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第192話 祭り巡りとフリマ

のんびり回です。

弱めのイベントが多いので、タイトルに難儀しました。最終的に適当に決めました。

 見事勝ち抜き戦10連勝を達成した俺には、大会運営から豪華賞品が贈られた。


「これ何だ?」

「協賛店の割引チケットです。祭典週間フェスティバル期間中、対象店舗の商品が全て20%OFFになります」


 豪華……かなぁ……?

 いや、参加無料のイベントで貰える賞品としては豪華と言えるか。

 割引なら、利益は多少減るが、別途予算を割く必要が無いから色々と楽なんだよね。


「有難く使わせてもらう」

「いや、大盛り上がりでこちらとしても大満足です。是非、祭りを楽しんでいってください」


 こうして、イベント会場を後にした俺は、外で待っていた5人と合流する。


「仁君、おめでとうございます……」

《おめでとー!》

「お疲れ様です。どうぞ、お飲み物になります」

「お、サンキュー。あ、これはミオが預かってくれ」


 マリアから渡された飲み物を飲み、ミオに割引チケットを手渡す。


「何これ?おー!お祭りって色々と割高だから助かるわ」

「本当に助かりますわ」


 割高な物を色々と食べる気満々のセラも喜ぶ。

 ミオ曰く、お金はあるけど、節約できる部分では節約したいそうだ。主婦かな?


 そして、そんな和気あいあいとした俺達に近づく二つの影……。


 無駄に勿体ぶった言い方をしたが、ソルとルーナの2人である。


「貴様、我の部下として、我が国に来る気はないか?」


 俺達の前に立ったソルが、いきなりそんな事を口にした。

 喋り方で予想は付いていたが、どこぞの国のお偉いさんだったようだ。


「我が国?」

「うむ。我が名はソル・ヘラクレス。ここより東、ヘラクレス帝国の皇帝である」


 お偉いさんはお偉いさんだが、皇帝トップだとは思わなかったよ。

 試合も終わった事だし、折角だからステータスを覗いてみよう。


名前:ソル・ヘラクレス

LV201

性別:女

年齢:19

種族:人間

称号:超越者、ヘラクレス帝国皇帝

スキル:

<一子相伝LV-><影雄演舞LV-><超越LV10>


 20歳未満でレベル200オーバーと言うのは珍しいな(ウチのパーティは除く)。

 そして、当たり前の様に『超越者』の称号を持っている……。


 ああ、スキルは多すぎてユニーク級以外を省略したよ。

 魔法系、技能系は0個だけど、武術系、身体系は嫌になる程大量にあったから。

 それも、軒並み高レベルと言うオマケ付きだ。


 一応、強さの秘訣も理解し、納得した。


<一子相伝>

武術に関わるスキル、および所有者の知識を保持できる。名前に反して継承先は指定できず、所有者の死亡時にランダムに移動する。武術に関する知識を保持するが、記憶を保持する訳ではない。


<影雄演舞>

武器を浮かせて操作する事ができる。予め型を登録しておくことで、自由に再現することができる。型ではなく本人を登録することで、仮初めの自我を持った影として再現できる。ただし、影が攻撃を受けた場合、本人にも同じダメージが入る。


 寄生……継承属性付きの<一子相伝>により、高レベルの武術系スキルを引き継ぎ、その技術を<影雄演舞>で余すところなく再現する。

 相性の良いスキルによる見事なコンボである。

 なお、<影雄演舞>は継承されるスキルに入っていないので、完全にソル限定の構成だ。


 さて、色々と分かってスッキリしたところで、ソルのお誘いを丁重に断ろうか。


「悪いが、俺は誰かに仕える気はないんだ」

「そうであろうな。我も言ってみただけだ。貴様の様な強者が、皇帝と言う肩書きだけで首を垂れるとは思っておらん。ルーナよ」

「はい。どうぞこちらをお納めください」


 呼ばれたルーナが懐から封筒を取り出し、俺に手渡してきた。


「これは?」

「ヘラクレス帝国への招待状です。ソル様は自身の認めた強者を国に招きます」

「我に仕えるかどうかは、我が国を見てから決めるが良い」

「日時の指定、同行者の制限などはございません。お越しの際に招待状をお見せ下さい」


 ある種のフリーパスみたいな物か。

 アルタ、後でヘラクレス帝国について教えてくれ。


A:はい。


「ルーナよ。武器の件も伝えよ」

「はい。ジン様、ソル様は武器の蒐集をしておられます」


 ソルの戦い方を考えれば、むしろ集めていない方がおかしいとすら言える。

 高レア度装備ならば、<影雄演舞>の負荷にも耐えられるし、高レア度装備特有の特殊能力があれば、更に戦略の幅が広がる。

 ソルの本気は、模擬戦用の武器では到底発揮できないのだ。


「お売りになる予定の業物があれば、是非買い取らせていただきたく思います。今は手持ちが少ないので、帝国にお越しの際になりますが……」


 余談だが、<影雄演舞>によって破壊された模擬戦用武器は、ルーナが弁償していた。

 あれでも魔法の道具マジックアイテムの武器だから、意外とお値段が高い。それを20個以上壊したら、お財布に大ダメージを受けるのは必至である。


「今のところ、売る予定はないな」

「はい。一応、お伝えだけさせていただきました。ソル様は、強者と武器に興味がある。そう覚えておいていただければ幸いです」


 戦闘狂バトルジャンキーらしい興味の方向性ですね。


「また、ソル様は強者と武器を探す為の遠征に出る事があります。その為、ヘラクレス帝国に不在となる帰還がある事、ご承知おき下さい。大体、一月以内ですので、お待ちいただけると幸いです。本日もイズモ和国へ向かった帰りで、一月以内の遠征でした」

「強者はともかく、武器の方は魔剣鍛冶師が不在であったがな」


 不満そうに言うソル。

 イズモ和国の魔剣鍛冶師って、ウチの聖魔鍛冶師ミミの事じゃありませんか?


A:はい。


 確か、ミミは元々魔剣の鍛冶師として有名だったはずだ。

 武器の蒐集者からしてみれば、見逃せない人材なのは間違いないだろう。


 余計な事を言っても話が拗れるので、お口にチャックである。


「適当に立ち寄った余興で、貴様の様な強者を見つけられたことだけは僥倖であった。気が向いたら、我が国に来るが良い」

「それでは、失礼いたします」


 こうして、伝えるだけ伝えた2人は去って行った。



 俺が参加を希望していた模擬戦イベントを終えたので、今後は他の皆の希望に従ってお祭りを楽しむことにした。

 まずはセラとドーラの希望。『大食い大会』である。


「さあ、残り時間もあとわずか!果たして、勝つのはセラ選手かドーラ選手か!?」

「聞けば、2人は旅の同行者と言う事です。食費が凄いことになりそうですね」


 2人の司会がセラとドーラの一騎打ちを実況する。

 当初の懸念通り、セラとドーラに勝てる選手はおらず、いつの間にか2人の一騎打ちになってしまった。

 厳密に言えば他の選手もいるが、2人にペースを乱されたせいで、手が動いていない。


 セラは元々大食いだったから問題はないが、ドーラはここ最近非常に良く食べる。

 気になってアルタに聞いた所、ドーラの進化には多くのエネルギーが必要になる為、食べる量も自然と増えたと言う。それにしても多い気はするが……。

 進化が終われば食欲も落ち着くそうなので、今はそれほど心配していない。


 つまり、セラといい勝負が出来るのは今の内だけという事だ。


 余談だが、ドーラも『兵糧玉エナジーボール』を食べ始めたので、食費は問題ない。


「一体、ドーラ選手のどこにあれだけ入るのか!?全く理解できません!」

「セラ選手は恐らく、摂取した栄養が胸に行っているのでしょう。見事です」


 司会の1人がナチュラルにセクハラ発言している。


「それにしても、お二人ともテーブルの上が綺麗ですね。大食い大会だと、多かれ少なかれ汚れるものなのですが……。セラ選手は上品な食べ方ですので理解できますが、ドーラ選手のテーブルに落ちる前にキャッチするというのは、私も初めて見ました」


 セクハラ司会者は真面目なコメントも出来るのか。


 セラは仮にも元貴族令嬢と言う事で、食事のマナーは覚えている。

 早食いだからと言って、汚らしい食べ方はしないし、アレで味わって食べているそうだ。

 ドーラの方は綺麗に食べる習慣が無いからこぼすのは仕方ないが、食べ物を無駄にするのは嫌だという事で、食べカスが落ちる前にキャッチしている。

 ある意味では2人共ハンデを背負っている訳だが、それでもその速さは圧倒的である。


「さあ!食べたホットドッグの数は、セラ選手が256個!ドーラ選手が254個!このままセラ選手が勝つのか!ドーラ選手が追い付くのか!後1分、最後の勝負です!」

「ホットドッグではなく、ウインナー単体の方が男性受けは良かったでしょうね。残念です」


 真面目なコメントの後にセクハラ発言で落とす……。

 このセクハラ司会者、どうにか出来ないかな?


 あ、大会運営っぽい人がセクハラ司会者をどこかに連れて行った。

 流石に度を越えていたのだろう。


 その隙にドーラとセラの差はホットドッグ1つまで縮まっていた。

 ドーラの食べる速度は最初の方と比べるとアップしている気がする。


 しかし、ドーラの奮闘虚しく、追いつく前に無情にもタイムアップとなった。


「ここで試合終了!大食い大会、優勝はセラ選手です!」

「やりましたわ!」

《くやしー!》


 見事優勝したセラには希少で高級な食材のセットが贈られ、惜しくも準優勝だったドーラには希少ではないが高級な食材のセットが贈られた。

 見事に食材のセットばかりである。


「ただいま帰りましたわ」

《ただいまー!》


 表彰式を終えた2人が戻ってきた。

 食材セットは2つともセラが担いでいる。


「おう、お疲れー」

「お疲れ様です……。相変わらず、凄い食事量ですね……」


 メンバーを大食い順に並べるとセラとドーラの大食い組、俺とマリアの普通組、さくらとミオの小食組の順になる。

 さくらは年齢の割には小食だ。栄養不足と言う事もないようだが……。


「見ているだけでお腹いっぱいになりますよねー」

「はい……。昼食は少なめにしようと思います……」

「右に同じくです」


 小食組は大食い大会を見ただけで食事量が減るらしい。

 俺はむしろ、腹が減ってきたくらいなのだが……。


「2人はしっかりと楽しめたか?」

《まけてくやしー!でもおいしかったー!》

「私も楽しめましたわ。それにしても、最後は危なかったですわ。ドーラさんの食べる速度が上がりましたから」

「何か理由があるのか?」


 それは俺も気になっていたので、ドーラに尋ねてみた。


《えっとね。いっぱい食べる食べかたと、はやく食べる食べかたがちがうってわかったの》

「なるほど、ついにドーラさんもその領域に入ったのですわね。そうですわ。時間ギリギリになって、余裕があるのならば、食べ方を切り替えた方が効率的ですわ。わたくしは今回、一定のペースで食べる事を自ら枷にしていたので使いませんでしたが」

《つぎはもっとうまく食べるから、セラにもまけないよー!》

「そう簡単には負けませんわよ。本気のわたくしには、他にも10以上の戦略たべかたがありますから」

「……………………」


 いや、大食いバトル漫画みたいなやり取りをされても困るんだけど……。


「そうだ!賞品の食材セット見せて!」

「ええ、どうぞ」


 ミオに促され、セラが食材セットを降ろして開ける。


「うんうん、中々に良い物が揃っているわね!」

「どれも高級食材のようですし、ミオさんに調理して頂きましょう」

《ミオー!おねがーい!》

「よし!ミオちゃんに任せなさい!」


 ミオが張り切っているので、今日の夕食は豪勢になりそうだ。

 協賛店の割引チケットもあるので、現地の食材には事欠かないだろう。



 お次はさくらの希望であるフリーマーケットへと向かった。


「アルタから、探していた本が売られていると教えてもらいました……」


 さくら曰く、1巻から6巻まであり、最終6巻だけ持っていない本が売っているそうだ。

 続きが気になって仕方がないとの事。


「言ってくれればさくらの都合を優先したのに……。売り切れたらどうするんだ?」

「そうですわ。大食い大会はまだ機会があったのですわ」


 俺の武闘大会もセラ達の大食い大会も、一度きりのイベントではない。

 売り切れる可能性があるさくらの方を優先して問題なかった。


「大丈夫です……。その本が売られ始めたのは、料理大会が終わる頃でしたから……」

「それなら良いんだけど……。まだ、売れていないのか?」


A:売れていません。


 フリーマーケットの会場はかなり広い公園だった。

 参加者は思い思いの場所に商品を陳列している。


 商品を見て回るのは後回しにして、さくらのお目当てのブツへと一直線で進む。


 目的地には、カートに乗った大量の本が置いてあった。

 さくらは迷わず一冊の本を手に取り、店主のおじさんに渡した。


「これ、下さい……」

「あいよ。1000ゴールドだな」


 この世界、印刷技術を伝えた日本人が居るようで、本はそれなりに普及している。

 しかし、普及し始めたのが比較的最近の為、それ以前の本は貴重なのである。

 印刷はあるが、複製の手段はない。印刷用に起こし直すのも手間なので、ベストセラーでもなければ、一点物と言うのも珍しくは無いのだ。

 これが一点物の希少本だったら、桁が2つ3つ上がってもおかしくはない。


 無事に購入を終えたさくらが、安堵の息を漏らす。


「無事に買えました……。装丁も綺麗なので、本棚に置いても映えるんですよ……」


 余談だが、屋敷の自室に本棚を置いているのはさくら、ミオ、マリアの3名。

 さくらは物語中心、ミオはレシピ本、マリアは俺の元の世界の情報を書き記しているそうだ。内2名が買うのではなく、書く側というのも面白い。


「俺も知的さをアピールするために本棚でも用意するかな。もしくは眼鏡」

「眼鏡=知的って言うのも、随分と古いイメージよね。そもそもご主人様、知的なの?」


 ミオに言われ、改めて考えてみる。


「……学校の成績は別に悪くないぞ。選択問題は全問正解だし」

「ご主人様に選択問題とか、相手が悪いとしか言えないわね。記述問題は?」

「それなりは取っていたと思う。……やっぱり、知的アピールは止めておこう」


 そもそも、親友にガチのインテリが居たから、『知的』という単語のハードルが高いのだ。

 俺は、俺の認める『知的』に達していない。大人しく諦めよう。


「マリア。本棚は用意しなくて良いからな」

「……はい」


 マリアの歯切れが悪い。

 やはり、俺が口にした瞬間に念話で準備を進めていたのだろう。


A:していました。


「あ、でもご主人様の眼鏡姿は見てみたいかも。さくら様もそう思いません?」

「はい……。少し見てみたいです……」

「……マリア、眼鏡を準備させてくれ。度は入れるなよ」

「はい!」


 女子に眼鏡姿を見たいと言われたら、嫌とは言えないよな。


 この後、アドバンス商会の主力商品に、眼鏡が追加されたのは別のお話である。



 さくらの目的を達成したところで、このままフリーマーケットに留まる事にした。

 順番的にはマリアの希望の場所に行くべきなのだが、こういう時にマリアは自己主張をしない。今回も希望は無いので、他の人の行きたい場所で良いと言っていた。


 という訳で、丁度お昼時なので、適当に屋台で食べ物を買いながら適当に歩き回る。


「2人共、まだ食べられるんですね……」


 大食い大会であれだけ食べたセラとドーラの2人は、普通に1人前以上の食べ物を持っている。さくら、ミオは先程言っていた通り、少な目だというのに……。


「時間制限が来ただけで、満腹になった訳ではないのですわ!」

《まだまだ入るー!》

「えぇ……」


 さくらも引いているし、正直俺も引いている。

 時間制ではなく、量で勝負が決まる場合、相当に長引いたのだろう。


「気になっていたんだけど、2人の胃袋に底ってないの?」

「最近は『兵糧玉エナジーボール』抜きだと、満腹になる事はほぼありませんわ」

《ドーラもー!》

「マジかー……」


 驚きの回答にミオも引いている。

 これで、引いていないのはマリアだけである。

 マリア、俺に関係ない事では引いたり動揺したりする姿を見かけないから……。


「そう考えると、早い段階でセラを満腹に出来る『兵糧玉エナジーボール』の魔法を創ってもらったのは正解だったな」

「流石、仁様の慧眼とさくら様のお力です」


 マリアがすかさずヨイショしてきた。


「ええ、本当に助かっていますわ。ただ、最近はご主人様の『兵糧玉エナジーボール』を食べる機会が減っているのが残念でなりませんわ」


 昔はMPの多い俺がほぼ専属で作っていたが、今は配下のステータスにも十分な余裕がある為、『兵糧玉エナジーボール』を作る機会は相当に減った。


《ドーラも、ごしゅじんさまが作ったのがいちばんすきー!》

「え?『兵糧玉エナジーボール』って味があるのか?」


 俺は『兵糧玉エナジーボール』を食べていないので、どんな味なのか知らない。


「もちろん、ありますわよ。美味くもなく、不味くもない不思議な味ですわね。ただ、魔力の提供者によって、効果が発揮された時に感じるものが違うのですわ。ご主人様のは……、安心するようなものを感じますわ」

《すきー!》


 『兵糧玉エナジーボール』は魔力を栄養に変える魔法だ。

 出来た物が、変換前の性質に影響されるのは考えられない事ではない。


「そう言われると味が気になるけど、自分の作った『兵糧玉エナジーボール』を食べても意味がないんだよな……」


 実は、『兵糧玉エナジーボール』が効果を発揮するには、『他人の魔力で作った物』という条件が付く。

 自分で作った物を食べても、栄養素にならないのである。

 だからこそ、セラは自分の魔力で『兵糧玉エナジーボール』を作らない。


「今度、皆で『兵糧玉エナジーボール』の交換会でもしてみるか?輪になって、隣の人が作った『兵糧玉エナジーボール』を食べるんだ。もしくは、音楽を流して、止まった時に持っていたヤツを食べる」

「クリスマスのプレゼント交換かな?」


 正直、俺もそれをイメージして言ったところがある。


「仁様、栄養素を低くするようにお気を付け下さい」

「ああ、それは分かっている」


 マリアに言われるまでもない。

 そのままの『兵糧玉エナジーボール』は一般人が食べるものではない。

 確か、1粒で成人20人分の栄養素が取れたはずだ。


 栄養素は任意で変えられるので、出来るだけ低くして作れば大丈夫だろう。

 一番低くすれば、どの程度になるのかな?


A:一番低くして、小食の女性が1回の食事で摂取する程度です。さくらの食事1回分、と置き換えてもらって構いません。


 それでも、軽く一食分にはなるのか。


「『兵糧玉エナジーボール』だけで一食を済ませるのはお勧めできないわね。栄養を摂るだけじゃなくて、噛むという行為自体にも意味があるから」

わたくし達も、『兵糧玉エナジーボール』だけで1食済ませる事はほとんどしませんわ。やはり、温かい食事が一番ですわ」

「そうだな。やるとしても1回限りにしよう」


 『兵糧玉エナジーボール』はあくまでも不足分を補う物であり、主食にする物ではない。味が気になるなら、交換会は1回やるだけで良い。


 この時の俺は気付いていなかった。

 1回だけ、俺の作った『兵糧玉エナジーボール』を入手できる機会がある。それが意味する事を……。

 後に、参加者が配下1000人以上となった、『兵糧玉エナジーボール』交換会は、こんな些細な会話から始まったのである。



 軽く腹を満たしたところで、本格的にフリーマーケットを見て回る。


 大抵の場合、俺がフリーマーケットなんかに行くと掘り出し物があるのだが、今日は不思議と全く見つからなかった。

 仕方がないので、良く分からない置物を数点購入した。

 多分、招き猫とか狸の置物の親戚みたいな奴。小さいので、適当に棚に飾れる。


「ご主人様、話に脈略がないわよ?」

「いや、折角来たんだし、何か買いたいだろ?掘り出し物があったら迷わず買うけど、無かったら適当な物を買うしかないだろ?」

「いくら何でも、適当過ぎない?本当に欲しかったの?」

「……………………」


 本当に欲しかった訳では無いので、コメントは出来ない。


「すいません。同じものを下さい」


 ミオと話をしている間に、マリアが同じものを購入していた。


「……マリアちゃんは、ある意味本気で欲しがっているわね。ご主人様とお揃いだから」

「そうだな……」


 マリアの部屋の棚には、俺の棚と同じものが多く見られる。

 マリアの部屋に入ると、一瞬自分の部屋と錯覚することもあるくらいだ。

 先にも述べた本棚等、多少の違いはあるが、基本的なレイアウトが酷似している。


 それにしても、ここまで掘り出し物が無いのも珍しいな……。

 アルタ、何か知っているか?


A:ネタバレ防止との事でしたので、マスターが関わるか不明な掘り出し物をニノに回収させておきました。それなりに貴重な物も多く、確保するべきだと判断いたしました。


 アルタの仕業だったのか……。

 そりゃあ、<千里眼システムウィンドウ>を使って回収されたら、掘り出し物なんて残る訳が無いよな。

 まさか、それが理由でニノが同行を断ったのか?もしそうなら、悪い事をしたな……。


A:いいえ。同行を断った後、ニノが仕事を要求してきたので頼みました。本当は、別の者を呼ぶ予定でした。


 ニノ、仕事中毒ワーカホリックになってない?大丈夫?


A:メイドの休暇は義務なので問題ありません。メイド総長のルセアが休むのも仕事の内、と言い聞かせています。


 おお、ホワイト職場。

 言い聞かせないと駄目な点と、結局は仕事である事に変わりがない点は気になるが……。

 ……アレ?よく考えたら、マリアが休んでいるところをあまり見かけないんだが……。


「仁様、私は<超休息ディープレスト>と<快眠快起レストトゥスタンド>を併用し、短時間で効率的に休んでおりますので、全く問題はありません。それより、仁様の側に居られることの方が重要です」


 おお、ブラック職場。

 何気に初耳のユニーク級っぽいスキルまで使って休んでいる。

 真の仕事中毒ワーカホリックはマリアだったか……。


「休むことをスキル頼りにするのもどうかと思うが……」

「……長く休もうとすると、仁様の事が気になって逆に眠れないのです」

「重症だな……。無理はするなよ」

「はい」


 マリアに関しては、色々な意味で好きにさせてやるのが良いのかもしれない。



 フリーマーケットを満足するまで見て回り、優先参加権でイベントを荒らし回った後、俺達は島外れの海岸に来た。

 予定では、明日の朝一で流れ島に向かうとの事なので、最後の下見の様なものだ。


 そこには、俺が思っていたよりも立派な帆船があった。

 周囲にある大量の船とサイズは同程度だが、基礎の造りや装備は全く違う。


A:ここにあるのは試作機であり、本命は別の場所で作成されていました。


 通りで、今まで見かけなかったわけだ。


「明日の予定は問題なさそうか?」

「ん?ああ、アンタらか。見ての通り、問題はねえよ」


 作業中の海の男アースに尋ねると、頼もしい答えが返ってきた。

 作業中といっても準備は既に終わっており、点検を繰り返しているだけのようだ。


「おや、貴方達も来ていたのですね」


 もう1人のインテリ眼鏡も俺達の存在に気付く。

 ええと、名前は……アイルと言うそうだ。


「明日の予定に変更がないか、確認に来たんだ」

「貴方達のおかげで、無事に船も完成しました。予定よりも良い物が出来ましたが、一回の航海で廃棄する前提と言うのが少し勿体ないですね」


 2人は流れ島から帰る事を考えていなかった。

 当然、船にも帰るための機能は含まれていない。


「今更な話だな。何もかもを投げ捨ててでも、あの島に行くと決めたはずだろ?」

「勿論です。それだけ、良い物が出来たというただの自画自賛ですよ」


 どんなに良い物が出来たとしても、2人にとっては手段でしかなく、目的ではない。


「なあ、事が済んだ後、要らなければその船を俺にくれないか?」

「はあ?何を言っているんだ?」

「家族を連れて戻れるとしても、その船はもう要らないんだろ?大破していなかったら、記念品として俺にくれ」


 折角、良い出来の船なのだ。流れ島に放置するのは勿体ない。

 だったら、俺がお持ち帰りした方が良いというものだ。


「俺は構わないが……、正気か?」


 正気です。


「金銭的な支援もされていますし、僕も構いませんよ。どうやって持ち帰るつもりなのか、気になる点ではありますが……」

「それは見てのお楽しみだな」


 こうして、俺は行きの船と、帰りに船を手に入れることになった。


ヘラクレス帝国には行きません(断言)。


次回は3/10日です。ただでさえ遅れているのに、9日しかないのは無理です。

恨み言は、2月だけ日にちを少なくした人に言ってください(謎の責任転嫁)。

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マグコミ様にてコミカライズ連載中
コミカライズ
― 新着の感想 ―
[一言] 王政ローマ2代目国王ヌマ・ポンピリウスさんのせいか
[良い点] 主人公たちが充実した冒険をしているのが表現されていて読んでいて安心できました。 [気になる点] 最近は少し更新ペースが伸びていて話の流れが少し忘れ気味で読み返すこともたまにありますが、楽…
[一言] 更新スピードは落ちてますが内容、量は増えているので満足してます。 10日楽しみにしてるのでよろしくお願いします。
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