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第187話 勇者捜索と水の都

連載再開です。

ただ、まだ調子が戻っておらず、亀の歩み執筆の為、不定期(10日、20日間隔)の更新となります。

本当は、章が終わっていない状態で投稿するのは不安ですが、プロットもどきは出来ているので、投稿していきたいと思います。

 真紅帝国の旅行から帰還した次の日。

 いつもより短いのんびりタイムを終えた俺は、最後の勇者捜索のミーティングをする為にパーティメンバーを集めた。


「あれ……?ドーラちゃんとマリアちゃんは来ていないんですか……?」


 さくらが不思議そうに尋ねてくる。

 現在、2人は自室で休息中だ。


「ああ、昨日の全力モフモフがまだ効いているみたいだな」


 のんびりタイムには必ずと言って良いほど、配下の獣人や獣達をモフモフしている。

 今回、のんびりタイムが普段より短かったので、久しぶりに全力でモフモフした。


 その結果、モフモフ参加者達は全員が耐えきれずにダウンしてしまった。

 マリアやドーラですら一夜明けても起き上がれないくらいなので、他のモフモフ係達は明日くらいまでまともに行動できないだろう。


 うん。正直ちょっとやり過ぎた。

 普段なら限界が近い子は自己申告してくれるんだけど、今回は誰も何も言わなかったので、止め時を見失っていたようだ。

 先程、マリアに聞いたのだが、俺の全力モフモフには依存性があるそうで、ダウンするまで止める事が出来なかったらしい。


「あの2人でも耐えられないって、どれだけご主人様のモフモフは強力なのかしら?」

「自分が獣人だったらと思うと、ゾッとしますわね」


 ミオとセラが恐れおののく。

 当然、セラが獣人だったら、モフモフの対象となっていただろう。


「まあ、そう言う訳で、とりあえずこのメンバーだけでミーティングだ」


 2人の体力なら、午後から出発にすれば大丈夫だと思う。

 2人は行き先に関して、あまりコメントはしてこないだろうし……。


「えっと、最後の<勇者>スキルの持ち主を探すんですよね……?」

「ご主人様、何かアテはあるの?」


 ミオの問いに対し、俺は自信満々に頷く。


「ああ、俺にしか出来ない、効率的な捜索方法だ」

「効率的……あ、分かった!飛行できる配下を使って、マップを埋めるローラー作戦だ!」


 確かにそれは悪くないアイデアだ。俺も考えなかったわけではない。

 ネタバレ防止のためにやらないが、その気になれば世界中のマップを丸裸にすることも出来るだろう。

 <勇者>捜索で手段を選ばないとなれば、有効ではある。


「良い手だが、『効率的』とは言えないな。見つけられなかった人の労力が無駄になる」

「闇雲に探し回るよりは良いと思うんだけど……」

「ああ、闇雲に探すのは駄目だな。なら、闇雲でなければ良い。そこで、これを使う」


 俺は<無限収納インベントリ>から、地図を取り出し、広げた。


「この世界の地図ですわね」

「この精度の癖に、結構高いのよね」


 この世界、かなり大雑把な物しかないけど、一応地図はあるんですよ。

 地球と同じ、球体を開いて長方形にしたタイプの地図だ。


 俺は、壁に掛けてあるコルクボードに地図を張りつける。


「仁君、何をするつもりですか……?」

「ま、まさか……」


 ミオは何かに気付いてしまったようだ。


「そして、これを使う」


 同じく、<無限収納インベントリ>から取り出したのは、ダーツだ。


「地図に向けてダーツを投げ、当たった場所に行く」

「やっぱり!ダーツの旅だ!」


 予想が当たり、ミオが叫ぶ。


「なるほど、ご主人様の運に任せるんですわね」

「確かに仁君にしか出来ません……。そんな無茶苦茶な方法……」


 セラとさくらも理解したようだ。


「ご主人様。世界地図に向けて適当ダーツ投げたら、大半は海に刺さるって知ってる?」

「え?今まで、一度もそんな経験はないけど?」

「元の世界でもやった事あるんかい!」


 ミオの軽快なツッコミ。

 もちろん、やった事あります。


「大丈夫だって。この方法、それなりに実績あるから」

「実績あるんかい!」

「古代遺跡とか、埋蔵金とか……」


 ダーツ抜きにしても、昔から探し物は得意だったんだよな。


「……ご主人様、またその内、元の世界のお話を聞かせてね?絶対、面白いはずだから」

「仁君の元の世界の話なら、私も聞きたいです……」

「マリアさんがここに居たら、絶対に聞きたがるでしょうね」


 ミオに懇願され、いずれ昔話をすることを約束することになった。


「さて、それじゃあ、投げるか」

「もし、海に刺さったらどうするの?」


 ミオが不思議な事を聞いてきた。


「その場所に向かうに決まっているだろ?」


 今まで、海に刺さった事は無いが、海に刺さったらその海域に向かうのは当然だ。


「<勇者>を探しているのに?」

「海に<勇者>が居ないって根拠も無いだろ?」

「流石に居ないでしょ……」

「船で移動中の可能性もありますわよ?」

「人魚の国の様な場所にいる可能性もありますよね……」


 セラとさくらのナイスフォロー。


「そう言う事だ。とりあえず、投げてから考えよう」


 俺は狙いを付けないように、目を閉じて世界地図の方へダーツを投げる。

 トスッっと音がしたのを確認してから目を開ける。


「海! ……じゃない、よく見たら島に刺さっているわね」

「あんな米粒みたいな島に良く当たりましたわね」


 俺の投げたダーツは、海に囲まれた小さな島に当たっていた。

 アルタ、情報を教えてくれ。


A:国としては、複数の島々からなる海洋国家、パジェル王国です。当たったのは、観光地として有名なラティス島と言う島で、別名が『水の都』です。


「水の都!観光好きとしては、絶対に行くべき土地だな!」

「ご主人様、目的忘れてない?」


 テンションの上がった俺を見て、ミオが釘を刺してくる。


「え、観こ……、うん、<勇者>スキルの持ち主を探すんだよな。大丈夫、覚えている」

「今、絶対に観光って言おうとしてた……」

「ソンナコトナイサ」


 さっさと<勇者>持ちを探して、空いた時間で観光だな。


「それで、この国にはどうやって行くんですの?」


 セラが地図を見ながら尋ねてきた。

 俺も地図を見て移動ルートを検討してみる。


「俺と関わりのある国で、一番近いのはイズモ和国だな。他の国と陸地で接していないから、正規の手順で入るとなると、船で向かうことになるか」


A:イズモ和国から定期的に船が出ていますが、直行ではないので、1週間程かかります。


「期限1カ月で移動に1週間は長すぎる。非正規ルートで行くか」

「空飛んで行くの?」

「それが一番楽だろうな。問題は入国関係だが……」


 この世界では、基本的に国を跨ぐ場合に通行料が必要となる。

 非正規でこっそり入国する場合、その通行料を払わない事になる。観光を楽しむのに、その国に対する義務を怠るというのは、少々よろしくない。


A:パジェル王国では、基本的に通行料を取っていません。外国の船が港を使用する際、使用料が徴収されるシステムになっています。港を使用しなければ、海外の船でもお金は取られません。ただし、何の保障も得られません。


 なるほど。島国だから、そもそも通行料のシステムと相性が悪いのか。

 ある意味、こちらとしては助かる。


「問題なさそうだから、騎竜で向かうとするか」

「ブルーちゃんが喜ぶわね」


 喜ぶかな?


《ブルー。午後から空の旅だ。行けるか?》

《絶対に行くわ!やった!》


 『行ける』ではなく、『行く』である。

 他の予定が入っていても、キャンセルする勢いである。

 そして、めっちゃ喜んでいる。


「喜んでいるな」

「それじゃあ、リーフちゃん達にも伝えますね……」


 他のメンツにはさくらが念話してくれました。



 諸々の準備をしている間に午後になった。

 マリア、ドーラが復活したので、イズモ和国へ『ポータル』で転移し、そこから騎竜で海を越える事にした。


「これがご要望の品なのだぞ」

「是非、ご活用くださいですの」


 出発の前にイズモ和国の王族であるトオル、カオルの双子から、身元の証明書を貰った。

 パジェル王国で万が一トラブルに巻き込まれた時に、友好国であるイズモ和国の身分証明があれば、話が随分と変わってくるだろうと言う判断だ。


「非常用だから、活用する機会が無い方が良いんだけどな」


 いざと言う時の切り札その1である。

 なお、切り札その2は『無慈悲な暴力』である。


「でも、態々お城まで来ないでも良かったんじゃない?」

「我が国の城に対して、そんな悲しい事を言わないで欲しいのだぞ」

「あ、ごめん。そう言う意味じゃないのよ」


 今回、イズモ和国の首都、エンドへと転移した後、エンド城で証明書を受けった。

 ミオが言っているのは、<無限収納インベントリ>経由で受け渡しをすれば、その手間を省けたという事だろう。


「理由は2つ。1つは証明書を貰うのなら、ある程度は正規の手続きで貰うべきだからだ」


 ほら、<無限収納インベントリ>経由で受け取ったとか、他人に言えないだろ?

 しっかりと、『王族から手渡された』と言い切りたいからな。


「ああ、ご主人様の謎こだわりね」


 謎こだわり言うなし。


「もう1つは何なのだぞ?」

「教えて欲しいですの」


 自国に関わる事だからか、双子が興味深そうに聞いてくる。


「……エンドが復興したと聞いてから、一度もイズモ和国に訪れていなかったんだよ。折角の機会だから、城下町と城くらいは見ておこうと思ってな」


 いつでも行けるし、優先度は高くないので後回しにしていた。

 俺、一度後回しにすると、尋常じゃないくらい後回しになる事が多々ある(例:真紅帝国行き)。だからこそ、機会があればそれを逃さないようにしたい。


「そう言えば、我が国に来たと言う話は聞かなかったのだぞ」

「復興した我が国はどうですの?」

「良いと思うぞ。城も前より立派になっているし……」

「それは、メイドの力なのだぞ……」


 トオル、若干不服そう。


「いや、感謝はしているのだぞ。それはそれとして、不甲斐ないというか、何と言うか……」


 自国の建築家たちより、メイドの方がクオリティ高いからね。

 仮にも国のトップとして、完全な納得は出来ないだろう。


「ところで、この証明書はどのくらいの効果があるんだ?」


 俺は渡された証明書を見せ、気になっていた事を尋ねる。

 一応、国のトップからの身元証明書だ。それなりの権限があると思う。


「それがあれば、イズモ和国の重鎮レベルの歓待を受けられるのだぞ」

「その持ち主に何かあれば、イズモ和国が敵に回る、くらいの意味があるですの」

「それは、身元の証明どころじゃないな」


 身分証を貰いに行ったら、黄門様の印籠を貰いました。


「仁殿、はっきり言って、過剰でも何でもないのだぞ?」

「そうですの。仁殿は自分の事をそれほど重要視していないようですが、実際のところ、そこらの王族とは比べ物にならない程に重要な人物ですの」


 マリアが横で強く首を縦に振っている。


《ごしゅじんさま、えらいのー?》

「うむ、正直なところ全く自覚が無い」


 自分を卑下するつもりは無いが、重要人物と言われてもピンと来ない。

 俺、今は自由に生きているだけの観光客だよ?


「困ったお方ですの……」

「いっそ、表向きな権力を持って貰った方が良いとすら思えるのだぞ」

「え、それはパス」


 表向きの立場を得るなんて、面倒なことこの上ない。

 ああ、女王騎士ジーンの様な、役作りロールならOKです。


「だから、せめて全力支援を受けて欲しいのだぞ」

「ええ、ここで半端な支援をして、仁殿に何かあった方が問題ですの」

「とりあえず、確実にメイド達に半殺しにされるのだぞ……」


 有り得ない、とは言えないかな……。

 メイド達、俺に関する事だと結構物騒だから。


「分かった。じゃあ、2人の身を守るためにも、証明書は有り難く貰う事にするよ」

「そうしてくれると助かるのだぞ」

「遠慮なく使って欲しいですの」


 こうして、エンド城で重要アイテム、『黄門様の印籠』を手に入れた俺達は、空路でパジェル王国へと向かう事にした。



 そして、空。


 いつもの様にマリアと共に天空竜ブルーに乗り、先頭を切って突き進む。

 リーフ、ミカヅキを置いて行かない程度の速度なので、ブルーとしてはほんの少しだけ不満だそうだ。

 今度、全力で乗り回してやるから……。


《約束よ!》


 全力では無いものの、竜人種ドラゴニュートの飛行が遅い訳はない。

 あっという間にパジェル王国が見えてきた(マップ上で)。


 マップを非表示にしようとしたところで、とんでもない物が目に入った。


「ふぁっ!?」


 それがこちら。


名前:アシュリー

性別:女

年齢:17

種族:ハイエルフ

称号:エルフの姫巫女、エルフ王族、人柱

スキル:

魔法系

<水魔法LV2><精霊術LV10><精霊魔法LV10><封印術LV->

技能系

<水泳LV4><魔道具作成LV10><森の英知LV->

その他

<不老LV-><巫女の継承LV-><流水の思念LV->


 ご存知、『姫巫女』である。


 いや、『姫巫女』が居た事に驚いた訳では無い。

 問題なのは、『姫巫女』の現状である。


 アシュリーさん、現在、無人島で半裸のサバイバル生活をしているんですよ。

 具体的に言うと、パンツ一丁のトップレスで、木や草で作った小屋に住んでいる。


 ……一体、何があった?


《何があったら、『姫巫女』があんな状態になるのかしら?》


 俺の様子を見て、同じものを確認したミオが言う。


《漂流でもしたのでしょうか……?》

《いえ、さくら様。<精霊魔法>を使えば、海を渡る事ができるので、その可能性は低いかと思います》


 <精霊魔法>は使う環境によって出来る事が変わる。

 海辺には水の精霊が居るはずなので、頼めば海を渡るくらいは出来るだろう。


 少なくとも、水の災竜の『姫巫女』が、漂流とは考えにくい。


《ヤバいな……。アシュリーは気付いていないようだが、もうすぐ強い魔物に遭遇するぞ》


 『姫巫女』の居る島には、ちょっとした大型ユニーク級魔物が生息している。

 現時点で『姫巫女』が気付いているようには見えないが、遭遇するのは時間の問題だ。


《ちょっと、姫巫女ちゃんには荷が重そうね》

《ご主人様、助けるんですの?》

《うーむ、流石に『姫巫女』を放っておく訳にも行かないよな。……タモさん、悪いけど、『姫巫女』の護衛を頼んでも良いか?》

《任せて良い》


 今の状況で『姫巫女』の居る島に行き、『姫巫女』を保護するなり、大型魔物を倒す……と言うのは面倒だ。

 『姫巫女』の事情も知らずに勝手な事をするつもりは無いので、とりあえず、命の危険だけは排除しておこうと思う。


 そして、安定した護衛と言う点において、タモさんを越える者は存在しない。

 疲れ知らずで寝る必要もなし、高いレベルの気配遮断と擬態による隠密行動、あらゆる敵の弱点を突く対応力、まさに最強の護衛だ。


《じゃあ、頼んだぞ》


 そう言って、俺は『召喚サモン』で護衛用タモさんを呼び出す。

 ああ、一応言っておくと、一匹は常に俺に張り付いている。


「行け!」


 俺は手に掴んでいるタモさんを、アシュリーの居る島に向けて投げた。

 凄い勢いで飛んで行くタモさん。その内、鳥型の魔物になるだろう。


《タモさんとんでったー!ドーラもあれやりたーい!》


 ドーラが目をキラキラさせている。


《ドーラを投げ飛ばしても良いと思うか?》

《駄目だと思います……》

《絶対に駄目でしょ。いや、タモさん相手なら良いって訳でもないけど……》

《止めておくべきですわ。相当酷い絵面になりますわよ……?》

《仁様がお望みでしたらお止めしませんが、念のため<回復魔法>と『召喚サモン』をすぐ使える状態にしておきましょう》


 皆に確認をとってみると、常識人全員が却下した。

 マリア?視点が他の人とは違うよね。


《ドーラ。ダメだってさ》

《むー……》


 頬を膨らますドーラが可愛い。

 しまった。別の騎竜に乗っているから、ドーラを撫でて機嫌を直す事が出来ない。


「『召喚サモン』」

《わ!?》


 急に召喚され、目を瞬かせるドーラをすかさず撫でる。


《えへへー》


 すぐに機嫌を直すドーラ。


《仁君、急に呼び出すのは心臓に悪いです……》

《あ、ごめん》


 ドーラと共にリーフに乗っていたさくらからお叱りを受けてしまった。


 そして、機嫌が直ったので、飛んでリーフの元へ戻るドーラ。

 うん、元から飛べるドーラにとっては、騎竜に乗るのってほぼ意味ないんだよね。



 更に空の旅を続け、ラティス島がマップ圏内に入る。

 更に更に空の旅を続け、ついにラティス島が見えてきた。


 実は、パジェル王国に入って『姫巫女』を見つけた後、俺達はずっとマップを非表示にしている。当然、<勇者>の検索もしていない。

 『効率的な捜索』と言った口で言うのもアレだが、今回はマップを使用せずに、<勇者>との出会いを偶然に任せてみようと考えている。


《普通に考えたら、正気の沙汰じゃないわよね》


 世界地図にダーツを投げた結果で行き先を決め、そこからはノーヒントでたった1人を探す。客観的に見ると、ミオの言う通り正気を疑うレベルだ。


《実績、あるから》

《実績があるんかい!》


 元の世界で、何度か実績があります。


《誰を探したんですか……?》

《まあ、その話はまた今度と言う事で……。それより、見て見ろよ。まさしく、水の都と呼ぶに相応しい島だぞ》


 さくらの質問をはぐらかしつつ示したのは、ラティス島の景観だ。


 ラティス島は陸地の標高が低く、まるで海の上に浮かんでいるように見える。

 島には水路が張り巡らされており、その水路に沿うように洋風の建築物が並んでいる。

 水路の移動は当然の様にゴンドラだ。水の都でゴンドラが無い訳が無い。


《まんまベネチアよね》

《行ったことは無いですけど、見た事はあります……。勇者でしょうか……?》

《可能性はあるけど、土地を考えても不自然って程じゃないな》


 勇者が歪めた文明である可能性もあるが、自然な流れでこの形になった可能性もある。

 判定が難しいところだ。


《それにしても、最近は観光らしい観光が多いな。嬉しい事だ》

《ああ、言われてみれば、前回は中国で、今回はイタリアって事よね。まるで、海外旅行のパンフみたい》

《海外旅行……。行った事がありません……》


 さくらが少し雰囲気を暗くする。

 俺達の年齢なら、海外旅行に行っていなくても不自然ではないのに……。


《さくら様、大丈夫です。私もないですから》

《俺は行ったことがある。移動は正規ルートじゃなかったけど……》

《その話、詳しく》

《また今度な》


 今度はミオの追及をはぐらかす。


 そんな話をしていたら、あっという間にラティス島に到着した。

 『見える』と言う事は、『近い』と言う事なので当然である。


 ある程度近づいた時点で、<無属性魔法>により透明化し、ラティス島の北西、人が居ない場所へと着陸した。そして、そこから陸路で街へと向かって歩く。

 なお、騎竜3人娘はこの段階で帰宅した。


「とりあえず……ゴンドラに乗ろう」


 都市部に到着して最初のセリフである。


「ご主人様、マジでブレないわね。探し人は本当に後回しで良いの?」


 慣れた様子でミオが尋ねてくる。

 一応、人通りのある場所なので、<勇者>と言う単語は使っていない。


「ああ、後回しだ。それより、水の都に来てゴンドラに乗らない方が問題だろ?それとも、ミオは乗らないつもりなのか?」

「いや……、それは乗りたいけど……」


 流石のミオも乗らないとは言えない模様。


「私も乗ってみたいです……」

「仁様が乗るのでしたら、私も乗ります」

《ドーラも!》


 さくら、マリア、ドーラの3人もゴンドラツアーに賛成のようだ。

 あれ?セラは?


「『フロート』。……わたくしもご一緒しますわ」


 今、重量軽減の魔法を使ったよね。


 ゴンドラの耐荷重は知らないが、一点に重量物を乗せる事が良い事とは思えない。

 セラの悲しい心遣いであった。


「セラちゃん……」

「ミオさん、そんな目で見ないで下さいな!」


 切ない物を見る目で見られ、セラが抗議の声を上げる。


「反対する者も居ないみたいだし、ゴンドラに乗ろう」

《おー!》


 早速、俺達はゴンドラツアーの申し込みに行くことにした。


「ツアーのお申し込みですか?大変申し上げにくいのですが、基本的には予約制ですから、本日すぐにと言う訳にはいきません。今の次期ですと、観光客も多いので、キャンセル待ちも難しいかと思います」

「何……だと……」


 完全に失念していた。

 観光地でのアトラクションには予約が必要な物が多い事を……。


 観光客、進堂仁。一生の不覚。


本章は至る所に名称系のネタが散りばめられています。


2020/05/03改稿

アシュリーの年齢を修正(21→17)。

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マグコミ様にてコミカライズ連載中
コミカライズ
― 新着の感想 ―
この国にとって重要人物である自覚がないのはシンプルに馬鹿なんだよ。自分の立場を客観視できないのかなこの主人公
[一言] ダーツで当たりが出たら"パジェロ"東京フレンドパーク 以降は登場しないかな?程度の期待。 「第一村人発見」ダーツの旅 メイド100人に聞きました。 倍率ドン!はらたいらに3000点
[一言] 水の都 ラティ(ア)ス 津波 ポケモン映画?
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