の1日でした》


 シンシア、カレン、ソウラ、ケイトは満足そうな表情をしている。


「アスラとフレアも配下になったから、機会があればまた戦ってみると良い」

「良いのです!?」

「ああ、アスラも戦いたいと言われて嫌とは言わないだろう」

「楽しみなのです!」


 戦闘狂シンシア戦闘狂アスラは仲良くなれると思う。仲良く戦うだろう。


「アスカ、急に呼び出して、戦わせて、悪かったな」


 アスカは俺の事情を詳しく知らないまま、いきなり呼ばれて最終試練と戦うことになった。正直、無茶なことをさせた自覚はある。

 ある意味、今回の件で一番労わなければいけない相手だったりする。


「気にしてない。あなたが言うこと、何でもする」

「……嫌なことは、嫌と言って良いからな?」

「何でもする」


 ヤバいな。アスカの口癖が『何でもする』になっている。

 問題は、ただの口癖ではなく、本当に『何でもする』という部分である。


「あら、アナタも一緒だったのね。丁度良かったわ」


 そう言って近づいてきたのは、豪華なドレスに身を包んだフレアだった。当然、横には可憐なドレスに身を包んだアスラが居る。

 フレアは堂々と歩いているが、アスラは動きがぎこちない。


「しっかりと服を着ているみたいだな」

「ええ、貴方の命令だから大人しく服を着たわ」

「2人で決めたのだ。貴方に従うと決めた以上、譲歩できることは譲歩すると。無論、どうしても譲歩できぬこともある。その時は、我らを殺すと良い」

「できれば、痛くしないでくれると嬉しいわ」


 基本的に、この2体は命より主義に重きを置いている。

 譲歩できる範囲では譲歩してくれるが、その範囲を超えたことを無理に行うくらいなら、死んだほうがマシと言うことなのだろう。厄介な……。


「極力、お前達の主義に反しない命令を心がけよう。ただし、着衣だけは譲れない命令だから諦めてもらう。少なくとも、人目のある場所では絶対だ」

「それは譲歩しよう。人に従う以上、人の道理に従うのも必要なことだろう」

「ええ、ワタシも服を着るくらいなら十分に譲歩できるわ。服を着ることでワタシの美しさが隠れてしまうけど、美しさ自体が損なわれる訳ではないのだから」


 どうやら、『全裸』は2体の譲れない主義ではなかったようだ。


「しかし、服を着るのは良いとして、このヒラヒラした服はどうにかならないのか……。非常に動きにくくて落ち着かん。これを着て闘うのは、我でも少々厳しい」

「それは戦うための衣服じゃないから当然だ。普段着は動きやすい服を選ぶことだな。……そもそも、お前達はどうしてこのパーティーに参加しているんだ?」


 当たり前だが、俺が2体をパーティーに誘った訳ではない。

 参加したいなら否とは言わないが、この2体がパーティーに参加したいと言うとは思わなかったのだ。


「ああ、それはこの夜会の後に、彼女達の部隊が解散すると聞いたからな。その前に、彼女達に賞賛と感謝を伝えたいと思ったのだ」


 そう言ってアスラが視線を向けたのは、シンシア、アスカパーティの面々だった。


「シンシア達なのです?」

「うむ。お前達は見事最終試練である我とフレアを打ち倒した。これは、賞賛されて然るべき偉業だ。誇るが良い」

「感謝は、ワタシ達を殺さず、魔王様が倒れるまで石化で済ませてくれたことに関してよ。そのお陰で、ワタシとアスラちゃんは生きて再会することができたわ。ありがとう」

「感謝する。これで我は更に強くなれる。可能ならば、いずれ我と再戦してほしい」

「望むところなのです!」


 戦闘狂シンシア戦闘狂アスラは仲良くなれると思う(2回目)。

 現地勇者組と最終試練は話を続けるようなので、俺はその場を離れ、料理メイド達が腕によりを掛けた料理を堪能することにした。


「そろそろ、デザートにするか。マリア、ケーキを一通り取ってくれ」

「はい、少々お待ちください」


 腹八分目となったので、食後のデザートとしてカットケーキを食べる。


「コレとコレ、それとコレを頼む」


 食べたケーキの中から、気に入った物を何個か選び、メイドに箱詰めしてもらう。

 そのまま会場を抜け出し、部屋に居る聖と凛の元に向かった。


「これ、ケーキの詰め合わせ、2人で食べてくれ」

「仁にぃ、ありがとう。うわぁ、凄く美味しそう」

「兄さん、ありがとうございます」


 見ての通り、聖と凛は今回のパーティーには参加していない。

 魔王が発動した『イヴィルブースト』の負荷により、体調が万全とは言えない聖は休息を優先し、凛はそんな聖と一緒に居ることを選んだからだ。


「気持ちは嬉しいけど、パーティーの主役が会場を離れて良かったの?」

「体調不良で参加できない聖の元に、お裾分けを持ってくるくらいなら大丈夫だろ」

「……まぁ、体調が良かったとしても、魔王討伐記念パーティーには参加しなかったと思うけどね。ほら、人格が違うとはいえ、僕は倒された魔王の側でもあるから」

「それは、犠牲者である聖が気にすることではないと思います」


 聖が妙なことを言い出したので、凛が間髪入れずに否定した。

 俺も、聖を『魔王の側』とするのは、大きな間違いだと思っている。


「そうだな。どちらかと言えば、救出されたお姫様ポジションで良いんじゃないか?」

「僕、お姫様役は似合わないと思うなぁ……」

「聖は王子様役の方が似合いますよね。ほら、1年の時の文化祭で……」

「その話は止めよう?」


 聖に懇願されて行かなかったが、2人が中学1年の時の文化祭で劇をやって、聖が王子様役、凛がお姫様役だったということだけは知っている。

 劇の男装が似合いすぎて、女子からラブレターをもらったことも知っている。


「お姫様云々はともかく、聖が参加していたら、魔王討伐記念だけではなく、聖救出記念も兼ねたパーティーになっただろうな。当然、主役の聖が乾杯の挨拶をすることになる」

「流石にそれは荷が重いかな。そもそも、会場に居る人達は、仁にぃの偉業を称えるために参加しているんでしょ?僕が挨拶しても、皆困惑するだけじゃない?」

「少なくとも、俺と凛が聖の無事を祝っているぞ」

「はい。聖が無事で良かったです」

「うん、2人が祝ってくれているのは、十分に伝わっているよ。ありがとう」


 聖は嬉しそうに、そして少し恥ずかしそうに笑っている。


「それじゃあ、俺はそろそろ戻るよ。聖は無理をせず、ゆっくり休むように」

「うん。仁にぃ、また明日」


 俺が戻った後も魔王討伐記念パーティーは続き、日付が変わる少し前にお開きとなった。


 時間も遅いので風呂に入るのは諦め、『清浄クリーン』だけ掛けて布団に入り、先に帰って寝ていたドーラ(竜形態)に抱きつく。

 今日は聖を無事に救出できて、色々と得る物も多い、良い1日だったと思う。お休み。


15章は本話で終了となります。

次回、登場人物紹介の後に16章が開始されます。

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