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第193話 上陸と未知の脅威

しばらく20日間隔更新になります。

多分、エイプリルフールも無理ですね……。

本編が遅れているのに、エイプリルフールにリソースは避けないですから。

 早朝、俺達はアースとアイルの小屋に集まった。


「じゃあ、念のためおさらいをするぞ」


 アースはそう言って、流れ島上陸計画についてもう一度説明をした。


 まず、俺達が目指すのは流れ島の後方、島鯨の尾の方向だ。

 島鯨の頭側は、普段は崖の様になっており、とてもじゃないが上陸には使えない。

 対して、尾の方は浅瀬になっており、波は多いが船で乗り込むことも可能だ。


 余談だが、頭側が崖になっているのは、海水が島の上に流れ込むのを防ぐ為である。

 また、嵐の日などは、普段よりゆっくり泳ぎ、頭を下げる様にするので、漂流者が乗り上げることもあるのだとか。

 島鯨の生態には謎が多い。


 上陸の作戦はシンプルだ。

 船に取り付けるのは、水面を滑るように進むための魔法の道具マジックアイテムだけで、軽量化の為回転式動力は一切載せない。

 普通の船では波に巻き込まれて沈没してしまうので、<風魔法>で勢いをつけて、水面を滑りながら飛んで進む。

 波が大きくても、軽量化した船でその上を進めば問題ないという理屈だ。


 2人が長い時間をかけ、色々と検証した結果らしいが、詳しく聞いても面白くなさそうだったので端折ってもらった。


「<風魔法>は任せても良いんだよな?」

「ああ、練習もしたからな」


 帆を壊さない範囲でギリギリまで強い風を出す練習である。


「仁さんの魔法は凄いですよ。すぐにコツを掴みましたし、出力も申し分ないです」

「アイルがそう言うなら、大丈夫そうだな。正直、アイルの<風魔法>だけだと、不安もあったからな」

「ええ、多く見積もって3割と言ったところでした。仁さんのおかげで、成功確率がかなり高くなりました。本当にありがとうございます」


 曰く、一番高い確率で3割程度だったそうだ。

 資金難も含め、相当にギリギリの計画だった様子。


「気にするな。こちらの目的も叶うんだからな」

「ああ、あの流れ島観光とか言う、正気じゃない目的か……」


 アースが失礼な事を言う。否定はしない。


「続けるぞ。流れ島の進路は毎年基本的に同じだ。嵐があると、遅れを取り戻そうと速く動くらしい。今は違うから、急な方向転換とか加速の心配は要らねえ。……まあ、流れ島に聞いた訳じゃねえから、絶対とは言い切れねえがな」


 島鯨との位置関係から、一度島鯨を追い越し、Uターンして背後から乗り込む形になる。

 本当は昼くらいの方が距離が近くなり、無駄な動きが必要なくなるのだが、その頃には観光客が押し寄せる為、無駄を承知で早朝に作戦を決行するとの事。

 『一番近くで島鯨を見れる=一番乗り込みやすい』なので、どうしようもない。


「何事も無ければ、これで流れ島に上陸できるはずだ……」


 ここに来てアースの顔が曇る。


「何か不安があるのか?」


 前にも聞いたが、特に問題のある計画には思えない。

 もちろん、異常事態イレギュラーは良くあることだが……。


「……ある」

「実は、仁さんには言っていませんでしたが、どうしても検証できない懸念があるのです」


 アースの肯定をアイルが引き継ぐ。


「正直に言って、このくらいの計画でしたら、冒険者でも立てられない事は無いのです。<風魔法>の使い手も居ますし、水面を滑るタイプの船も珍しい物ではありませんから」

「成功確率を上げる努力はしたが、基本的には一般的な技術の結晶だ」


 言われてみれば、上陸作戦は冒険者でも再現できそうな程にシンプルな物だった。

 <風魔法>の制御も楽ではないだろうが、不可能という訳でもない。


「しかし、私達の知る限り、流れ島に行こうと思って辿り着いた冒険者は居ないのです。流れ島から辿り着いた手紙にも、その旨は一切記されていませんでした」

「俺らは、流れ島には波の他に、上陸を拒む何か・・があると思っている」

「これは、検証のしようがありませんから、完全な賭けになります」

「はいはい、質問!」


 そこで、ミオが手を挙げて質問をした。


「どうして、今更その話をしたの?一昨日は言わなかったわよね?」

「「……」」


 アースとアイルはバツが悪そうな顔をする。


「……悪い。言って怖気づかれて援助を止められても困るからな。あえて言わなかった」

「騙すような事をして、本当に申し訳ありません」


 申し訳なさそうに2人が頭を下げる。


 先にも述べた通り、2人の計画は色々とギリギリだった。

 成功率が低かろうと2人は出発しただろう。しかし、成功率が上がるというのならば、それに越したことは無い。

 船が完成するまで、俺が援助を止めそうな事実を口に出せなかったという事か。


「成功確率の3割というのは、未知の何かを考慮に入れない値です。正直、分の悪い賭けだと思っています。そこで、改めて聞かせてください。僕達の船に乗りますか?」

「悪いが、乗らない場合でも金は返せねぇぞ。俺達、この作戦に全財産使ったからな」


 正直、今更そんな事を聞かれるとは思っていなかった。

 危険度が多少上下した程度で止めるくらいなら、最初から同行するなんて言わない。


「答えは変わらないから、資金を返す必要もないぞ。……未知の脅威か。面白くなって来たじゃないか」


 ワクワクを隠し切れずに笑みがこぼれる。

 マップ禁止、マジで楽しい。


「僕達としては助かりますが、本当に変わった人ですね……」

「そうだな。こんな変な奴は初めてだ」


 そこで、苦笑していたアースが、不安そうにマリアとミオを見る。


「アンタはそれで良いとして、その嬢ちゃんたちはどうするんだ?前提が変わったが、連れて行くのか?」

「私は仁様の居る場所ならどこへでも行きます」

「そんな面白そうな場所、ダメと言われても付いていくに決まってるわよ!」


 アースの問いに即答する2人。


「本気みたいだな。あんま、気は進まねぇが……」

「その気持ちだけ受け取っておくわ」

「私達は大丈夫です」

「まぁ、問題は無いだろ。多分、アンタらよりは生存能力が高いぞ?」


 生き残ろうと思えば、いくらでも手がある。

 異能の恩恵を受けられないアース、アイルとは比べ物にならない生存能力である。


「分かった。もう言わねえ」


 アースも諦めたのか、それ以上その話題を続けることはなく、再び計画の話に戻った。



 細々とした話を終えた後、俺達は海岸で出発の準備を始めた。


 2人が昨日の内にほとんど終わらせているので、大して時間もかからずに終わった。


「よし!これで準備完了だ」

「気の早い見物人が来ていますから、早めに出発しましょう」

「そうだな。面倒なことにならんうちにさっさと行くか」


 アイルの言うように、既に流れ島の見物人が数人、場所取りに来ている。


 俺が普通の観光客だったら、俺も見物の側に居たのだろう。

 しかし、俺はアグレッシブな観光客なので、流れ島に乗り込む方を選んだ。


「仁君、大丈夫多とは思いますが、気を付けて下さいね……」

「ああ、努力する」


 マップを禁止している時点で、『気を付ける』事に手を抜いているとも言える。

 逆に、マップがあるからこそ、『気を付ける』能力が落ちる可能性もある。


 マップ無しで感覚を研ぎ澄ませて勘を取り戻す。

 これが、今回のマップ禁止縛りの隠された目的である。


「マリアさん、ご主人様を任せましたわ」

「はい、任せてください」

《おみやげわすれずにー!》

「ドーラちゃんへのお土産は、ミオちゃんが担当するわね。何か良い物があると良いんだけど……」


 アースとアイルにとっては命を懸けた上陸作戦なのだが、こちらは緩い雰囲気である。


「じゃあ、出発だ」

「仁さん、<風魔法>をお願いします」

「任せろ」


 挨拶を終えた俺達は船に乗り込み、俺の<風魔法>を推進力として出航した。


 船は<風魔法>により徐々に加速していく。

 ある程度加速したところで、速度を一定に保つようにする。


「順調だな」

「ええ、やはり、仁さんに任せて正解でした」


 褒められても<風魔法>しか出ないよ?


「あ、流れ島が見えてきたわよ!」

「嬢ちゃん、目が良いな。船乗りの俺より先に気付くのかよ」

「えっへん!」


 ミオが自信満々にない胸を張る。


 基本的なステータスが違うからね。

 当然、俺もマリアも気づいているよ。マリアはマップ込みだけど……。


 流れ島こと島鯨さんは思ったよりも移動速度が速かった。

 速いのは分かるが、海上なのでイマイチ速度が測りにくい。


A:時速50km前後です。


 ありがとう。


 直径5kmの島があの速さで動いていたら、大きな波が発生していてもおかしくない。

 しかし、波が高いのは島鯨周辺だけで、ある程度離れるとほぼ影響は無くなる。

 以前、風災竜ペスに聞いた通り、この世界では災竜以外の災害は起きにくいようだ。


 正面からは海上に飛び出した崖しか見えない。


「仁さん、念のためもう少し距離を取って下さい」

「了解」


 俺達の船は、波の影響が完全に無くなる距離を保ち、島鯨とすれ違う。


 島鯨の横側も大部分は崖の様になっており、尾の方に行くにつれて崖が低くなっていく。

 崖の奥は木が生い茂っており、その奥までは見渡せない。

 ……どうして、鯨の上に木が生えているのだろう?


A:島鯨の背中に栄養豊富な苔の様な物が生えています。長い年月をかけ、硬化した苔が陸地になり、事実上の島となりました。


 何とも滅茶苦茶な生態である。

 まあ、島鯨と言っているが、島でもなければ鯨でもなく、鯨型の魔物だ。

 普通の鯨と同じように考えること自体が間違っているのか。


「仁さん、流れ島を越えましたので、左側に旋回して背後から近づいてください。波が高くなる直前で最大加速をします。そこはアースさんの指示に従ってください」

「分かった。タイミングは任せる」

「任せろ!それより、魔力は十分に残ってるか?」

「ああ、1%も減っていないから大丈夫だ」


 消費量よりも自然回復量の方が多いので、減った内に入らないと言う方が正しい。


「「…………」」


 おや?何故か2人が絶句しているな。

 まぁ、いいか。


 俺はアイルの指示通り、島鯨の背後を取るように旋回する。


 聞いていた通り、尾の方だけは崖ではなく、海岸になっているので上陸できそうだ。

 もちろん、その前には荒波を越える必要がある。

 そして、未知の脅威が迫るのもそこだろう。


 はい。こちらが未知の脅威さんのステータスです。


バジリスク

LV50

<石化の邪眼LV5>

称号:-の従魔

備考:見た物を石化させる大蜥蜴。


 ……気配を察知して凝視したら、森に隠れているのを見つけてしまったのだ。

 見つけてしまった以上、ステータスを見るのは癖の様なものだから仕方がない。


<石化の邪眼>

視認した対象(単体)に石化の状態異常を付与する。スキルレベルと距離、抵抗力により成功率は変わる。


 これで、島鯨に辿り着けない理由も分かってしまった。

 恐らく、バジリスクは島に近づく者を石化させているのだろう。波で揺れる船の上で石化したら、普通に考えて助からない。


 こうして、未知の脅威は出番が来る前に未知ではなくなった。

 折角、マップを禁止していたのに……。


 ところで、この『-の従魔』って何?


A:名前を持たない者がテイムした場合、このような表示になります。


 名前はないけど<魔物調教>を持っている?

 かなり特殊な生い立ちの奴が居るんだな。


《姿は隠しているけど、気配は隠しきれていないわね》

《気配と言うか、あれはもはや殺気ですね。仁様、排除いたしますか?》


 2人の言うように、『未知の脅威(笑)』は強い殺気を放っている。

 それも、明確に俺達に向けた殺気だ。


《いや、このままにしておこう。少なくとも、俺達に石化は効かないからな》

《2人は普通に石化すると思うけど?良いの?》


 アースとアイルはバジリスクの石化を防げるほどステータスが高くない。

 確実に石化する。


《良いとは言わないけど、出来ればバジリスクとは直接対決したい。明らかにワケアリな魔物だから、遠距離から排除するだけじゃ勿体ないだろ?》

《完全にイベント扱いね……》


 まさしくその通りである。

 荒波を越え、バジリスクと言う脅威を越え、俺達は島鯨に辿り着くのだ。

 事前のイベント潰しなんて、勿体ないにも程がある。


「おい!そろそろ加速を頼む!」

「ああ、しっかり掴まっていろよ!」


 念話をしている間に、加速のタイミングが来たようだ。

 俺は注意を促すと、<風魔法>の出力を上げた。


「うおぉ!凄え加速だな!」

「この加速なら、理論上は波を越えられるはずです!」



 船は加速を続け、とうとう島鯨が起こす波に到達した。

 次の瞬間、波をジャンプ台にして、船は大きく飛び上がった。

 すぐに着水、水面を滑るようにして再び波のジャンプ台でジャンプと繰り返す。

 まるでジェットコースターの様に上下に揺られる。


「うおおおおおお!」

「わああああああ!」

「きゃあああああ!」


 アースとアイル、ミオが絶叫する。

 ミオだけは笑顔であり、明らかに楽しんでいる。


《そんなに絶叫系が好きなら、ホラーハウスでも用意してやろうか?》

《や!め!て!》


 ミオの興奮が消え、真顔で拒否されてしまった。


 その後も三半規管の耐久試験が続き、波を半分ほど越えたところで変化があった。


「おい!アイル!どうしたんだ!」

「わか、りま、……せん。身……体が……動かな……い……」


 叫ぶアースの横で、アイルの身体が石になり始めた。

 石化は瞬く間に全身に広がり、恐怖の表情に固まった一体の石像が完成した。


「ま、まさか、これが……。道理で死体が上がらねえ訳だ……」


 石像となったアイルを見て、アースも何が起きたか理解したようだ。


 石像になり、船が転覆したら、その身は海の底に沈むことになる。

 当然、その死体がどこかに流れ着くことは無い。


「どうやら、俺もここまでみたいだな……」


 見れば、アースの身体も石化を始めている。

 アイルと同じように、石化が徐々に広がっていく。


「マリア、戻せ」

「はい」


 俺が声をかけると、マリアはアース、アイルの元へ走る。

 猫獣人だけあって、激しく揺れる船上でも全くバランスを崩さない。


 マリアは石化して船から落ちそうな2人を抱え、床に寝かせると魔法を発動した。


「『エリアアンチストーン』」


 <回復魔法>による範囲石化解除である。

 石化を使ってくる相手が少ないし、そもそも石化を喰らうヘマをしないので、実戦で使うところを見るのは初めてである。

 身内で行う訓練(ハードモード)では、タモさんが石化を使って来るので、石化している戦闘メイドを偶に見かける。石化解除アンチストーンの魔法も使われる。


「僕は……一体……?」

「お、俺は……石になったんじゃ……?」


 石化が解除された2人は、意識が朦朧としており、状況が把握できていない。


「石化の状態異常は治しました。危ないですから、早く船に掴まって下さい」

「お、おう」

「はい……」


 マリアが簡潔に伝えると、2人は指示に従った。


「俺達の事も石化させようとしているみたいだな」

「効かなくて焦っているわね」


 バジリスクは俺達も石化させようと頑張って睨み付けて来るが、一向に石化する様子を見せない為、オロオロしている。

 ずっと目を開きっぱなしにしていると、ドライアイになるから気を付けよう。


 そうこうしている内に、島鯨まであと少しと言うところまで迫った。

 アースとアイルの2人は、マリアの陰に上手く隠して、石化しないようにしている。


「そろそろ乗り上げるぞ!船にしっかり掴まれ!」


 アースが叫ぶのとほぼ同時に、船は今までで最も大きい波に乗り、大きく飛んだ。


-ガガガガガガガガガガガガガッ!!!-


 大きな音を立てながら、船は島鯨の岸へと上陸……というか打ち上げた。


「イテテテ……。お前ら、生きてるか?」

「は、はい……。僕は何とか……」


 2人にも目立った怪我とかはなさそうだ。


「よし、全員無事みたいだな」

「仁様、お疲れ様です」

「あー楽しかった!」

「なんでお前ら3人はケロッとしてるんだよ……」


 何事もなかったかのような俺達に、アースが呆れた様な目を向ける。

 ケロッとしている理由は、主にステータスのお陰ですね。後はスキルも。


「仁様、来ます」

「ああ、分かっている」


 どうやら、バジリスクは石化を諦め、直接排除することを選んだようだ。

 灰色の巨大(高さ1m、長さ3m)トカゲがノシノシ歩いてきた。


「コイツは……噂に聞くバジリスクって奴か?」

「記録にある情報と一致します。まさか、流れ島にこんな魔物が住み着いていたなんて……」

「誰も辿り着けねえワケだよ」


 2人が未知の脅威について、正しく理解してくれたところで、バジリスクも走り出した。


「GYRUUUUUUU!!!」


 見た目より遥かに速く動き、先頭に居たマリアに『ひっかく』攻撃を放った。

 次の瞬間、バジリスクはひっくり返っていた。


《仁様、殺しますか?》


 マリアはひっくり返ったバジリスクの上に立ち、柔らかそうな腹に剣を添えていた。

 俺が『やれ』と言ったら、良い感じに切り裂かれるのだろう。


《いや、その前に情報を取るから、動けなくしろ》

《承知いたしました》


 念話で伝えると、マリアは剣を一閃させた。

 筋を斬られたバジリスクの手と足から力が抜ける。


 俺はバジリスクに触れると、<生殺与奪ギブアンドテイクLV9>と<多重存在アバターLV7>を発動した。

 魂に直接触れ、バジリスクの持つ全ての情報を閲覧する。

 ふむふむ、なるほど。おお、そう言う事か……!


「もう良いぞ、やれ」


 他人の従魔で明確な敵なら、生かしておく理由も無いからな。


「はい」


 マリアが再度剣を一閃させると、バジリスクの全身から力が抜けた。

 俺が近くに居るから、血が飛び出る様な殺し方を避けたようだ。


「すげえな……。バジリスクを瞬殺かよ」

「本当に、仁さん達に同行してもらってよかったですね……」

「全くだ」


 恐らく、2人だけで来ていたら、石化の時点でどうしようもなくなっていただろう。

 覗いた記憶によると、バジリスクの目的は『この島への上陸を許さない』なので、2人が流れ島に辿り着けた可能性は非常に低い。


 余談だが、嵐などによる漂流者は条件を満たさない為無視するようだ。

 また、嵐の日は視界が遮られ、石化が上手く発動しないという問題もある。

 実は、雨の日に上陸を目論めば少しは確率が上がるのだが、普通は避けるので今まで誰も気付かなかったという。


「さて、じゃあ島の探索を始めようか」

「おっ宝!おっ宝!」


 宝島(仮)に到着し、俺とミオのテンションも上がっている。

 マリアは添えるだけ。


「待ってくれ!家族が先だ!」

「そうです!一刻も早く会わせてください!」


 そう言えば、2人の目的は家族との再会だったな。正直に言って忘れていた。


「冗談よ、冗談。もちろん、宝探しは人探しの後よ」

「…………」


 ミオは笑いながら冗談だと伝えたが、俺はノーコメントを貫いた。


「うん?ご主人様、冗談よね……?」

「…………」


 何かに気付いたミオに質問され、俺はそっと目を逸らした。

 はい。完全に探検モードになっていました。



 それから、俺達はアースとアイルの家族を探す為、島の中心部へと歩き始めた。


 過去流れ着いた手紙に、漂流者は島の中心部で生活をしていると記載があったそうだ。

 残念ながら具体的な場所については書かれていなかったが、中心部に向かって進めば、何らかの手掛かりはあるだろうという判断だ。


「ホント、何から何まで済まねえな……」

「ええ、頭が上がりません……」


 アースとアイルが申し訳なさそうに言う。


 理由は簡単。2人は森を進む装備が無かったので、俺達が貸したのである。

 上陸する事に全力を費やしていた2人は、上陸した後の事を考えていなかった。

 永住する気だったのは分かるが、少々無計画では?


「いや、最初はアイテムボックスもあったんだが、金欠で売っちまって……」

「金銭的な援助を受けた時に買っておけば良かったですね……」

「この2人、最初の印象から随分変わったわね……。ドジっ子?」


 男のドジっ子に需要は無い(真理)。


 俺達は全員、アドバンス商会謹製、森探検セットを装備している。

 <無限収納インベントリ>に何故か大量に入っていたのだ。


 森を少し進むと、事前情報の通り魔物が出没し始めた。マリアが瞬殺した。

 どれも弱い魔物だったので、身体を鍛えているアースと、一応魔法を使えるアイルなら倒せたとは思う。群れられたら厳しかったとも思う。


「これは、狩猟の跡だな」


 さらに進むと、森の中に人の手が入った痕跡が見つかり始めた。

 この頃から、アースとアイルの口数が少なくなり、目は真剣さを増していった。


「なんで、誰も居ないんだ……?」

 アースがボソリと呟いたのは、あと少しで島の中心部と言う地点だった。


 ここまで、人が居た痕跡はあるのに、人の気配が全くない。

 痕跡は増えていくのに、真新しい物がない。

 明らかな不自然が目に付いてくる。


「おい!集落があったぞ!」

「急ぎましょう!」


 森の中に開けた空間があり、人の集落を発見した2人が駆け出す。


「本当に、私達が付いて来て良かったわね」

「そうだな」


 2人には見えていないだろうが、ステータスの高い俺達には見えている。

 この先の集落で何が起きたのか。


 俺達が後を追うと、予想通り2人は集落の中で崩れ落ち、呆然としていた。


 集落の中にあったのは、無残に破壊された石像だけだった。

 大半が砕け、原形を留めていないが、人型であったことだけは分かる。

 1体2体ではなく、10体分以上と言う事も分かる。


 何も知らなければ、不気味な石像と言うだけだ。

 しかし、アースもアイルも、この島の石像と言うだけで何が起きたか理解できてしまった。


 この集落は、バジリスクに滅ぼされていたのだ。

ジャ○プの科学漫画にハマっていることと、石化が話のメインになった事は関係がありません。

次回、『石化解除と鬼人の勇者』お楽しみに!

*予告の内容は事前の告知なく変更になる場合がございます。

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マグコミ様にてコミカライズ連載中
コミカライズ
― 新着の感想 ―
ごめんなさい、下記の所、某戦闘民族の声をやられている、野〇雅子さんの声で脳内再生されました(;^ω^) 「答えは変わらないから、資金を返す必要もないぞ。……未知の脅威か。面白くなって来たじゃないか」…
[気になる点] 船に乗せてもらう条件は資金を出すことと材料の提供であって、家族と合わせることではないので 『待ってくれ家族が先だ』というセリフはおかしくありませんか?
[気になる点] 「おや?何故か2人が絶句しているな。」 こんなこというキャラだったかな?
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