5
――ねえ、どこから来たの?
頭の中から響く声が聞こえて、スーノはうっすらと目を開けた。視界は眠る前と全く変わらない。ただ淡く輝く石の木々が見えるだけだ。
いや、一つだけ違った。自分を覗き込む小さな存在。夢の続きなのかと思ったスーノはゆっくりと首をかしげた。
「君が、光の森の魔物?」
途端、頬に小さな痛みを感じてスーノは小さく悲鳴をあげた。同時に意識も覚醒する。どうやらその小さな何かに頬をぶたれたらしい。
「魔物ですって!? とんだ言いがかりね!」
キンキンと甲高い声でそれは怒鳴っている。スーノはまじまじとそれを見つめた。
妖精だ。女の妖精。キラキラとした光をまとい、羽根を背中から生やしている。肩までの長さの髪は緑色で、ややつり目の瞳はうっすらと紫色だ。肌は白く生まれたての人そのままで、何も着ていない。四枚の羽根は透き通り、淡い青が色付いていた。
スーノは純粋に「綺麗」だと思った。
やれやれと妖精は腰に手を当て、首を振る。
「さっきの変な感じはあんたね。来ちゃったものは仕方がないわ」
そういえば、とスーノはおとぎ話を思い出す。
「ぼ、僕も石になっちゃうの?」
すると彼女は一瞬虚をつかれたような顔をして、ゆっくりと微笑んだ。
「あら、石になりたかったらしてあげても良いのよ?」
言わなければ良かった。目が回る勢いでスーノは首を横に振った。